ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

サッカーで視野を広げる方法と練習法!何をどう見れば良い?

サッカーの試合で広い視野を持つのは、とても大切です。
ところが育成年代の指導では「周りを見ろ!」と言うだけで、子供たちは何をどう見たらよいのか分からないでしょう。

そこで今回は、試合中に視野を広げる意味、何をどう見れば良いのか、視野を広げる練習法などについて詳しく解説します。

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1.視野を広げる意味

(1)試合中の視野と状況判断

サッカーの試合で広い視野を持つのは、適格な状況判断にとって必要不可欠です。
特にサッカーは広いピッチ内で、11人対11人が攻守で複雑に入り乱れるため、味方、敵、スペース、ボールの位置を常に把握しなくてはいけません。

ところがボールばかり見ていると、目の前に起きているプレーだけしか分からないでしょう。
そうすると、その周囲で何が起きているのか?次に何が起きるのか?という状況判断が出来ないのです。

だからこそ、常にピッチ全体を見渡せるような広い視野が必要になるわけですね。

この場合、他の競技はプレーエリアがはっきりと分かれるため、サッカーほどの視野の広さはほとんど必要ありません。
例えばテニス、卓球、バレーボールなどは、ネットを挟んで自分と相手がハッキリ分かれます。
また野球は毎回攻守が交代するので、サッカーのように7~8人の選手が味方と敵に分かれて複雑にプレーすることはありません。
基本的にはピッチャーとバッターの一対一の関係から始まるのです。

さらに、こうしたスポーツは一回ごとにプレーが中断して、再開するという特徴があります。
そのためプレーが中断している間に、落ち着いて次の展開の状況判断をすれば良い…という時間的な余裕が生れるのです。

ところがサッカーでは、審判が笛を吹かない限り試合が続行します。
そうすると今の時点から3秒先の未来は、現状と全く違って目まぐるしく変化するのです。
そうした意味でサッカーは、プレーをしながら常に状況判断を考えなくてはならないという特殊なスポーツと言えるでしょう。

だからこそいつも広い視野を保って、状況を把握する必要があるのです。

こうした視野は、オフザボールとプレー中ではいろいろと変わってきます。
そこで、次にこうした点を解説します。

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(2)オフザボールとプレー中の視野

試合中の視野は、①オフザボールと②プレー中でかなり違って来ます。
そこで、この二つの違いを考えてみましょう。

① オフザボール

先ず、①オフザボールで必要な視野は「プレーに関わらない場合」と「プレーに関わりそうな場合」の2つに分かれます。

【プレーに関わらない場合】

これは例えばボールから遠く離れている位置にいる場合などで、次のような状況の時です。
・ピッチの一方のサイドがプレーエリアになっている場合で、自分が逆サイドにいる時。
・前線がプレーエリアになっていて、自分がDFラインにいる時(この反対もあり)。

要するに、自分のポジションが現在のプレーエリアから前後左右に離れている時ですね。
こうした場合は、先ほどのテニス、卓球、バレーボール、野球のように一時的にプレーが中断したようなものです。

自分のポジションが現在のプレーエリアから前後左右に離れている時

こうした状況であれば、直ぐにプレーに関わるわけではないので落ち着いて視野を広くして周りを見ることができます。

特にボールウォッチャーになってしまう子供は、こうした状況の時に視野を広くする意識を持つのが大切ですね。

【プレーに関わりそうな場合】

これは先ほどと違って、自分がプレーエリア内にいる時です。

例えば攻撃であれば、パスが来るかも知れない…、スペースを作るための動きが必要かも知れない…、オーバーラップが必要かも知れない…などと考えている時ですね。

プレーに関わりそうな場合

これとは別に守備の時は、プレスに行く必要があるかも知れない…、マークに付く必要があるかも知れない…などと考えている時です。
要するに、今すぐにプレーに関わるわけではないが、近いうちにそうなるだろう…と予測している時ですね。
だからボールを持ったり奪おうとしているようなプレー中の時よりも、ほんわずかですが広い視野を持てるはずです。

先ほどのボールウォッチャーを卒業したら、次のステップはこうした状況でも視野を広くする意識を持ちましょう。

② プレー中

これはオフザボールと違って、ボールプレーに関わっている時です。
例えば攻撃の時は、パスを出したり受けたりする時、スペースを作るための動きやオーバーラップなどです。
守備の時は、プレスに行く、マークに付く、パスコースを塞ぐ時などです。

この場合、ボールを持っているかどうかは関係ありません。
なぜならプレー中は、3対3や2対2のように複数の味方と敵が入り乱れるからです。
だからボールを持っている選手が一人であっても、その周囲でお互いが連携するので、こうした複数の選手たちは全てプレー中と言うことになるのです。

こうしたプレー中の視野はあまり広く取れませんが、それは仕方のないことです。
なぜなら、目の前のプレーに集中しなくてはいけないからです。
そうしないと攻撃側はボールを奪われますし、守備側は突破を許してしまいます。
実際にも海外のトップクラスの選手たちは、プレー中はボールに集中しています。

ボールに集中するメッシ

こうした場合に首を振って視野を広く取ることが出来るのは、敵のプレッシャーがない時だけです。
例えば、運ぶドリブルやフリーでパスを出せる時ですね。

ところが日本の育成指導では、どんな時でも「顔を上げて!」とか「周りを見ろ!」などと言います。
これではプレーに集中できませんし、ミスが起きる原因です。

さらにボールから目を離すとプレーが遅くなります。
もちろんボールを見ないでプレーするのがいちばんですが、例えば突破のドリブルの時など、必ずしも全ての状況でボールを見なくて済むということはあり得ません。

私が思うに、オフザボールとプレー中の視野は、二段階で使い分ける必要があると考えます。

先ずオフザボールの時は、プレーに関わらない場合とプレーに関わりそうな場合に、可能な限り視野を広くして必要最大限の情報を得ることが大切です。
要するに、前もって周りを見ておくということですね。

次にプレー中は、そうした事前の情報に基づいて周囲を確認しながらも、プレーに集中すれば良いと思います。
ただし相手のプレッシャーがない時であれば視野を広く取れるので、そうした時はいち早く状況の変化を察知するために視野を確保するという慎重さも大切です。

そうした場合であっても、日本の指導でよくありがちな「首を振って…」というのは難しいケースは多いでしょう。
例えば周りを敵に囲まれたら、ボールを守ることで精いっぱいのはずです。

こうした場合の改善策とし、眼球を動かしたり間接視野を使ったりしながら、可能な限り視野を確保する方法をきちんと身に付けた方が良いと思います。

そこで次に、眼球を動かして視野を確保するという点で、とても関係の深い中心視野、周辺視野、動体視力について解説します。

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(3)中心視野・周辺視野と動体視力

① 中心視野と周辺視野

ヒトが両目を動かさずに見える視野は、左右合わせて約200度の範囲です。
そのうちの中心視野は約5度の範囲(学説によっては30度という意見もある)になり、これ以外は全て周辺視野になるのです。
実際に視野に入っていても、意外と見えてないのはこうした理由に基づくわけですね。

中心視野と周辺視野のイメージ画像

こうした場合、試合中にボールばかり見るのは極めて限られた5度の範囲しか見ていないわけなので、これでは次の展開の予測や状況判断は難しいでしょう。

そこで試合中に首を振って周りを見ることが必要ですが、そうした場合でも中心視野が左右に移動するだけでしかありません。
つまりヒトの視野の特性によって、モノを見る時はどうしても中心視野の狭い範囲に拘束されてしまうのです。

試しに、あなたの首を左側に向けて1~2m程度先にある物を見てください。
次に、首を右側に向けて1~2m程度先にある別の物を見てください。
そうすると先ほど左側で見た物は見えますか?
たぶん視野から消えてしまったのではないでしょうか?

つまり中心視野が左右に移動するだけで…とか、狭い範囲に拘束される…というのは、こういう意味なのです。

そもそもヒトは何かを見ようとすると、無意識のうちに両目の焦点を合わせようとします。
また動いているモノほど、一点に集中して見ようとします。
なぜなら、危険なモノかどうかを判断するためです。

しかも、こうしたメカニズムが無意識のうちに働くので、そうした点でも中心視野に抑制された生活が日常的になるのです。

だからサッカーの試合中でも、ヒトは中心視野の特性から逃れられないわけです。

そうした意味で試合中に広い視野を持つためには、如何にして中心視野の拘束から逃れ、さらに周辺視野を拡大するのか?という点が大切です。

そこで重要なのが「動体視力」のレベルアップです。

② 動体視力のレベルアップ

動体視力は主に眼球を動かすことによって視野を広くするのですが、だからと言って正確に言えば人体特性上の中心視野の狭い範囲が変わることはありません。
むしろ眼球を動かすことによって、中心視野の位置を左右にスピーディーに移動させる…という方が正しいでしょう。

例えばスロットマシーンの絵柄を見る場合、眼球を上から下に動かして模様を瞬時に捉えようとしますよね。
そしていったん眼球を下から上に戻して、再び絵柄を追いかけます。
つまり、眼球の上下動を延々と繰り返すわけですね。

こうした場合、眼球を固定して、首だけを上下に動かしても理論的には絵柄を追うことが出来ます。
まるで「うんうん」と頷き続けるようなものです。
ところがヒトの頭の重さは体重の10%なので、体重が60㎏の人は6㎏になります。
そうすると首の筋肉と頸椎を使って、頭の重さである6㎏分を重りとして動かし続けるようなものです。

そうした意味では、サッカーで視野を確保するために首を振るのは、頭の重さを左右に振ることと同じです。
意外と知られていませんが、よく試合後半の疲労によって、周りを見れずにケアレスミスを起こすのはこれが原因なのです。

これに対して眼球を動かす時は6つの筋肉を使いますが、そもそも眼球自体は軽いものです。
そうすると、首を振るよりも目を動かした方が速いということになります。

眼球と筋肉

ただし眼球を動かす方が速いからと言って、首振りが必要ないというわけではありません。

むしろ、そうではなく使い分けが必要なのです。

例えば、オフザボールの時は首を振る、プレー中の首振りはわずかに止めて眼球を動かした方が良いのです。

いわゆる周辺視野が広がるというのは、医学的には間違いだと思います。
むしろ動体視力の発達によって、周辺視野の見えない部分を素早く補うという発想が正解なのでしょう。

ちなみに、日本代表の久保選手は試合中はよく首を振って周りを見ますが、そのほとんどはオフザボールの時です。
また、ドリブルやパスをする時の首振りはほんのわずかです。
久保選手は卓球が強いそうですが、たぶん動体視力が発達しているのでしょう。
だから首が振れない状況では、眼球を速く動かして視野を補っているのかも知れません。
そうした点でも、やはり使い分けは必要ですね。

子供が目をキョロキョロと動かすと「落ち着きがない!」とか「目付きが悪くなる!」と叱られます。
でも、サッカーの試合では動体視力を使いこなすのは、とても大切です(詳しい練習法は後述します)。
だから、そうした点は大目に見てください。

さて次は、これまでの視野の説明とは違って、ピッチを俯瞰することやヘリコプタービューなどについて解説します。

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