【インサイドトラップの正しい仕方】
正しいインサイドトラップは、これまで日本で一般的とされた中村選手のような止め方ではありません。
香川、長友、久保、中島などのように、臨機応変にプレーが切り替えられるテクニックを身に付けるための、基礎基本のスキルと考えてください。
つまり、将来の一流選手を目指すための応用性の高い止め方を覚える…と言っても良いでしょう。
その場合のポイントは2つあります。
(1)クッションコントロール
(2)浮身を覚える
また、この2つのスキルが身に付けば、中村選手のような単に止めるだけのトラップは簡単なので、あえて練習する必要はありません。
もしも覚えるとしたら、10分くらい練習すればすぐにマスターできるでしょう。
(1)クッションコントロール
①ボールの勢いを吸収する
クッションコントロールは、ふつう浮き球のトラップでよく言われるものですが、インサイドトラップでもこの考え方が必要です。
つまり、押すでも引くでもなく、ボールの勢いを吸収するという止め方です。
具体的なやり方は、次の2つの動画をご覧になるとよく分かります。それぞれ短く編集しているので、ぜひご覧ください。
この止め方は動画の中でも解説しているとおり、足をコンニャクのようにするとか、干した布団にボールが当たって止まる…というイメージですね。
その際、全身をリラックスして、足首を直角くらいに曲げますが、決して足首に力を入れて固定する必要はありません。
なぜなら、過度に固定してしまうと筋肉が緊張し、インサイドの面が硬い壁のようになってボールが跳ね返ってしまうからです。
むしろ適度にリラックスした方が、ボールが当たった瞬間に足首が「くにゃっ」と変形するので勢いが吸収できます。
試してみると分かりますが、どんなに強いボールでも不思議なくらいに止まりますよ。
この場合、ボールが止まる仕組みを物理的(運動量保存の法則)に考えると、ボールと同じ力を当てるか?勢いを吸収するか?の二つの方法があります。
その場合、向かって来るボールの勢い(運動エネルギー)を10としたら、10の足の力で止めようとしても、ボールは柔らかいので跳ね返りますよね(弾性エネルギーが生じる)。
そうすると、中村選手のように足首を固定して止めようとすると、少し手前に跳ね返るのです。
こうした仕組みを子供さんに教えるとしたら、ボールの運動エネルギーの10が足に当たった瞬間に、8の衝突のエネルギー(衝突した瞬間に消える)と2の弾性エネルギーに変化し、残った弾性エネルギーが0になって止まる…と説明してあげても良いでしょう。
単なる算数なので難しくはないはずですよ。
これに対して足をコンニャクのように脱力すると、ボールの運動エネルギー10を全て吸収するので、跳ね返るための弾性エネルギーは生じません。
だから、ピタッと止まるのです。
したがって、この止め方は物理的に考えても正しいわけですね。
②足を当てる場所
足を当てる場所は、ボールの中心あたりです。
その理由は、止めた直後にボールを動かすプレーを想定しているからです。
この場合、そのまま止めずに蹴ればダイレクトパス(ワンタッチパス)が出来ますし、小学校低学年でもすぐに力加減を覚えられますよ。
また、こうした力加減を覚えると、ドリブルに切り替えるのも簡単です。
これは、最初からボールの中心を捉えていることと深く関係します。
例えば、中村選手のようにボールの少し上に足を当てて止めてから、ドリブルに切り替える場合は、いったん持ち直す必要があります(ボールの中心や下の方をタッチし直す)。
これに対して、クッションコントロール型のインサイドトラップは、そのままボールを止めても良いですし、ドリブルやキックにも柔軟に切り替えられるわけです。
特に、このテクニックは試合中の密集した場所で威力を発揮します。
これに対して中村選手は、試合中ではスペース(フリーの状態)でボールを持つことが多いので、ボールを持ち直してドリブルを始めたとしても、動作の切り替えの遅さは目立ちません。
それに、彼は密集した場所ではあまりプレーしないようです。
つまり彼はフリーの時に止めやすいトラップを多用しているので、いわば彼のプレースタイルに合った止め方をしているだけなのです。
そうすると彼の止め方では、狭い場所でプレーする場合は使い難いということですね。
なお、ボールの中心を止められるようになったら、次はボールの上、下、左、右というように、いろいろな場所を止められるようにしましょう。
なぜなら、いろいろなドリブルやキックに切り替えられるようになるなど、プレーの幅が広がるからです。
なお、詳細については「3.練習方法」で詳しく解説します。
③足の止める場所
足の止める場所はインサイドキックを蹴る場所と同じインサイドで…というのは、日本によくありがちな指導です。
でもインサイドで止めるのは、ほんの一例だと考えましょう。
もしも子供が、インサイドトラップはインサイドで止めるもの…と考えてしまったら、他の場所で止めるやり方を覚えなくなります。
やはり上手くなりたかったら、次の画像のように最低でも3つの場所で止められるようにしましょう。
(A)親指の横
(B)インサイドの面
(C)くるぶし~かかと
例えば、イニエスタ、シャビ、ブスケツなどのスペインの選手たちは、インサイドだけではなく、いろいろな場所で止められます。
またメッシやジダンなども同じで、日本の選手なら、香川、長友、久保あたりが、いろいろな場所でボールを止めています。
どちらかと言えば、ドリブラーとパサーの両方を兼ね備えたマルチタイプの選手が、密集した場所でもボールを奪われないように、このようなトラップをしているようです。
別の言い方をすると、トラップはボールタッチの一つとして考え、止め方の問題ではなく、次のプレーのスムーズな切り替えやすさを重視すべきだと思います。
したがってインサイドトラップはインサイドだけで止めるもの…という考え方は、絶対にしない方が良いでしょう。
これに対して「そんなことはないだろう…。いつかはいろいろな止め方を覚えるはずだ…。」と考えている指導者がいたとしたら、それは怠慢なので指導者失格です。
そうした考え方は、あなたの指導の限界なので今すぐに辞めましょう。
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さて、次は「(2)浮身を覚える」を解説します。
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