ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

ドリブルの間合いとは何か?答えは武道にあった!

サッカーのドリブルで相手を抜く時は「間合い」が必要です。

でも間合いの本当の意味を知っていますか?

実はその答えは武道にあります。

そこで今回は間合いとは何か?ドリブルの間合いを身に付けるための練習法について解説します。

スポンサーリンク

1.ドリブルの間合いとは何か?

(1)間合いの答えは武道にある

ドリブルで相手を抜く時の間合いの考え方は、武道と同じです。

日本空手協会・瀬戸塾の師範である瀬戸 謙介(せと けんすけ)さんによれば、間合いを次のように定義しています。

自分に有利な間合いを取る為には、まず自分の間合いを知ることです。
この間合いなら攻撃できる。
この間合いなら相手の攻撃をかわすことが出来る。
この間合いからでは攻撃できないといった事を日頃の練習においてしっかりと掴んで体に染み付かせておくことが大切です。
自分の間合いが解って初めて相手に対して有利な間合いが取れるようになります。

【引用出典:~「間合」について~

この話しの中で最も大切なことは「日頃の練習において(間合いを)しっかりと掴んで体に染み付かせておく…、自分の間合いが解って初めて相手に対して有利な間合いが取れる…」という点です。

つまり自分の間合いは自分で見付けるもの…ということですね。

これは実際の試合を見るとよく分かりますが、お互いに小刻みなステップを踏んで前後左右に行ったり来たりしてから技を繰り出しています。

これは相手を攻撃したり、かわしたりする間合いを保っているわけですね。

たぶん日ごろの練習で、何度も相手に倒されながら自分の間合いを覚えたのでしょう。

そうした意味では武道と間合いの関係は、とても深い意味があると思います。

ちなみに剣道などのほぼ全ての武道で、こうした間合いが必要とされています。

なぜなら武道は一対一の接近戦で勝敗を決するため、自分に有利な間合いが分かっていないと相手に負けてしまうからです。

これに対して野球やテニスなどには、間合いの概念がほとんどありません。

その理由は相手との接近戦がないからです。

でもサッカーのドリブルで相手を抜く時は、空手と同じ接近戦なので間合いが必要になります。

それではドリブルの間合いは、どのように考えたら良いのでしょう?

(2)ドリブルの間合い

①日本の指導

日本ではドリブルの指導では、次のように前後左右にボールを動かして間合いを作り出すような教え方が多いと思います。

こうした指導には、とても違和感があります。

なぜなら子供たちにとって間合いを作り出せたとしても、そうした間合いは例えば少し下がるとか横に移動するとかの取りあえずの距離ですよね。

これに対して本来の間合いは「この間合いなら相手をかわすことが出来るとか、この距離なら攻撃できる…」という自分自身の距離感(選手によって異なる)を指します。

そうすると、この距離感がどの程度なのか?という感覚的なものが最初に身に付いていないと、果たして相手からどれだけ離れれば良いのか?という間合いを簡単に作り出せないはずです。

つまり少し下がるとか横に移動する…などというような大ざっぱな発想では、選手それぞれの間合いは身に付かないのです。もちろんドリブルデザイナーで有名な岡部さんの一対一のように、相手から遠く離れていればボールを取られることがありませんよね。でもこのようなデモンストレーションは間合いとは言いません。

つまり自分自身の間合い(この距離なら相手をかわすことが出来る…)を先に覚えない限り、その次にある間合いを作り出すという練習をいくら指導しても意味がないのです。

これは足し算や引き算が出来ないうちに、方程式や因数分解を教えるのと同じだと思います。

この場合、先ほどの空手の例によれば「間合いは日頃の練習において…自分の間合いが解る」とありましたよね。

そのための練習として、あなたの子供さんが通うクラブや少年団などではきちんと指導しているでしょうか?

そもそもドリブルの間合いは相手から1~2m離れる…とかの決まったものではなく、人それぞれ違います。

また間合いはドリブルの繊細なタッチやキックの微妙なコントロールと同じように極めて感覚的なものなので、いくら「間合いが必要だ…」と言っても子供たちには本当の意味がすぐには分かりません。

だから日ごろの練習や試合によって経験した中から自分の間合いに気付かせるしかありませんし、口を酸っぱくして言い続けないとダメなのです。

ところが日本の指導は「間合い」という大切な本質の部分の理解が、極めてあいまいだと感じます。

たぶん指導者自身が間合いの意味をきちんと分かっていないのでしょう。

②ブラジルの子供たち

私は30年前にブラジル・サンパウロのクラブでアシスタントコーチをしていましたが、その頃の子供たちはどのようにして間合いを身に付けたのか?というと、それはストリートサッカーなどの経験からです。

ストリートサッカーは試合をやると言うよりも、ボールを奪ったり奪われたり…を何度も繰り返します。

これは日本とは違ってまさに真剣勝負です。

そうすると子供たちは相手からボールを奪われないためにどうしたら良いのか?ということで、いつの間にか間合いを覚えてしまうのです。

そうして基礎基本が出来上がった子供たちが、クラブのセレクションを受けたりスカウトされたりして入団するわけですね。

でも日本の子供たちは、こうしたボールの奪い合いの経験をほとんどしないうちにクラブや少年団に入団します。

もちろん多少の経験はあるでしょうが、それは子ども同士の単なるお遊び程度のものでしょう。

またクラブや少年団でのドリブル練習と言えば、お決まりのボールタッチ、ジグザグドリブル、一対一をやるくらいですよね。

しかも高学年になるとパスサッカーが主体になるので、ドリブルでボールを奪い合うという貴重な経験がさらに遠のきます。

例えば、試合中にいつまでもボールを持っていると「早くパスをしろ!」と言われませんか?

そうするといつまで経っても、自分の間合いは覚えられないのです。

それではどうしたら良いのでしょう?

2.ドリブルの間合いを身に付ける練習法

ドリブルの間合いを身に付ける練習法として最も効果的なのは、ブラジルのストリートサッカーのようにボールの奪い合いをたくさん経験させることです。

例えば、次のような私と息子がよくやっていた一対一ゲームはおススメですね。

この練習はクラブや少年団などでよくやる一回だけのマッチアップで終わってしまうような一対一と比べると、試合の想定度合い、難易度、学習効果が全く違います。

特徴は攻撃と守備に分かれて、相手のヒザの動きを見ながら間合いを維持しつつ抜いたらすぐに前を向いて攻撃を繰り返します。

しかも1~2分程度の短時間で何十回もマッチアップするのです。

またドリブルで足からボールが二個分以上離れたら、守備側はそこを狙って蹴り出します。

そうすることで子供なりにタッチの強弱を学び、膝下にボールを置くようになるのです。

このようにヒザ下にボールを置くようになると、今度は自然と相手との間合いが狭くなります。

なぜならボールの置き場がヒザ下に決まっているので、安心して攻撃に専念できるからです。

(日本ではボールの置き場と言う考えは、間合いと同じくらいにあいまいです)

そうすると間合いを詰められた相手は我慢し切れずに足を出してくるので、その瞬間を狙って抜くことが出来るようになるのです。

この場合、ドリブルでの間合いの取り方は諸説ありますが、私は「相手が足を出したくなる距離」と考えています。

なぜなら相手が足を出したくなる…という心理状態を見せた時点で、相手の動きをコントロールしているからです。

これは相手の動きを手玉に取る…と言っても良いでしょう。

先ほどの動画にもあったように、私が単に止まっている時の息子は思い切って間合いを詰めて来ます。その一方で私が足を出すとすぐに抜いてきます。

これは何を意味するのか?というと、相手の動きによって間合いが変化するということです。

つまり間合いは常に一定ではなく相手の動き方しだい…ということですね。

こうして身に付けた感覚が、先ほど解説した「この間合いなら相手をかわすことが出来るとか、この距離なら攻撃できる…という自分自身の距離感」を意味するのです。

したがって、私の息子はこうしたボールの奪い合いの中で自分の間合いを身に付けた…と言っても過言ではありません。

もっと言えば、間合いとは既製品の洋服を着るのではなくオーダーメイドの洋服を仕立てるのと同じです。

だからふだんのお決まりの練習でいくらマーカーやコーンを相手にしていても、なかなか身に付かないわけですね(つまり既製品の洋服を着るのと同じ)。

そうした意味で、ぜひ多くの子供たちにオーダーメイドの間合いを覚えてほしいと思います。

ちなみにこのような間合いの取り方は相手にどんどん接近することになるので、自然とメッシのように向かって行くスタイルになります。

次の動画はメッシの幼少期の頃の様子ですが、ひときわ小柄で10番を付けた左利きの子供がそうです。

メッシのドリブルの特徴は相手に向って間合いを詰めて抜くわけですが、よく見るとこの頃から今に通じるドリブルをやっていますよね。

相手との間合いを出来るだけ詰めていますし、むしろ相手を手玉にとって楽しんでいるかのようです。

たぶんこのようなプレースタイルは、ボールを奪い合う経験の中で身に付けたのでしょう。

それにバルサに所属している今でも、メッシは自分のお兄さんたちと自宅の練習場でボールを奪い合う練習をやっているようですからね。

このようにドリブルの間合いはボールの奪い合いの経験の中で、初めて身に付くということを覚えてください。

スポンサーリンク

3.まとめ

これまでドリブルの間合いとは何か?間合いを身に付けるための練習法について解説しました。

この場合、ドリブルの間合いは1mとか2mとかの決まったものではなく、また少し下がるとか横に移動するとかの大雑把なものでもありません。

そもそも間合いは人それぞれに違います。

また間合いは常に一定ではなく、相手の動きによって変化します。

だからボールの奪い合いの経験の中で、自分に合ったオーダーメイドの間合いを身に付けることが大切なのです。

これは空手の瀬戸さんの言うように「日頃の練習において(間合いを)しっかりと掴んで体に染み付かせておく…、自分の間合いが解って初めて相手に対して有利な間合いが取れる…」というのと同じです。

そうした意味で、ぜひ多くの子供たちがたくさんの練習の中で自分の間合いを覚えてほしいと願っています。