ヘディングシュートと言えば、やはり、クリスチアーノ・ロナウドですね。
打点の高いジャンピングヘッドや、飛び込むようなダイビングヘッドは、正に圧巻のテクニックです。
でも、こうしたヘディングシュートは身体能力が高いからこそ出来る…、というわけでもありません。
実は、彼のヘディングシュートは日本のサッカー選手とは違ったコツがあります。
しかも、科学的に考えた場合、誰でも出来る可能性があるのです。
そうした意味では、彼のヘディングシュートのコツを身に付けることは、意外と簡単です。
そこで、今回は、クリスチアーノ・ロナウドのテクニックを分析しながら、ヘディングシュートのコツ、ボールコントロールのコツなどを徹底解説します。
記事の目次
- 1.ヘディングシュートの5つのコツ
- (1)ミートする
- (2)首を振らないで固定する
- (3)半身になる
- (4)当てる場所と感覚
- ①ボールを当てる場所
- ②ボールに当てる感覚を身に付ける
- (5)全身のバネを使う
- ①全身のバネ作用とは
- ②クリスチアーノ・ロナウドの全身のバネ
- 【スタンディングヘッド】
- 【ダイビングヘッド】
- 【ジャンピングヘッド】
- 2.ボールコントロールのコツ
- (1)左右のコントロール
- ①同サイドへの真っ直ぐのヘディングシュート
- ②左サイドへのヘディングシュート
- ③右サイドへのヘディングシュート
- (2)下方向に叩きつけるコントロール
- ①叩きつけるのは遅いボール
- ②速くても低ければボールの上を叩ける
- 3.まとめ
- 【おすすめの記事一覧】
1.ヘディングシュートの5つのコツ
日本の育成年代におけるヘディングシュートの指導は、数多くの間違いがあります。
例えば、額の生え際でインパクトする、向かって来るボールのスピードに関わらず首を振って叩きつける、膝のバネを使ってジャンプする…などです。
これに対して、クリスチアーノ・ロナウドのヘディングシュートは全く違います。
サッカーの基本に忠実で、科学的に考えても極めて合理的です。
そして、彼のヘディングシュートを分析すると、育成年代の子供たちにぜひ覚えてほしい、5つのコツが見られます。
(1)ミートする
(2)首を振らないで固定する
(3)半身になる
(4)当てる場所と感覚
(5)全身のバネを使う
そこで、次からは、こうしたヘディングシュートの5つのコツを順に解説します。
(1)ミートする
ヘディングシュートでミートするというのは、簡単に言えば飛んでくるボールに頭を当てるだけです。
そうすることで、後はボールが勝手に飛んでくれます。
クリスチアーノ・ロナウドのジャンピングヘッドを見ても、ミートするだけで頭はほとんど動かしません。
これに対して、日本の指導では、向かって来るボールが速くても遅くても、頭と首を使って(動かして)叩きつけることで、ヘディングシュートの威力をパワーアップするという発想があります。
これは、たぶん、ヘディングシュートが、キックの様に足でボールを蹴るという動作と同じ…という誤解に基づく考え方だと思います。
実は、キックの場合、ボレーシュートを除けば、ボールはほぼ止まっているか、わずかに動いている程度です。
そうすると、足のパワーを使わない限りボールは飛びません。
ところが、ヘディングシュートの場合、コーナーキックやサイドからのクロスのスピードはプロのレベルであれば時速100㎞以上になります。
こうした状況で頭と首を動かして叩きつけようとすると、かえってボールスピードに負けてしまいます。
そうすると、頭と首がまるでクッションのようになって、ミートした時と比べると威力が落ちてしまうのです(もちろん遅いボールなら頭と首を動かすシュートも可能)。
そもそも、ヘディングシュートでミートするのは、バレーボールのブロックと同じで、飛んでくるボールの勢いを利用して跳ね返そうとすることです。
バレーボールのブロックを科学的に考えた場合、特に重要なのが指先から肩までの腕全体の角度です。
この角度を一定に保つこと…、つまり腕全体を固定することで頑丈な壁を作り、ボールを跳ね返すことが出来るのです。
この原理をヘディングシュートに置き換えた場合、頭頂部から首までの頭全体の角度を一定に保つ(固定する)ということになります。
そうすることで、向かって来るボールのスピードをほとんど落とさずに、シュートすることが出来るのです。
クリスチアーノ・ロナウドのヘディングシュートも同じ原理ですね。
したがって、ヘディングシュートはミートするだけで十分な威力を発揮するのです。
(2)首を振らないで固定する
先ほども解説しましたが、日本のヘディングシュートの指導では、頭と首を振って、飛んでくるボールを叩きつける!という発想があります。
例えば、次の動画のような練習は、大人に限らず少年サッカーの指導現場でもよく見られます。
チームの全員が頭と首を振って叩きつけていますよね。
でも、あなたはこの練習を見て疑問に感じませんか?
そもそも、試合中のヘディングシュートで、真正面からこんなに遅いボールが飛んで来ることはほとんどありません。
ゴールキーパーがシュートを真っ直ぐ弾いたり、クロスバーに当たって跳ね返ってこない限り、あり得ないでしょう。
しかも、ヘディングシュートはコーナーキックやサイドからのクロスのように、横方向から飛んで来るボールをインパクトすることが多いはずです。
そうすると、いくら真正面からのヘディングシュートを練習しても、あまり意味がないのです。
さらに問題なのが、「ヘディングシュートは頭と首を振って叩きつけるのが常識だ!」と選手たちが勘違いしてしまうことです。
先ほども解説しましたが、ヘディングシュートをする時に向かって来る、コーナーキックやサイドからのクロスのスピードは、プロのレベルであれば時速100㎞以上になります。
クリスチアーノ・ロナウドのヘディングシュートを見ても、よほど遅いボールでない限り、頭と首を振って叩きつけることはありません。
次の画像のように、一見して頭と首を振っているようなシーンもありますが、実はフォロースルーでしかないのです。
こうしたシーンだけを見ると、どんなボールに対してもヘディングシュートは頭と首を振る!と勘違いを起こしやすいですね。
やはり、ヘディングシュートは、よほど遅いボールでない限り、首を振らないで固定してインパクトすることが大切です。
そうすることで、バレーボールのブロックのような、反発エネルギーを利用することが出来るのです。
(3)半身になる
ヘディングシュートで半身になるというのは、次の画像に見られるクリスチアーノ・ロナウドのような姿勢を維持することです。
次の画像のシーンは、左サイドからのクロスへの対応ですが、ゴールに向かって右腕を向けていることからも、半身の様子が分かります(画像の左端がゴール方向)。
この反対に半身でない場合は、体が開いていることを意味します。
次の画像は、先ほどご覧になった動画の一シーンですが、真正面からのヘディングシュートを練習しているせいか、体が開いています。
体の開きは、棒立ちの状態と同じなので、スポーツにとっては不適切な姿勢です。
真正面からのヘディングシュートを練習すればするほど、体の開きを助長する結果になるのでしょう。
クリスチアーノ・ロナウドのような半身の姿勢を取る時の最大のメリットは、力を一点に集中できるということです。
そうすることで、強いヘディングシュートが打てるわけです。
これに対して、体が開く(棒立ちの状態)というのは、力が分散するという欠点があります。
こうなると、スポーツにとっては適さない姿勢なのです。
そもそも、ヒトの両足は体の側面にあるため、ふつうに立っている状態で、体が開いています。
やはり、ヘディングシュートにおいて、常に半身の姿勢を意識することは、とても大切なことなのです。
(4)当てる場所と感覚
①ボールを当てる場所
日本では、ヘディングシュートの際、ボールを生え際に当てる…と教えられることがあります。
でも、生え際に当てるとボールが上に行くので、シュートには適しません。
どちらかと言えば、はね返すためのクリアーに使います。
それでは、なぜヘディングシュートで生え際に当てる…という考え方があると思いますか?
それは、サッカーに無知な指導者たちが、ヘディングシュートと一般的なヘディングを区別しないで、単に頭でボールを跳ね返すだけの同じプレーと考えているからでしょう。
実は、ヘディングシュートとヘディングは、頭にボールを当てるという点は同じでも、その役割は全く違います。
ヘディングシュートは得点するためのプレーであって、ヘディングはパス(クリアーも含む)やトラップするためのプレーという違いがあるのです。
つまり、ヘディングシュートとヘディングは、見た目は同じでもプレーとしては全く違うわけですね。
この場合、ヘディングシュートはキックと同様に、ボールを強く前に飛ばすことが必要です。
そうすると、当てる場所は、ボールを前に飛ばしやすい部分…、つまり、額のうち眉毛の上~生え際の下、こめかみなどになります。
(キックに例えると、インステップキックのように、強く前に飛ばすイメージです)
眉毛の上~生え際の下、こめかみなどが、当てる場所として最適な理由は、頭を真上から見るとよく分かります。
ヒトの頭を真上から見ると、顔~後頭部にかけて長方形になっています。
長方形で強度が高いのは、角やその近辺です。
そうすると、眉毛の上~生え際の下、こめかみは、角の近辺にあるので、この場所にボールを当てるとインパクトが強くなるわけです。
一方、額の中心部分は長方形の辺に当たる部分なので、先ほどの眉毛の上~生え際の下、こめかみなどと比べると、やや強度が落ちます。
ところが、額の中心部分であっても、生え際の部分は角なので強度は高くなります。
そうすると、生え際にボールを当てると、大きく跳ね返すことが出来るのです。
ただし、大きく跳ね返すことは出来ても、大きく弧を描くような弾道になるので、ボールを当てる場所としてはヘディングシュートには向きません。
(キックに例えると、インフロントキックのように、弧を描いて遠くに飛ばすイメージです)
②ボールに当てる感覚を身に付ける
ヘディングシュートをする時、インパクトの瞬間に「最後までボールを見ろ!」とか「目を離すな!」などと指導されることが多いと思います。
この場合、最も良いのが、インパクトの時に目をつぶらないことでしょう。
でも、私の息子の「とも」は、ヘディングシュートの時に目を閉じています。
こうした目をつぶるという動作はヒトの反射神経の作用によるものであって、無意識化で起こるものです。
そうすると、プロボクサーでもない限り、簡単には反射神経を克服できないのです。
それでは、ヘディングシュートの練習で、「最後までボールを見ろ!」とか「目を離すな!」という指導をどのように理解すれば良いと思いますか?
私が思うに、見えても見えなくても、目をつぶってもつぶらなくても、どうでも良いことだと考えています。
むしろ、目をつぶることによって見えなくなる部分は、イメージ化して補う…という、つまり感覚を研ぎ澄ますことの方が大切です。
その理由は、リフティングやキックなどを例にすればよく分かります。
リフティングをするときは、足の甲をボールの真下に当てる必要があります。
この時、本当に足の甲が当たっているのか?どうか?は目で見ることが出来ません。
見えない部分は足の感覚で判断しているのです。
インステップキックの場合でも、足の甲でボールのどこに当てているのか?などというのは、実際に見ることは出来ません。
やはり、足の感覚に頼っているのです。
こうしたことは、サッカー以外の球技でもよくあることです。
例えば、野球でボールがバットに当たる瞬間、バレーボールでスパイクする瞬間、テニスでスマッシュを打つ瞬間などです。
こうした場合、ヒトは目で見えない範囲(視野が遮られた部分や目をつぶった時)に対しては、大脳を使ってその範囲をイメージ化することが出来ます。
そうすると、見えない部分をイメージ化する…、つまり感覚に頼ったプレーをすることになります。
例えば、野球のバッティングでバットの芯でボールを叩いた…などの感覚です。
クリスチアーノ・ロナウドであっても、ヘディングシュートは目をつぶってインパクトします。
やはり、ボールに当てる感覚を極限までイメージ化しているのでしょう。
もっと言えば、何度もヘディングシュートを練習して、ボールを見なくても正確なインパクトが出来るという、繊細な感覚を身に付けたのだと思います。
だから、決して身体能力が高いとか、天性の才能があるから…というわけではないのです。
要するに、ヘディングシュートの時は、「最後までボールを見ろ!」とか「目を離すな!」ということに、こだわる必要はありません。
インパクトの時は、目をつぶっても良いのです。
むしろ、大切なのは、クリスチアーノ・ロナウドのようにヘディングシュートの練習を重ねて、繊細な感覚を身に付けることなのです。
(5)全身のバネを使う
①全身のバネ作用とは
ヘディングシュートで「全身を使う!」ことの大切さは、どのような指導者でも教えるはずです。
でも、全身を使うことの本当の意味を理解している指導者はほとんどいません。
正しくは、全身を使うというよりも、全身の「バネ」を使うということです。
ヒトの体には、大きく分けて二つのバネがあります。
一つ目は、鳩尾(みぞおち)を中心とした上半身のバネです。特に背骨の部分です。
二つ目は、股関節を中心とした全身のバネです。背骨と足腰の部分です。
この二つのバネは、鳩尾と股関節の脱力によってパワーを発揮します。
この二つのバネは、それぞれS字カーブになっていて、鳩尾(みぞおち)と股関節が中心になって上下に伸び縮みすることが出来ます。
こうした場合、ほとんどの日本人選手は、足だけを使ってサッカーをする傾向があります。
そうすると、ヒトの体重比は6対4で上半身の方が重たいので、重たい上半身が下半身への負担を大きくします。
ヘディングシュートの場合では、一生懸命ヒザを使って重たい上半身を持ち上げるわけです。
まるで上半身の重りを背負ってプレーするようなものです。
ところが、海外のトップ選手たちは、こうした全身のバネ作用をヘディングシュートだけではなく、使い方によってはドリブルやキックにも活かしています。
そうすることで、爆発的なパワーとスピードを発揮することが出来るのです。
実はクリスチアーノ・ロナウドも、こうした全身のバネ作用を活かしていることから、打点の高いヘディングシュートが可能になるのです。
こうした全身のバネは、ヒトに本来備わっている能力です。
だから、彼の身体能力がずば抜けて高いから…といわけではなく、全身のバネ作用を正しく使っているだけなのです。
そこで、次にクリスチアーノ・ロナウドが、どのように全身のバネ作用を使ってヘディングシュートをしているのか?という点について詳しく解説します。
②クリスチアーノ・ロナウドの全身のバネ
クリスチアーノ・ロナウドのヘディングシュートのバネ作用で特徴的なことは、全身を板バネのように使うということです。
【スタンディングヘッド】
スタンディングヘッドは、全身を板バネのように弓なりにしならせる点が特徴的です。
次の画像は、インパクト直前の弓なりの動作です。
次の画像は、反らした板バネが反発する動作です。
スタンディングヘッドは、弓なりに反らした板バネを反発させるだけです。
それほど難しくはないので、簡単に覚えられます。
【ダイビングヘッド】
ダイビングヘッドは、たぶん誰でも難しそうに感じるはずです。
ほとんどの方は、水泳の飛び込みを想像するので、危険だ!と考えているかも知れません。
実は、ダイビングヘッドは、スタンディングヘッドと同様に、全身を板バネのように利用するだけです。
その際、倒れ込むようにヘディングシュートをすれば、誰でも簡単に覚えられます。
最近では、ほとんど使われていませんが「ハエ叩き」みたいな動きですね。
次の画像は、インパクト直前の弓なりの動作です。
次の二つの画像は、反らした板バネが反発する動作です。
最後の画像は倒れ込んでいるだけです。
ダイビングヘッドとスタンディングヘッドの違いは、立ったままでインパクトするのか、倒れ込むようにインパクトするのかだけです。
ダイビングヘッドを水泳の飛び込みのように考える必要はありません。
むしろ、倒れ込むようにインパクトすると覚えた方が簡単ですし、子供たちにとってはケガも少ないと思います。
【ジャンピングヘッド】
ジャンピングヘッドは、先ほどのダイビングヘッドやスタンディングヘッドと比べると、全身のバネの使い方が全く違います。
でも、ジャンプのコツを覚えれば、それほど難しくはありません。
特に、クリスチアーノ・ロナウドのジャンプはヒザの力に頼らず、全身のバネ作用と腕の重さを使うという特徴があります。
また、ジャンプのメカニズムは5段階に分けられます。
① 後方に大きく腕を振る。
② 振った腕を前方に戻す途中で逆C字型を作る。
③ ジャンプ直前に鳩尾と股関節を一気に脱力する。
④ 腕の重さを利用しつつ前方に振ってジャンプしながらC字型を作る。
⑤ ボールにインパクトする。
特に大切なのはC字型のバネ作用です。
ジャンプ直前で逆C字型を作り、空中姿勢でC字型になることです。
そうするとヒザの力に頼る必要はなくなりますし、全身のバネが効果的に使えるようになるのです。
次に実際のプレーを見てみましょう。
最初に、ボールの落下点を確認しながら、①後方に大きく腕を振っています。
次に、②振った腕を前方に戻す途中で逆C字型を作っています。
このようなジャンプの動作特性は、クリスチアーノ・ロナウド独特のテクニックですが、バネ作用を活かすという点では、とても合理的です。
次に、③ジャンプ直前で鳩尾と股関節を一気に脱力します。
ここで、特に注目していただきたいのが、ヒザを深く曲げていない点です。
これは、ヒザの力に頼ったジャンプではないという意味です。
もしもヒザに頼っていたとしたら、もっと深く曲げているはずでしょう。
次に、④腕の重さを使って、前方に振りながらジャンプします。
空中姿勢でC字型になっています。
ここで、ジャンプの際に、腕の重さを使う意味を考えてみましょう。
一般的に、ヒトの腕の重さは体重の6~7%とされています。
そうすると体重が60㎏の場合、片腕で約4㎏、両腕では約8㎏になります。
腕の重さを使う場合は、肩関節を支点として、後ろから前に勢いよく振り出します。
この場合、腕の重さに対して遠心力も働きます。
水を入れたバケツをグルグルと振り回すようなイメージですね。
こうした腕の重さ+遠心力は最終的に上方向のエネルギーに変換されます。
そうすると、ジャンプ直前に縮めたバネを一気に伸ばす動きに利用できるのです。
先ほどご覧になったバネ作用の伸び縮みですが、ジャンプの際に腕の重さ+遠心力を利用することで、打点の高いヘディングシュートが可能になるのです。
以上のように、クリスチアーノ・ロナウドが、どのように全身のバネ作用を使ってヘディングシュートをしているのか?という点を考えると、とても合理的であることが分かります。
しかも身体能力の高さだけに頼っているわけでもありません。
ということは、誰でも練習すれば、クリスチアーノ・ロナウドに近づくことは可能だと言えるのです。
さて、こうしたヘディングシュートのコツを踏まえて、次に実際の試合ではどのようにボールコントロールをするのか?というコツを考えてみましょう。
2.ボールコントロールのコツ
ヘディングシュートのボールコントロールは、大きく分けて2つあります。
左右(水平方向)と上下(垂直方向)に打ち分けるということです。
この場合、上方向のヘディングシュートは、前方に飛び出して来たゴールキーパーの頭上を超えれば良く、ボールを頭の生え際に当てるだけなので簡単です。
ですから、この場合のヘディングシュートの解説は割愛します。
そこで、次に、左右のコントロール、下方向に叩きつけるコントロールを順に解説します。
(1)左右のコントロール
ヘディングシュートを左右に打ち分けるのは、厳密に言えば三通りあります。
① 同サイドへの真っ直ぐのヘディングシュート
② 左サイドへのヘディングシュート
③ 右サイドへのヘディングシュート
基本的には、額のどの部分に当てるのか?顔は左右のどちらに向けるのか?という点が大切です。
①同サイドへの真っ直ぐのヘディングシュート
次の画像では、クリスチアーノ・ロナウドが、左サイドのクロスに対して、半身の姿勢を取って額の右側からこめかみ寄りでインパクトしています。
そうすることで、同サイドへ真っ直ぐのヘディングシュートになっています。
②左サイドへのヘディングシュート
次の画像では、クリスチアーノ・ロナウドが、左サイドのクロスに対して、半身の姿勢を取って額の左側から中心寄りでインパクトしています。
そうすることで、左サイド(画像ではニアサイド)へのヘディングシュートになっています。
③右サイドへのヘディングシュート
ここでのボールコントロールは、2018ロシアワールドカップの日本対コロンビア戦の大迫選手のヘディングシュートが参考になります。
この試合の状況としては、
・左サイドからの本田選手のコーナーキックがカーブ回転をかけて飛んできます。
・大迫選手の顔は左サイドを向きつつも、それほど半身の姿勢は取っていません。
・その後、額の中心から右寄りでインパクトしています。
・インパクトしたボールは、アウト回転が掛かりながら、ゴールの右サイドに落ちました。
この間の状況を画像で詳しく見てみましょう。
先ず、大迫選手のインパクト直前の様子です。
本田選手のカーブは左利きなので、大迫選手に向かって来るボールになります。
この時、大迫選手の体は左サイドを向いていますが、半身の姿勢と言うよりもやや体が開いた状態です。
また、顔は左サイドを向いていますが、クリスチアーノ・ロナウドが同サイドへ真っ直ぐのヘディングシュートを打った時のように、極端に左を向いているわけではありません。
こうした状態で、額の中心から右寄りでインパクトすると、カーブ回転のボールが額の横方向へと擦るので、回転が掛かった状態のヘディングシュートになります。
(本田選手のコーナーキックは左利きのカーブ回転で、大迫選手のヘディングシュートも同じ回転ですが、大迫選手は右利きなのでアウト回転と表記しています)
一方、コロンビアのGKは、大迫選手の体が左サイドを向いているので、左サイドを警戒しています(GKにとっては右サイド)。
右ヒザに重心が掛かっている様子からもよく分かると思います。
次に、大迫選手のインパクトの瞬間の様子です。
ここで、コロンビアのGKは、ほぼ左サイドへのヘディングシュートが来る!と読んだのでしょう。
重心が右ヒザだけではなく、体全体が右寄りになっています。
先ほどの画像と比較するとよく分かります。
最後は、ゴールの様子です。
コロンビアのGKはほとんど反応できません。
やはり、大迫選手の左向きの体勢を見た、読みが外れてしまったのでしょう。
ゴール前では、こうした駆け引きが頻繁に起きています。
選手たちの顔や体の向きを見るだけでも、ヘディングシュートの参考になりますね。
(2)下方向に叩きつけるコントロール
ヘディングシュートで下方向に叩きつけるのは、先ほども解説しましたが、必ずしも首を振っているわけではありません。
基本的には、遅いボールだけです。
また、クリスチアーノ・ロナウドは、ボールが速くても遅くても、叩きつける場合は「く」の字型の空中姿勢を取っています。
これは、出来るだけボールの上側をインパクトするためです。
そうすることで、速いボールでも叩きつけることが出来るのです(ただし低いボールのみ)。
そこで、次に、速いボールと遅いボールを、それぞれ叩きつける方法を解説します。
①叩きつけるのは遅いボール
ヘディングシュートで頭と首を振って叩くのは、遅いボールの時だけです。
先ほども解説しましたが、速いボールを首を振って叩きつけるのは理論的には難しいので止めましょう。
この場合、コーナーキックやクロスは、ヘディングシュートがしやすいようにカーブ回転を掛けることが多いです。
また、ボールに回転を掛けると、曲がる時に失速します。
そうすると、インパクト直前ではボールのスピードが遅くなるので、頭と首を振って叩きつけることが出来ます。
次の画像は、クリスチアーノ・ロナウドが、右サイドからのカーブ回転がかかったクロスをヘディングシュートしようとするシーンです。
ここでは、カーブ回転が掛かって失速するとともに、ボールが落ちて来ました。
そこで、少しだけジャンプして、「く」の字型の姿勢で叩きつけています。
最後は、ゴールライン上でバウンドしています。
②速くても低ければボールの上を叩ける
先ほど、速いボールに対して首を振って叩きつけるのは理論的には難しいことを解説しました。
ところが、低いボールであれば、「く」の字型の姿勢を取ることで叩きつけることが出来ます。
次の画像は、クリスチアーノ・ロナウドが、右サイドからのクロスをヘディングシュートしようとするシーンです。
低いボールが向かってきたので、ジャンプはほんの僅かだけです。
ここでは、「く」の字型の姿勢でボールをインパクトしています。
こうした速くて低いボールを叩く時は、次の二点が大切です。
・アゴを引いてまゆ毛の近くに当てる。
・ボールの中心よりも上側を叩く。
いずれにしても、ボールが速くても遅くても、叩きつける場合は、先ずはクリスチアーノ・ロナウドのように「く」の字型の空中姿勢を取ることが大切です。
3.まとめ
これまで、クリスチアーノ・ロナウドのテクニックを参考にして、ヘディングシュートのコツやボールコントロールのコツを解説しました。
ヘディングシュートのコツとして、次の5つを解説しました。
(1)ミートする
(2)首を振らないで固定する
(3)半身になる
(4)当てる場所と感覚
(5)全身のバネを使う
ボールコントロールのコツとしては、次の2つを解説しました。
(1)左右のコントロール
(2)下方向に叩きつけるコントロール
クリスチアーノ・ロナウドのヘディングシュートは、サッカーの基本に忠実で、科学的に考えても極めて合理的です。
また、彼の身体能力が高いから出来る…、というわけでもありません。
練習すれば、誰でも出来るようになるのです。
ところが、育成年代の指導は、例えば、額の生え際でインパクトする、首を振って叩きつける、膝のバネを使ってジャンプする…など、間違ったことがかなり多いと思います。
実は、日本の常識は、世界では非常識とされていることが多いです。
やはり、世界的な名選手であるクリスチアーノ・ロナウドのヘディングシュートを、ぜひ日本中の多くの子どもたちに学んでほしいと願っています。