団子サッカーは赤ちゃんのオムツやおねしょと同じで、そのうち卒業します。
でもそんなに待っていられないとか、どうにかならないか?という意見もあるでしょう。
そこで今回は子供の団子サッカーについて、日本とブラジルの違いや、私の息子が卒業した様子などを解説します。
※この記事は2つのページに分かれているので、順番に読んでも良いですし、直接それぞれのページを読んでいただいても結構です。
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【団子サッカーと日本の子供たち】
【ブラジルの子供たちと団子サッカー】
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【団子サッカーからの卒業(息子の場合)】
【まとめ】
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【団子サッカーと日本の子供たち】
小学校低学年の子がサッカーをする時は、どうしても団子サッカーになってしまいますよね。
なぜこうなってしまうのか?というと理由は2つあります。
一つ目はサッカーをよく知らないこと、二つ目はこの時期の子供の特徴です。
(1)サッカーをよく知らない
小学校低学年は5人制や6人制などの比較的少人数の試合が多くなります(もちろん8人制もある)よね。
そうすると大人の目線であれば5対5とか6対6と考えるので、みんなで協力しながら試合をしてほしいと思うはずです。
でも子供にとってはそうではなく、自分を基準にした1対5や1対6の関係であり、5人制であれば1人目が1対5、2人目も1対5…となるため、チーム同士の横のつながりがないのです。
もちろんふだんはチームメイトとして仲良しなのでしょうが、それはあくまでも試合を離れた友達関係の場合であって、試合となれば一人だけの世界になってしまうのです。
またこの時期の子供はドリブルがほぼ全てなので、相手が何人いようが自分で全員を抜いてゴールを決めたいと考えています。
だからパスをすることはほとんどありません。
というか、子供はパスをする必要性が理解できないのです。
しかも味方が持っているボールを奪おうとする子もいるので、そうした場合は自分以外は全てが敵になります。
この場合、サッカーは団体競技なのでパスが必要だろう…という意見もあるでしょう。
でも残念ながら、それは大人の理屈でしかありません。
そもそも、この時期の子供にそうした考えを求めること自体がナンセンスなのです。
だから、子供の目線に合わせない限り、どうして団子サッカーになるのか?というのは大人には理解出来ないでしょう。
(2)小学校低学年の子供の特徴
文部科学省によれば、小学校低学年の子供は幼稚園や保育園児の甘えた特徴を残しつつも、大人の言うことを聞きながら、やって良い事や悪い事を覚えるとされています。
でも、こうしたことは家庭や学校などで大人が子供のそばにいて、いろいろと日常生活に深く関わっている場合だけです。
例えば、これは良い…、あれはダメというように子供の生活態度に大人が価値判断を決めますよね。
つまり大人という日常生活で審判の役目をする人がいる時だけ、この時期の子供は良い悪いを判断できるのです(例:子ども同士でイジメが始まるのは大人がいない時)。
これに対してサッカーの試合では、そうは行きません。
そもそもピッチ上は同年代の子供だけなので、良い悪いを決める大人がいません。
もちろんコーチが子供たちと一緒にピッチに入って、いろいろと指示するスタイルの試合もあるでしょうが、プレーそのものには関与できません。
また団子サッカーをして味方にパスをしなかったとしても、反則をしているわけではないので子供には罪悪感はないのです。
そうするとカオス(混乱状態)になってしまうだけで、収拾が付かなくなるのは当然だと思います。
この場合、ちまたで有名な教育学者や心理学者などは、この時期の子供はエゴの塊で協調性がないから団体競技には向かない…という意見もありますが、私はそれは違うと思います。
そもそも子供は反則をしていませんし、何ら悪い事をしていないので責めることは出来ないのです。
そうした意味で、小学校低学年の子供の団子サッカーは自然なものだと思います。
(3)団子サッカーを止めさせようとする指導者
チームによっては、小学一年生からパスを回して団子サッカーをまったくやらないクラブや少年団がありますよね。
私にとっては不思議でなりません。
たぶん、そのチームの指導者はとても優秀か?そうでないか?のどちらかだと思います。
この場合にとても危険なのは、指導者が強制的に団子サッカーを止めさせることです。
そもそもこの時期の子供は日常生活での善悪の判断は出来ても、チームプレーの善し悪しまでは分かりません。
だから、みんなで協力して試合をする⇒つまりパスの必要性はあまり感じないのです。
そうした意味で子供たちの理解度は「団体競技だからパスを繋いでゴールを目指すのが大切…」というのではなく、コーチに言われたからやっているだけと考えた方が良いでしょう。
これは小学校の運動会などで、先生に言われた通りのダンスやかけっこをした…というのと変わりません。
そうすると、こうした状況で育った子供たちは幼少期から大人の操り人形になってしまい、言われたことしか出来ない選手になってしまうのです。
実際にも歴代の日本代表の外国人監督は、ほぼ口を揃えて「日本の選手たちは言うことを聞き過ぎる(言われたことだけをやろうとする)」と言います。
私が思うにこの時期の子供たちに対しては、大人が知恵を絞って自然と団子サッカーを卒業できるような創意工夫(練習メニューの改善など)が必要だと思います。
これに対してブラジルの子供たちの様子はかなり違います。
そこで、次にこの点を考え見ましょう。
【ブラジルの子供たちと団子サッカー】
私は30年以上前にブラジルでジュニアとジュニアユースのアシスタントコーチをしていましたが、現地では団子サッカーをほとんど見たことがありません。
もちろんブラジル全土を見たわけではありませんが、たぶんほとんどないと思います。
その理由は2つあります。
一つ目はサッカーをよく知っていること、二つ目は団子サッカーにならない仕組みがあることです。
(1)サッカーをよく知っている
ブラジル人にとってのサッカーは、日本人が想像できないくらいに日常生活に根付いています。
「ブラジル人はサッカーボールを持って生まれる」という格言を聞いたことがある人は多いでしょうが、まさにそのとおりだと思います。
また、ブラジルのプロリーグは1部~4部までの全国リーグと州リーグがあり、テレビ中継や解説番組が毎日のようにあるので、子供たちは本物を見て育つのです。
さらに街中のあちらこちらでストリートサッカーをしている子供を見かけましたし、そうした様子を見ると幼少期からサッカー一色と言ったところですね。
その一方で。国民のほとんどは何らかの形でサッカーに関わっていますし、当時はサッカー以外のスポーツはほぼ全てがマイナー競技とみなされていたようです。
この場合、子供たちは本物が分かっているので、幼い子供でも「サッカーはボールを繋いでゴールを目指すスポーツ…」と理解しています。
だから子供たち同士のストリートサッカーでも、ドリブルだけではなくパスをするのは当たり前のこと…と考えているのです。
これに対して、日本でサッカーの人気が高まったのは平成になってからですよね。
また平成の初めの頃は、よく日本代表やJリーグの試合を放送していましたが、最近では地上波でたまに放送する程度です。
さらに、サッカー場まで行って観戦するケースはかなり少ないと思います。
その一方で、プロ野球がほぼ毎日のように試合しているのに比べて、サッカーはせいぜい週に2回程度です。
そうすると、子供たちにとっては本物に接する機会が少なすぎるのです。
要するに、ボールを繋いでゴールを目指すことを分かっているブラジルの子供たちにとっては、団子サッカーはあり得ないのでしょう。
(2)団子にならない仕組み
これは大きく3つに分けられます。
①親がサッカーをよく知っている
先ほど「国民のほとんどは何らかの形でサッカーに関わっている」と解説しましたが、これは大人がサッカーをよく知っているということです。
だから親子の関係でも、親から子にサッカーはどういうものか?を教えるのです。
そうすると子供は幼少期から大人のサッカー=プロのサッカーとは、どのようなものなのかが自然と分かるわけですね。
そうした点は日本とはかなり違うと思います。
②幼少期のストリートサッカー
子供たちがストリートサッカーをやる時に、同年代の子たちだけ…というのは意外と少ないです。
3~4歳の幼児もいますし、年上の子も混ざりますし、大人と一緒にやることもよくあります。
そうした中で幼少期の子供は、ボールばかりを見て団子になろうとすることがあります。
そうすると年長の子が教えるので、幼児は正しいサッカーを覚えて行くのです。
これは日本の古き良き時代の「ガキ大将」が、年下の子にいろいろと教える…というのとよく似ていますよね。
③ミニゲームとフットサル
ブラジルのジュニア年代の試合は7人制(低学年は5人制)が多いですが、練習では3対3や4対4をよくやります。
その理由は子供の視野が狭いので、最初から大人数の試合をやると、味方や自分を活かすためのグループ戦術などがよく分からないからです。
この場合に3対3であれば、先ずは攻撃で三角形を作るのが基本ですよね。
この時に2人が重なると、三角形が崩れて1人が孤立し、相手との1対2になってピンチになります。
実際の練習でもこうしたシーンは多いはずです。
そうならないためにも、いかに三角形を維持するのか?という基本戦術を最初に意識させるわけです。
これに対して4対4は、3対3と比べると大きく違います。
なぜなら、次のようにA-B-C、A-B-Dというように4つの三角形が出来るからです。
また4対4は、11人制の大人の試合でもピッチ上の至る所で似たような局面がよく見られますし、オフザボールなどの複雑な動きと判断力が求められます。
つまり4対4は、大人のサッカーの入り口なのです。
だから子供たちが3対3の基本をきちんと理解できるまで、この練習を何度も繰り返し(最低でも1~2年は続ける)てから4対4に移るのです。
その一方でブラジルではフットサルもよくやりますが、これはフィールドプレーヤーが4対4ですよね。
こうした4対4の状況は先ほども解説したとおり11人制の試合でもよく見られるので、それを見据えてオフザボールなどの複雑な動きや判断力を養成するのです。
先ほどご覧になった動画はネイマールの幼少期の様子ですが、ロナウジーニョやコウチーニョなども、このような経験を経て成長しています。
この場合、日本ではフットサルをやると足技が上手くなるとか、その反対にサッカーには役に立たないなど、いろいろな意見がありますが、こうした意見は4対4の本質をきちんと理解していない人たちの考えだと思います。
いずれにしても、このようなブラジルの子供たちの様子と比べて、日本の子供たちは小学校低学年で3対3がよく分からないうちに、いきなり4対4以上の試合をしようとしますよね。
そうなると団子サッカーになるのは、当然ではないでしょうか?
これまで解説したブラジルの子供に対する指導法は、特にブラジル国内に限ったことではありません。
ドイツでもイギリスでもスペインでも、幼少期の子供に対する指導法はほぼ同じなのです。
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さて次は、私の息子が団子サッカーをどのようにして卒業したのか?について解説します。
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