ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

重心移動でサッカーが100倍上手くなる【動画と画像で解説】

(4)ジャンプ動作と重心移動

重心移動における重力落下と地面反力の関係は、ジャンプ動作にも使えます。

例えばジャンピングヘッドは、しゃがみ込む時に重力落下(抗重力筋は使わない)を使います。

また、この時に膝抜きをすると、先ほどの「とも」の走り方と同じように、全体重をかけて地面を押すという動作になります。

そうすると地面反力を得られるので、筋肉に依存しない重心移動が出来るのです。

例えばクリスチアーノ・ロナウドは高い打点のヘディングシュートが得意ですが、動作解析をすると、これと全く同じ重心移動のメカニズムが見られます。

クリロナの場合、逆C字型からC字型のジャンプをしますが、しゃがみ込むような逆C字型の体勢の時に膝抜きを使って重力落下します。

そして地面反力を得て、高いジャンプをするわけですね。

クリロナは試合後半になってもヘディングシュートをよく決めますが、こうした高いジャンプを続けることが出来るのは抗重力筋に頼っていない…、つまり疲れていないという証拠です。

もしも抗重力筋に依存していたら、これだけの高いジャンプを試合中に何度も繰り返すことは出来ないでしょう。

さて次は、(5)キック動作と重心移動について解説します。

(5)キック動作と重心移動

キック動作は、これまで解説した重心移動の仕組みがそのまま当てはまりません。

そこで、次の2つの点について解説します。

① キック動作は遠心力を使う
② インサイドキックとパス&ゴー

①キック動作は遠心力を使う

キック動作は、これまで解説した重心移動の原則である「重心は支持基底面を外れた時に体が動く…」という仕組みとは、直接的な関係がありません。

むしろキックのスピードとパワーを出すために、蹴り足の遠心力を如何に大きくするのかが重要です。

そこで、インステップキックの動作を例にして考えてみましょう。

バックスイング(A)の時は、重心が支持基底面の後ろにあるので、カカト重心に近い不安定な状態ですが、助走による前方向のエネルギーが全身に働いているので、後ろに倒れることはありません。

その後、インパクト(B)~フォロースルー(C)にかけて、重心が支持基底面の中に入ってきます。

これは外にあった重心が支持基底面の中に入って来るという、これまでの重心移動の考え方とは全く反対の現象が起きるのです(ふつうの重心移動は重心が支持基底面の外に出る)。

どちらかと言うと走っている状態から止まった後で、いきなり立ち上がるというような動作に近いと思います。

つまり、キック動作には重心移動の仕組みがそのまま活かせないわけですね。

こうした状態でキックのスピードとパワーを出すためには、蹴り足の遠心力を最大化することが重要です。

だからと言って抗重力筋に依存したり、膝や股関節を使う…という考えを持っては意味がありません。

なぜなら筋肉に依存すると疲労が出ますし、膝や股関節を酷使するのは故障の原因になるからです。

そこで必要とされる考え方が次の3つスピードやパワーです(詳しくはリンクを押して記事をご覧ください)。

こうして得た3つのスピードやパワーは、自分自身の体(体幹と軸足)に大きな遠心力をかけることになります。

また体が遠心力に耐えられないとインパクトの瞬間に体がグラグラするので、キックのボールコントロールが不安定になります。

そこで、この遠心力を克服するためには体幹と軸足の強化が必要になるのです。

そのためには、ちょんちょんリフティングなどの練習が必要になります。

要するにキック動作は重心移動とはそれほど関係なく、むしろ遠心力を如何に発揮するのか?如何に克服するのか?という点が重要なのです。

また遠心力を最大化させるためには、例えば風車を支える鉄塔(重心を固定する)のように重心を移動させずに安定させること、つまり重心移動は可能な限り抑えた方が良いわけですね。

ちなみに先ほどの鬼木さんはキック動作も重心移動の一つと考えているようです。

でも後述のパス&ゴーであれば話は別ですが、やはりキック動作そのものを重視移動と考えるのは正しいとは思えません。

②インサイドキックとパス&ゴー

インサイドキックも、先ほど解説したとおり重心移動の仕組みとは直接的な関係がありません。

この場合に大切なことは、パス&ゴー(キック動作を終えた後の一歩の踏み出し=重心移動)の方ですね。

試合中のインサイドキックはそのほとんどがパスに使うため、蹴った後にスペースに動く…などのオフザボールの動きが必要になります。

そうした場合、日本の選手に多いパター型の蹴り方ではパス&ゴーの初動が遅くなるのです。

なぜなら、パター型は他のキックと同様に蹴り終えた後の重心が支持基底面の中に残ってしまうからです。

そうするとここから前に走り出すとしたら、このままの体勢では重心移動が出来ません。

つまりパター型で蹴ると、蹴り終えてから抗重力筋を使って体勢を立て直して「よいしょ」と頑張って走る…という体重移動になってしまうのです。

そうした対処法として有効なのが、体幹ひねりを使ったインサイドキックです。

このキックの特徴は、バックスイング~フォロースルーにかけて体幹ひねりを使う点です。

体幹ひねりは、キック動作の時に体幹と上半身の骨格(特に背骨)を捻ります。

そうするとフォロースルーの後で「捻り」を元に戻そうとする反射作用が起きます。

これはスポンジを雑巾絞りのようにひねった時に手を離すと元通りになる…という現象と同じで、体幹ひねりによって巻き戻しが起きるわけですね。

これによって、フォロースルーが終わると体が自然に正面を向くため、その動きに連れて蹴り足も一歩踏み出るのです(この時に自然と重心移動している)。

しかもこの巻き戻しは、筋肉の伸張反射という反射作用なので無意識のうちに起こります。

そうした点では育成年代の子供たちには、ぜひ覚えてほしい蹴り方ですね。

スポンサーリンク

ところで、重心移動が上手な選手は「骨盤前傾」という特徴があります。

そこで次に、重心移動と骨盤前傾の関係を詳しく解説します。

この続きは下の四角のボタン「7」を押してください。