ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

ディフェンスの低い姿勢は間違い!【海外サッカーとの比較】

日本のサッカー指導では、一対一のディフェンスの時に姿勢を低くするのが基本とされています。

でも、これは大きな間違いですね。

実は一対一のディフェンスで大切なのは、姿勢を高くすることです。
世界有数のディフェンダーであるセルヒオ・ラモスやジェラール・ピケも同じ姿勢です。

そこで今回は一対一のディフェンスで必要とされる正しい姿勢、高重心のメリットと低重心のデメリットについて解説します。

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1.日本人のディフェンス姿勢

(1)日本人のディフェンス

こちらの動画を見ると、ディフェンスの一対一で腰を低くするという、日本人に多い典型的なスタイルが見られます。

動画の実演者によるとセルヒオ・ラモスやジェラール・ピケのディフェンスを参考にしたそうですが、二人ともこのような低い姿勢は取りません。
※詳しくは後ほど解説します。

一対一で低い姿勢を取るディフェンス

一方、こちらの高校生のディフェンスも同じように低い姿勢です。

動画では、ドリブラーが抜く時にディフェンスが尻もちを付いてしまうシーンがよく見られます。
これは姿勢を低くして腰を落とし過ぎているため、体勢を立て直すことが出来ないのです。
ドリブラーが抜く時にディフェンスが尻もちを付く様子
また相手に抜かれた時に足を伸ばしても、ボールに届かない…というシーンも多いです。
これも姿勢が低すぎるのが原因です。

相手に抜かれた時に足を伸ばしても、ボールに届かない

別の高校生の動画を見ても同じように重心が低いです。

これだけ腰を落とすと、ボールを奪うための機敏な動作は難しくなります。
今も昔も変わらない、日本の育成年代の典型的なディフェンスですね。

次の画像は2017年・全日本少年サッカー大会決勝での一対一のシーンです。
さすがに両チームともJリーグの下部組織だけあって、選手たちのディフェンス姿勢は高重心でした。
ところが肝心な時は、どうしても姿勢が低くなるようです。

小学生が姿勢を低くして守備をするシーン

やはり日本人はどうしても、このような低い姿勢になりやすいのです。

(2)重心と支持基底面の関係

ディフェンスで腰を落とすと重心が低くなって、支持基底面が広くなります。
重心(身体重心)は立った状態では「へそ」の近くにありますが、姿勢を低くするとそれに比例して低重心になります。

低重心と支持基底面の関係

支持基底面とは、地面と接している足裏の部分を囲んだ面のことです。

この場合、立った姿勢では高重心でかつ支持基底面が狭いので体を傾けるだけで重心移動が出来ます。
つまりプレーの初動が速くなるわけです。

高重心は支持基底面が狭いので体を傾けるだけで重心移動が出来る説明画像

ところがディフェンスで姿勢を低くすると体勢が不安定になり、どうしても両足を開くため支持基底面が広がります。
そうすると重心移動が出来にくいため、足がボールに届かなくなるのです。

支持基底面が広がると足がボールに届かない

一方、ドリブルで抜かれて追いかける時も支持基底面が広いため、素早い反転が出来ません。

支持基底面が広いと素早い反転が出来ない

ここで、どうして支持基底面が広いと初動が遅くなるのか?という点について科学的に解説しましょう。

高重心のディフェンスは、まるでふつうに立っているかのような姿勢を取ります。
その際、止まっている状態から走り出す時は、いったん姿勢を低くしてから動き出します。
その他にもドリブルのターンや止まる動作でも同じように姿勢を低くします。
こうした動作は小学生でもプロでも変わりません。

そもそもサッカーをやったことがない人でも、走り出す時は必ず姿勢を低くしてからスタートするはずです。

つまり初動で姿勢を低くするのは、ヒトの人体特性上でとても自然な動作なのです。

高重心と低重心の比較

ところが最初から腰を落とした低重心の姿勢では、それ以上は低くなりません。

そうするといったん姿勢を高くしてから、再び低くする…というムダな動作が必要になります。

例えば次の画像のように低い姿勢で構えていても、いったん高くしてからボールを突いています。

低い姿勢から、いったん高くしてボールを突く連続写真.1
低い姿勢から、いったん高くしてボールを突く連続写真.2
低い姿勢から、いったん高くしてボールを突く連続写真.3

この場合に動きを速くするとしたら、いわゆる体重移動になります。
体重移動とは、足の力を使って重たい上半身を動かすようなものです。
特に上半身と下半身の体重比は、6対4で上半身の方が重たいです。
つまり低重心のディフェンスは、重たい荷物を背負ってサッカーをするのと同じことなのです。

そうすると姿勢を低くすればするほど、ディフェンスの動きが遅くなるわけです。

それだったら、最初から高重心でいたらどうなると思いますか?

もっと簡単にボールを奪えるはずです。

※重心移動とサッカーの関係を詳しくお知りになりたい方は、次の記事をお読みください。
重心移動でサッカーが100倍上手くなる!【中学生でも分かる】

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(3)日本人は胴長短足で低重心

日本人の体格は近年欧米人並みになり、足も長くなったと誤解している方が意外と多いですね。
ところが、胴長短足傾向は昔から変わっていません。
つまり身長は伸びても股下は伸びていないのです。

文部科学省の平成27年度学校保健統計調査報告書によれば、子供たちは身長の伸びに比較して足の長さは伸びていない…という結果が報告されました。

この報告書の「年代別比下肢長(5~17歳までの変化)」によれば、日本の子供は成長期に身長は伸びても足はほとんど長くならないということです。
つまり子供たちは胴長短足なのです。

年代別比下肢長(5~17歳までの変化)のグラフ

胴長短足の日本人の体型は、日常生活ではどうしても低重心になります。
そうするとサッカーのディフェンスにおいても腰を低く…という安定した姿勢を取るようになるのです。

つまり無意識のうちに、「どっしり」とした低い体勢になってしまうわけです。

だから、先ほどのJリーグの下部組織に所属する選手たちは練習では高重心であったとしても、試合中の一対一ではどうしても無意識のうちに重心が低くなってしまうのでしょう。

(4)日本人の骨盤の形状と低重心

ヒトの骨盤の形状は前傾、直立、後傾という三種類に分かれています。

骨盤の形状(前傾、直立、後傾)の比較

骨盤前傾は欧米人に多い形状です。
重心が体の前寄りにあり、つま先重心なので走る動作には最適です。
また背骨のS字カーブが発達していてバネ作用があるため、身体能力が高いです。
つまりスポーツに有利な形状なのです。

一方、骨盤直立は日本人に多い形状です。
重心は体の中心に位置して、かかと重心のため、日常生活では安定していますが、走る動作には適していません。
また背骨のS字カーブが未熟なのでバネ作用は劣ります。
したがって低重心になりやすく、どちらかと言えば、相撲、柔道などの静的な安定性を求める競技に向いています。

骨盤後傾は、いわゆる猫背で姿勢の悪いタイプです。
サッカーなどの動的なスポーツには向きません。

一方、日本人に多い骨盤直立は骨盤後傾になりやすいです。

骨盤直立は骨盤後傾になりやすい

その理由は簡単で、腰の曲がった老人を見れば分かると思います。
つまり、加齢によって姿勢が悪くなってしまうということです。

これは日常生活で畳や床に座って過ごすことが多く、そうした面からも姿勢が悪い=低重心になりやすいのです。
例えば座っている時に正座をしていれば骨盤は前傾しますが、あぐらなどの姿勢では骨盤後傾になりやすいです。
イスに座っていても、背中を曲げていれば腰が丸まるので骨盤が後傾します。

一方、骨盤前傾の人は姿勢が良いので、年を取っても猫背になり難いです。
欧米の老人で、腰が丸まっている人が少ないことからも明らかでしょう。

このように考えると日本人は生まれてから大人になるまで、姿勢が悪くなりやすい生活を続けます。
だから自然と骨盤直立~後傾に変化するのです。
しかも胴長短足なので、さらに重心が低くなります。

そうなると日本人は相撲の力士のように、いつでも「どっしり」とした姿勢になるのです。
これは無意識のうちにそのようになってしまうので、どちらかと言えば安定感を好むともいえます。

そうした意味では、サッカーの一対一のディフェンスで、腰を落とした姿勢になっても何ら不思議ではないのです。

※骨盤の形状とサッカーの関係を詳しくお知りになりたい方は、次の記事をお読みください。
骨盤前傾トレーニングで身体能力アップ!一流アスリートの特徴とは?
サッカーのドリブルの姿勢で正しいのは前傾?それとも直立?

さて次は、海外のトップ選手たちのディフェンス姿勢を解説します。
ぜひお読みください!

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