ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

サッカーの教え方で最も大切なことは何か?

あなたは子供にサッカーを教える時に、間違った教え方をしていませんか?

もしかして、教えたつもりになっているだけかも知れませんよ。

そこで今回はサッカーを教える時に最も大切なことは何か?また私が実際の試合で子供たちに教えてすぐに結果を出した事例を解説します。

お父さんお母さんの子育ての参考にもなるので、ぜひお読みください。

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1.教えるとは何か?

(1)教えることと自立

サッカーの練習や試合中、監督やコーチたちは大声で「ああしろ!こうしろ!」とよく言いますが、これは子供にとって何を意味していると思いますか?

実は、答えを教えてしまっているのです。

しかも子供は大人と比べてサッカーの経験が浅いので、それを唯一の正解と考えてしまいがちです。

そうすると、監督やコーチたちの言うことを聞いていれば良い…ということで思考停止になってしまうのです。

そんな教え方で、子供たちは成長するのでしょうか?

特に弱小チームの指導者に、よくありがちなことだと思います。

これに対して、ご家庭のお父さんやお母さんたちも同じことをしています。

例えば、子供が朝起きたら「早くご飯を食べて!」「歯を磨いた?」「忘れ物はない?」「遅刻するよ!」なんて言ったりしていませんか?

また、学校から帰ったら「宿題はやった?」「風呂は入ったの?」「早くご飯を食べて!」「早く寝なさい!」と言っているはずです。

もちろん子供のことを可愛く思って、いろいろとやってあげたいのはよく分かります。

でも子供にとっては、親の言うことを聞いていれば良い…ということで、自立を妨げているのです。

つまり子供にとっては、サッカーをする時も家庭にいる時も、自立出来る状況ではないわけですね。

そもそも、子供は大人になったら結婚して家庭を持たなくてはいけません。

もしも、大人になった時に自立できなければ困ってしまいますよね。

またサッカーの場合も同じで、例えば子供が小1でジュニアチームに入団したとしたら、指導者たちが教えられるのは6年間しかありません。

その上には、ジュニアユースやユースのカテゴリーもあるのです。

もしもジュニアの年代で、監督やコーチたちの言うことしか出来ない選手に育ってしまったら、その子の将来はどうなるのでしょう?

単なるロボットにしかなれませんし、プロになるなんて夢のまた夢です。

つまり、いろいろと教えているつもりでも、子供の自立には何の役にも立たないのです。

お分かりですか?

子供に教える…ということは、その子が成長した後の自立を見据えなくていけないのです。

それでは、どうしたら良いと思いますか?

(2)答えは教えない

学校でテストをする時、先生は問題用紙と答案用紙を一緒に配ったりしませんよね。

こんなことをしたら、全員が満点になってしまいます(笑)。

ところが、先ほども解説したように、サッカー指導者も親たちも、子供に対してこれと同じようなことをしているのです。

ところが、学習塾の講師はそうしたやり方は絶対にしません。

「いつやるの?今でしょ?」で有名な林先生は予備校の講師で、今やテレビの司会や作家などのマルチタレントとして大人気ですよね。

そうした林先生であっても、やはり最初から答えを教えているわけではないのです。

例えば、林先生がクイズ番組などでゲストに出題する時、次のようなシーンを見たことはありませんか?

林先生「高血圧の改善に良いとされている食材の○○は、どのように調理したら良いのでしょう?」

ゲスト「うーん。分からないなぁ…」

林先生:①「それでは、みなさんはふだん〇〇をどのように調理していますか?」

ゲスト「焼いたりとか…、煮たりとか…」

林先生:②「先ほどの説明VTRでは、○○は熱を加えると栄養分が落ちると説明していましたよね。」

ゲスト:「あっ!」

林先生:③「それでは答えをフリップにお書きください。」

実は、こうしたシーンには、人に物事を教える時の秘訣が隠されています。

①でヒントを与え、②で気付かせて、③で考えさせているのです。

こうした「ヒントを与える→気付かせる→考えさせる」という三段階の手法は、塾の先生が子どもに教える時の典型的な指導法で、今も昔も変わりません。

しかも、この三段階のうち、もっぱらやっていることは「ヒントを与える」だけで、その他の「気付かせる」と「考えさせる」は子供にやらせているのです。

ところが、そうであっても、なかなか正解に辿り着けない子供もいるでしょう。

その場合は、子供の学力レベルに合わせてヒントを噛み砕いて根気よく出し続けます。

また塾の先生としては、ほとんど答えになってしまうようなヒントを出すことになったとしても、別に構わないと考えているのです。

なぜなら、子供が自分で気付いて、考えて、答えを出すという達成感を体験させるためです。

これによって、子供が本当の意味で成長するわけですね。

そう言えば、少し前に「やる気スイッチ…」なんてCMがありましたよね。

これは子供に達成感を体験させることで、やる気がどんどん出て来る…という仕組みです。

要するに、「教える」とは問題の答えを教えるのではなく、ヒントを教えることなのです。

そうすることによって、子供は、気づいて、考えて、答えを出すわけですね。

さて次は、「ヒントを与える→気付かせる→考えさせる」について、もっと具体例をあげながら、さらに詳しく考えてみましょう。

(3)ヒントと自立

試合中にドリブルばかりして、すぐにボールを奪われる子供がいたとします。

そういう時に「パスをすれば良いんだ!」とか「お前はドリブルが下手なんだから!」と言ったら、その子供はどうなるでしょう?

たぶんドリブルをほとんどやらなくなると思います。

そればかりではなく、常にパスの方が正しいと考えてしまうかも知れません。

なぜなら思考停止になって、自分で考えようとしなくなるからです。

また、もう二度と起こられないようにしよう…という恐怖感だけになることもあるでしょう。

そうした場合、指導者は答えを一方的に出すのではなく、先ほど解説した「ヒントを与える→気付かせる→考えさせる」のスキルを使いましょう。

これは難しい事ではなく、林先生がやっていたようにヒントを出すだけです。

その後は、子供に気付かせて、考えさせれば良いのです。

次の練習日までの宿題にしても面白いと思いますよ。

その場合、ドリブルばかりする子供に「ボールを奪われないためにはどうしたら良いのか?」「どうしてパスの方が良いのか?」「ドリブルをする時はどういう時か?」と問いかければ、それがそのままヒントになります。

小学校低学年だったら、10m先にボールを運ぶためにはドリブルとパスはどちらが速いのか?という実験をやらせてみたらどうでしょうか?

高学年だったら、パスをすれば速い攻撃が出来るので、得点チャンスも広がるというヒントを与えるのも良いと思います。

また、パスをして自分がスペースに行って貰い直すことで、味方を使うとかのオフザボールの重要性に気付く機会にもなるのです。

さらにドリブルをするのはどういう時が最適なのか?ということに気付かせれば、ドリブルとパスの使い分けも考えるようになります。

こうした気付きに結び付くようなヒントを出し続けることは、子供が考えるきっかけに繋がるのです。

つまり、「ヒントを与える→気付かせる→考えさせる」ということで、サッカーを学ぶためのサイクルが出来るわけですね。

また、ここまで子供が成長すれば、放っておいても、後は勝手に「どうしたら良いのだろう?」と自分で考えるようになります。

そうすると自然と子供の自立に繋がるわけですね。

もちろん、この考え方は親御さんの子育てにも通じます。

子供にいろいろとうるさく言うのではなく、身の回りのことは放っておいても良いのです。

例えば「忘れ物はない?」「遅刻するよ!」なんて言う必要はありません。

忘れ物をしそうなら、させれば良いのです。遅刻をしそうなら、させれば良いのです。

どちらも子供にとっては恥ずかしいことなので、自分なりに考え直します。

そうすることで、子どもの自立を促すのです。

私は貧しい家庭に生まれて5人兄弟の4番目として育ちました。

そのため、さすがに親は私の子育てには、ほとんど手をかけられなかったので、身の回りのことは自分でやるしかありませんでした。

つまり生まれ育った環境が、私を自立させるように仕向けたわけですね。

でも今は少子化のためか、親は子供に手を掛け過ぎです。

子供の自立を考えるのであれば、親自身が子供から離れて距離を置くようにようにしましょう。

これに対して、サッカー指導者の中には「たくさんの子供を教えるのだから、そんなヒントをだすなんて面倒なことはやっていられない…」などと考える人がいるかも知れません。

でもそうした人たちは、ハッキリ言って指導者を辞めた方が良いでしょう。

なぜなら、自分の力量の限界を表明しているからです。

この程度のことは、努力をすれば出来ないはずはありません。

だから、自分で教え方を学んで今すぐに改善するか、そうでない場合は子供にサッカーを教えるべきではありません。

指導者のみなさん、自分なりにきちんと考えましょう。

あなたの姿勢が子どもの未来を決めるのです。

さて次は、私があるチームの子供たちに魔法のヒントを与えて快勝したことがあるのですが、その時の事例をご紹介します。

大切な内容なので、ぜひ参考にしてください!

2.ヒントを与えた例

私は以前、近隣の少年サッカーのチームでお手伝いの臨時コーチをしたことがあります。

そうした中で、地元のカップ戦が開催されました。

先ずはグループリーグですが、初戦は1対5の完敗でした。

昼食の時の選手たちの表情は暗かったです。

そこで、選手たちといろいろな話をしてみました。

私「みんな悔しくない?」
子供たち「すごく悔しい?」

私「次も試合があるけど、どうしたら勝てるのか分かる?」
子供たち「…」

私「それじゃあ、きっと負けちゃうね」
子供たち「…」

私「試合というのは、練習で出来たこと以上のプレーは出来ないんだよ。」
子供たち「うん。分かるよ。」

私「さっきの試合では負けたけど、相手がボールを持った時に、みんなは何人でプレスに行ってた?」
子供たち「1人かな?」

私「それなら、ボールを確実に奪うためには何人でプレスをかけたら良いと思う?」
子供たち「2人以上で…」

私「そういうのは、なんて言うんだっけ?」
子供たち「数的優位…。」

私「それなら、攻撃の時に確実にパスをつなげるとしたらどうすれば良いのかな?」
子供たち「あっ!数的優位を作れば良いんだ!」

私「そうだよね。でも君たちはすぐにボールを奪われるよね。」
子どもたち「うん。たしかに…。」

私「FCバルセロナの選手たちは、パスをどうやって出してるかな?」
子供たち「すごく早いパスだね。」

私「そうだね。ワンタッチとかツータッチだよね。君たちにも出来ないかな?」
子供たち「練習だったら、出来るけど…。」

私「ちょっと待って?さっき、私は試合というのは練習で出来たこと以上のプレーは出来ないと言ったよね」
子供たち「うん…。」

私「練習で出来てるってことは、試合でも出来るんじゃないかな?」
子供たち「あっそうか!」

私「ここで、みんなの約束事を作ったらどうだろう?」
子供たち「そうだね。そうする!」

私「守備でプレスをかける時や攻撃でパスをつなぐ時はどうする?」
子供たち「必ず二人以上で!」

私「君たちがすぐにボールが奪われないためには?」
子供たち「ワンタッチとかツータッチで…、3秒以内にパスを出す!」

私「それともう一つ。君たちは味方のパスを受ける時に、ヘイ!って呼んでるよね?」
子供たち「うん…」

私「このチームに「ヘイ」って名前の人はいるの?」
子供たち「いないよ。」

私「だったら、ちゃんとした呼び方は出来ないかな?」
子供たち「そうだね。名前で呼んでみるよ!」

私「それと、プレーに関わっていない人は見ているだけで良いのかな?」
子供たち「あっ!コーチングだね。」

私「みんなの約束事ができたね。」
子供たち「攻撃と守備は二人以上でやる。パスはワンタッチとかツータッチで出す。パスを受ける時は名前で呼んだり、みんなでコーチングする。」

私「そうだね。君たちは大人の操り人形じゃないんだよ。来年から中学生だろ?言われたことだけを出来ていたんじゃダメなんだよ。みんなで考えて試合をしようよ。」
子供たち「うん分かった!ボクたち頑張るよ!」

この時、子供たちの目の色が変わったのを、今でもよく覚えています。

子供にサッカーを教えるというのは、こういうことではないでしょうか?

やれば出来るはずなのに、なぜ出来なかったのか?どうすれば出来るのか?ということに対して、根気強くヒントを出し続けるのです。

それによって「ヒントを与える→気付かせる→考えさせる」ことになるわけですね。

だから、最初から答えを教えては絶対にダメなのです。

さて二試合目の結果ですが、3対0の完勝でした。

子供たちは、私が与えたヒントに対して、自分で考えて答えを出して頑張ってくれました。

試合後の子どもたちの表情は、すごく明るかったです。

子供たちは「すごく楽しかった!」「こんなに楽しく試合したのって始めてだよ!」と喜んでいました。

たしかに、自分たちで考えて試合して勝ったのだから楽しいですよね。

初戦に完敗して落ち込んでいたのがウソみたいでした。

でも、初戦に負けた後に「ああしろ!こうしろ!」と指示をしていたら、子供たちはどうなっていたと思いますか?

もちろん指示が適切だったら、もしかして勝っていたかも知れません。

でも、それでは言われたことをやっただけなのです。

そもそも少年サッカーは子供が主役で、指導者や親たちは脇役です。

だから大人は黒子に徹して、子供たちが気付くまで、粘り強くいろいろなヒントを与えましょう。

それが本当の意味で、子供にサッカーを教えるということなのです。

3.まとめ

これまで、子供にサッカーを教えるとは何か?また実際の試合で私が子供たちに教えたことなどについて解説しました。

特に大切なのは、答えを教えることではありません。

ヒントを出すことなのです。

そうすることによって、子供は、気づいて、考えて、答えを出して、やがては自立に繋がるというわけですね。

ぜひ、全国の指導者や親御さんが、この点に気付いて、子供たちに正しくサッカーを教えるよう願っています。

【画像引用:Youtube.com