ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

ディフェンスの低い姿勢と低重心は間違い!【日本と海外の比較】

一対一のディフェンスで姿勢を低くするのは間違いです。

実は高重心で姿勢を高くするのが正解なのです。

世界有数のDFのセルヒオ・ラモスやジェラール・ピケも同じです。

そこで今回は日本人のディフェンス姿勢の特徴、海外のトップ選手のディフェンス姿勢(ラモス、ピケ)、高重心と低重心のディフェンスのメカニズムについて科学的に解説します。

※この記事は4つのページに分かれているので、順番に読んでも良いですし、直接それぞれのページを読んでいただいても結構です。

1ページ目(このページに書いてあります)
【日本人のディフェンス姿勢の特徴】

2ページ目(←クリック!)
【海外のトップ選手のディフェンス姿勢】
(1)セルヒオ・ラモス

3ページ目(←クリック!)
(2)ジェラール・ピケ
(3)ラモスとピケが高重心の理由

4ページ目(←クリック!)
【高重心と低重心のディフェンスのメカニズム】
【まとめ】

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【日本人のディフェンス姿勢の特徴】

日本人のディフェンス姿勢で特徴的なのは、次の4つです。

(1)日本人の低い姿勢
(2)重心と支持基底面の関係
(3)胴長短足で低重心
(4)骨盤の形状と低重心

そこで、順に解説します。

(1)日本人の低い姿勢

こちらの動画を見ると、ディフェンスの一対一で腰を低くするという、日本人に多い典型的な姿勢が見られます。

動画の実演者によるとセルヒオ・ラモスやジェラール・ピケのディフェンスを参考にしたそうですが、ピケもラモスも、このような低い姿勢は取りません。

今も昔も変わらない、日本の育成年代の典型的なディフェンスですね。

やはり日本人はどうしても、このような低い姿勢になりやすいのでしょう。

そこで次にこうした日本人の低い姿勢のディフェンスについて、重心移動の科学的な特徴を考えてみましょう。

(2)重心と支持基底面の関係

ディフェンスの姿勢を科学的に考える上で、先ずは重心移動の仕組みを理解しましょう。

特に重要なのが、ヒトの「重心(身体重心)」と「支持基底面」です。

重心は、ヒトが立った時の「へそ」の近くにありますが、姿勢を低くすると、それに比例して低重心になります。

また支持基底面とは、地面と接する足の部分を囲んだ仮想の面を指します。

そして重心と重心線(重心から垂直に下げた仮想の線)が、この面の中に入っていると姿勢が安定するので立ち続けることが出来るのです。

重心、重心線、支持基底面の仕組みは、とても大切なのでぜひ覚えておいてください。

※重心移動とサッカーの関係を詳しくお知りになりたい方は、次の記事を読みましょう。
重心移動でサッカーが100倍上手くなる!【中学生でも分かる】

さて、話しをディフェンスの姿勢に戻します。

ディフェンスで腰を落とすと、そのままでは尻もちを付くので、どうしても大股で低重心になります。

そうすると支持基底面も広くなるのです(低重心=支持基底面が広くなる)。

この場合、立った姿勢で歩幅を狭くしていたら高重心で支持基底面が狭くなるため、体を傾けるだけで重心移動が出来ます。

つまりプレーの初動が速い!というわけですね(詳細については後述します)。

ところが姿勢を低くすると体勢が不安定になるため、先ほども解説したとおり、両足を開いて大股になるので支持基底面が広がるのです。

そうすると重心移動がやりにくいので、ボールに足が届きにくくなってしまいます。

またこうした支持基底面の広さは、抜かれて追いかける時の素早い反転を出来難くしています。

ここで、どうして支持基底面が広いと初動が遅くなるのか?という点について、もう少し詳しく解説しましょう。

ヒトは止まっている状態から走り出す時、いったん姿勢を低くしてから動き出しますが、この特性は小学生でもプロでも変わりません。

そもそもサッカーをやったことがない人でも、走り出す時は必ず姿勢を低くしてからスタートするはずです(短距離走のスタンディングスタートをイメージしてください)。

つまり初動で姿勢を低くするのは、ヒトの人体特性上で、とても自然な動作なのです。

この場合、高重心のディフェンスは、ふつうに立っているかのような姿勢を取っていますが、走り出す時は初動で自然に低くなれますよね。

ところが最初から腰を落とした低重心の姿勢では、それ以上は低くなれません。

そうするといったん姿勢を高くしてから、再び低くする…というムダな動作が必要になるのです。

例えば次の動画の1:35からのシーンのように低い姿勢で構えていても、ボールを奪う時はいったん姿勢を高くしてから足を出しています。

こうした姿勢の上下動はとても無駄な動きなので、初動のスピードを遅くする原因にもなっています。

また、この場合に動きを速くするとしたら、いわゆる体重移動になります。

体重移動とは、足の力を使って重たい上半身を動かすようなものです。

特に上半身と下半身の体重比は6対4で上半身の方が重たいので、低重心のディフェンスは、重たい荷物を背負ってサッカーをするのと同じことなのです。

そうすると姿勢を低くすればするほど、ディフェンスの動きが遅くなる…という悪循環に陥るわけですね。

それだったら、最初から高重心でいたらどうなると思いますか?

勘の良い方はお気づきですよね。

もっと速く動けるのです!

なお詳細は後述します。

(3)日本人は胴長短足で低重心

日本人は欧米人並みに身長が伸びたので足も長くなったはず…と誤解している方は意外と多いですが、実は胴長短足傾向は昔から変わっていません。

つまり身長は伸びても、股下は伸びていないのです。

文部科学省の平成27年度学校保健統計調査報告書によれば、子供たちは身長の伸びに比較して足の長さは伸びていない…という結果が判明しました。

この報告書の「年代別比下肢長(5~17歳までの変化)」によれば、日本の子供は成長期に身長は伸びても足はほとんど長くならないのです。

このような胴長短足の日本人は、日常生活でも低重心になります。

例えば、家の中ではクツを脱ぎますよね。また畳や床に座ったりしませんか?たぶん「よっこらしょ!」と腰かけたりするはずです。

実は、こうした日常生活は、胴長短足で低重心の日本人にとって非常に心地良い姿勢なのです

だから、日本人はサッカーでディフェンスをする時は腰を低く…という安定した姿勢を取るようになるのです。

要するに、無意識のうちに、「どっしり」とした低い体勢になってしまうわけですね。

先ほどの高校生たちも、試合中の一対一ではどうしても無意識のうちに重心が低くなってしまうのでしょう。

これに対して欧米人は家の中でもクツを履いたまま立っているか椅子に座っているので、ほとんどの姿勢が高重心のままです。

要するに日本と欧米人の重心や姿勢の違いは、サッカー以前の日常生活から来るものなのです。

(4)日本人の骨盤の形状と低重心

ヒトの骨盤の形状は前傾、直立、後傾という三種類に分かれています。

このうち骨盤前傾は欧米人に多い形状ですが、つま先重心なので走る動作に最適です。

これに対して、骨盤直立は日本人に多いですが、どちらかと言えばカカト重心のため、日常生活であれば安定しているものの、走る動作には適していません。

しかも胴長短足で低重心と言う特性もあるため、どちらかと言えば、相撲、柔道などの「どっしり」とした静的な安定性を求める競技に向いています。

骨盤後傾は、いわゆる猫背で姿勢の悪いタイプなのでスポーツには向きませんが、実は日本人に多い骨盤直立は骨盤後傾になりやすいのです。

その理由は簡単で、腰の曲がった老人を見れば分かると思いますが、加齢によって姿勢が悪くなってしまうからです。

これは日常生活で畳や床に座って過ごすことが多く、そうした面からも姿勢が悪い=低重心になりやすいのです。

例えば座っている時に正座をしていれば骨盤は前傾しますが、あぐらなどの姿勢では骨盤後傾になってしまいます(たぶんほとんどの人はふだんは正座をしないはずです)。

また、イスに座っていたとしても、背中が曲がりやすいので腰が丸まって骨盤が後傾します。

これに対して欧米人に多い骨盤前傾の人は背中が反っているため、年を取っても猫背になり難いです。

欧米の老人で、腰が丸まっている人が少ないことからも明らかでしょう。

このように考えると日本人は生まれてから大人になるまで、姿勢が悪くなりやすい生活を続けることから、自然と骨盤直立~後傾に変化するのです。

しかも胴長短足なので、さらに重心が低くなります。

そうなると日本人は相撲の力士のように、いつでも「どっしり」とした姿勢になるわけです。

これは無意識のうちにそのようになってしまうので、どちらかと言えば安定感を好むともいえますね。

そうした意味では、サッカーの一対一のディフェンスで、腰を落とした低重心になっても、本来「どっしり」とした姿勢を好むので、仕方がないのかも知れません。

※骨盤の形状とサッカーの関係を詳しくお知りになりたい方は、次の記事をお読みください。
骨盤前傾トレーニングで身体能力アップ!一流アスリートの特徴とは?
サッカーのドリブルの姿勢で正しいのは前傾?それとも直立?

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さて次は、海外のトップ選手(ピケ、ラモス)のディフェンス姿勢を解説します。

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