(2)軸足と足のアーチの使い方
先ほどの(1)体幹の使い方を簡単に言うと、体幹を使って浮身をしましょう…ということでしたよね。
これに対して、ここでは体幹の動きを補うための、「軸足と足のアーチ」の使い方について解説します。
①軸足の強さ
サッカーで浮身をする時は、体幹はもちろんですが、それとは別に軸足の強さも必要です。
なぜなら、ドリブル、キック、トラップなどのほとんどのプレーが片足立ちだからです。
ここで、最初に解説した中島選手の浮身を思い出してください。
浮身をする直前まで軸足で体を支えていて、浮身の瞬間に軸足が地面からわずかに離れていました。
これは何を意味するのかというと、ドリブルの浮身は軸足も使っている…ということです。
そうすると、軸足で体を支えらないような軸の弱い選手は浮身が出来ないわけですね。
例えば、次の動画の0:26からのシーンを見ると、ほとんど軸足(右足)だけで片足立ちをしていますよね。
もちろん利き足の左足が地面に付くシーンもありますが、体の傾きを見ると右側に傾いているので、「とも」の体重のほとんどは軸足に乗っています。
つまり、軸足で体を支えながら浮身をしているということです。
また、次の動画では軸足だけで地面をステップ(二度突き)していますが、これは左利きの選手に多いドリブルの特徴です。
こうした動作は、軸足が強くないとなかなか出来ません。
要するに左利きの選手は軸が強いということであって、また自然に浮身を覚えてしまうのです。
この場合、日本の育成年代の指導によくありがちな両足練習は、左利きには寛容(あまりうるさく言われない)なので、利き足を自由に使うことから自然と軸足が強くなります。
でも、右利きの選手はそうも行かず、両足練習を続ける結果、軸の弱い選手が多くなるわけですね。
そうすると、浮身が出来ず、ドリブルも上手くならないという悪循環に陥るわけですね。
日本で本格的なドリブラーが育たない理由は、こういうところにも原因があると思います。
さて、軸足を強くするための練習法ですが、これは毎度ご紹介しているとおり、ちょんちょんリフティングが最適です。
このリフティングは軸足を鍛えるとともに動的な体幹トレーニングにもなるので、先ほどの(1)体幹の使い方で解説した5つのポイントとの複合的な効果があります。
なお、ちょんちょんリフティングはキック力を付けるためだけのトレーニング法…と勘違いする方がいらっしゃいますが、そうではありません。
ドリブルが上手くなるための練習法も兼ねているので、覚えておいてください。
ちょんちょんリフティングがサッカーに役立つ驚きの効果
②足のアーチのバネ作用
足のアーチのバネ作用とは、土踏まずのアーチ構造を板バネのように使うという意味で、このアーチが高いほどバネの機能が高くなります。
これにより、体幹と軸足の動きに、さらに足のアーチのバネ作用も加わって、浮身がやりやすくなるわけです。
先ほどの動画の0:26からのシーンを改めて見ると、まるで月面着陸した宇宙飛行士のように浮いていますよね。
しかも、ヒザの曲げ伸ばしがほとんどないのでジャンプしているわけではありません。
要するに、体幹、軸足、足のアーチのバネを全て使って、浮身をしているわけですね(全身を使う)。
なお、足のアーチを鍛えるための練習法は、次の動画のような足指グーパーとスリスリをたくさん練習してください。
ちなみに「とも」は小二の頃から続けていましたが、土踏まずが異常なくらいに発達しています。
土踏まずのアーチを作る方法!【痛みの原因は偏平足】
(3)膝抜き
膝抜きは、浮身、沈身、鞭身と並んで、古武術の大切な技術ですが、特に重要なのは、膝抜きによって地面反力を得るということです。
この時、膝抜きによって重力落下するのでほんのわずかに体が沈み込みますが、この沈みは全体重を使って地面を蹴るのと同じ効果があります。
そうすると、地面反力が自分の体を押し返して来るわけですね。
そこでこの地面反力の使い方ですが、これまで解説した(1)体幹の使い方と(2)軸足と足のアーチの使い方は、どちらかと言うと自分自身の内的なパワーを利用するものです。
これに対して、膝抜きで地面反力を得るのは外的なパワーになります。
つまり、内的と外的の二つのパワーを利用するということですね。
それでは、なぜ地面反力のような外的なパワーが必要なのかと言うと、そもそも浮身はリラックスした状態になるので、先ほどの体幹と軸足・足のアーチだけでは、体を浮かせるための推進力が不足するからです。
したがって、膝抜きによる地面反力と言う外的なパワーを補うことで、初めて浮身が出来るのです。
要するに、体幹、軸足と足のアーチ、膝抜きが三位一体のスキルとして浮身を作り出しているので、膝抜きが出来ない人は浮身も出来ないというわけですね。
(4)重心移動
重心移動を使うと、体を素早く動かすことが出来ます。
例えば、立っている状態から走り出す時は、重心を支持基底面(両足と地面が接した部分)の外に出すだけで、それほど地面を強く蹴らなくても初動が速くなるのです。
この場合の重心移動は、浮身から沈身、鞭身から沈身という動作の切り替えに利用すると素早い動きが出来ます。
ところが日本人は胴長短足で低重心なので、やや重心移動が苦手(重心が支持基底面から外れにくい)なため、どうしてもドタバタしたような動きになりやすいです。
そこで、海外の選手たちのような高重心を意識するようにしてください。
これは海外の心理学の実証実験でも明らかですが、ヒトは特定の部位に意識を向けると、その部分が目標に対して効果的な作用をするという研究結果があるので、この原理を活用しましょう。
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(5)一本歯下駄トレーニング
これまで浮身、鞭身、沈身の使い方と練習法を解説しましたよね。
特に練習法については、腸腰筋トレーニング、ちょんちょんリフティング、足指グーパーとスリスリを除けば、その他の大部分は一本歯下駄トレーニングによって、ある程度は浮身が身に付きます。
もちろん膝抜きや重心移動もいつの間にか覚えてしまいます。
その理由として、「とも」が小三の頃の練習の様子(動画の0:22~0:55のシーン)を見ると、この頃には浮身が出来ていたからです。
また、当時は足を速くする練習として、身体能力を高くするために、一本歯下駄トレーニングを小二の三学期から重点的に練習していたことが良かったのでしょう。
この場合、スポーツは専門性が高いので、特定の競技が上手くなるためには必要最低限の身体能力が必要です。
ところが、最近の子供はこのような基礎的な身体能力を養成しないうちに、サッカーを始めてしまうケースが多いですよね(例えば幼児期にほとんど外遊びをしないなど)。
そうした意味では、先ずは一本歯下駄トレーニングを徹底的にやって、身体能力を高くすることも大切なので、ぜひ参考にしてください。
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【まとめ】
これまで、 浮身・沈身・鞭身の仕組みと、サッカーのプレーにおけるいろいろな使い方と練習法を解説しました。
特に浮身と沈身の特徴として、一つ目は予備動作がないこと、二つ目は動きが素早くなるという大きな効果があります。また鞭身も合わせて覚えることで、サッカーのいろいろなプレーに応用できます。
この場合、蹴球計画さんの記事にもあったように、どんなに難しい抜き技を覚えても、体が浮かない限りドリブルは上手くならない…ということも大切にしてください。
ぜひ多くの子供たちが、浮身・沈身・鞭身を覚えてサッカーが上手くなるように願っています。