ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

サッカーで視野を広げる方法と練習法!何をどう見れば良い?

(3)中心視野・周辺視野と動体視力

①中心視野と周辺視野

ヒトが両目を動かさずに見える視野は、左右合わせて約200度の範囲です。

そのうちの中心視野は、中心から約5度の範囲(30度という説もある)になり、これ以外は全て周辺視野になります。

実際に視野に入っていても、意外と見えていないのはこうした理由があるからですね。

この場合、試合中にボールばかり見るのは、中心視野の5度の範囲しか見ていないわけなので、これでは次の展開の予測や状況判断は難しくなります。

そこで試合中は首を振って周りを見ることが必要ですが、そうした場合でも、実は中心視野を左右に動かしているだけに過ぎません。

つまりヒトの視野の特性によって、モノを見る時はどうしても中心視野の狭い範囲に制限されてしまうのです。

試しに、あなたの首を左側に向けて1~2m程度先にある物を見てください。

次に、首を右側に向けて1~2m程度先にある別の物を見てください。

そうすると先ほど左側で見た物は見えますか?

たぶん視野から消えてしまったのではないでしょうか?

つまり中心視野が左右に移動するだけで…とか、狭い範囲に制限される…というのは、こういう意味なのです。

そもそもヒトは何かを見ようとすると、無意識のうちに両目の焦点を合わせようとします。また動いているモノほど、一点に集中して見ようとします。

なぜなら、危険なモノかどうかを判断するためです。

しかも、こうしたメカニズムが無意識のうちに働くので、そうした点でも中心視野に抑制された生活が日常的になるのです。

だからサッカーの試合中でも、ヒトは中心視野の特性から逃れられないわけですね。

そうした意味で試合中に広い視野を持つためには、如何にして中心視野の拘束から逃れ、さらに周辺視野を拡大するのか?という点が大切です。

そこで重要なのが「動体視力」のレベルアップです。

②動体視力のレベルアップ

動体視力は主に眼球を動かすことによって視野を広くするのですが、だからと言って中心視野の範囲(中心から5度の範囲)が変わることはありません。

むしろ眼球を動かすことによって、中心視野の位置を左右にスピーディーに動かせる…という方が正しいのです。

そのため、動体視力を鍛えて眼球を速く動かすことにより、周辺視野の見えない部分を素早く補う…というわけですね。

また、眼球そのものは、首を左右に振って周りを見るよりも、速く動かすことが出来ます。

なぜなら、眼球を動かす時は6つの筋肉を使いますが、そもそも眼球自体は軽いからです。

これに対して、首を左右に振って周りを見ることを考えると、ヒトの頭の重さは体重の10%なので、体重が60㎏の人は6㎏になります。

そうすると、首を左右に振る…というのは、首の筋肉と頸椎を使って、頭の重さの6㎏分を重りとして動かし続けるようなものです。

でも眼球を動かす時は、重りのようなものはないですよね。

だから、眼球を動かした方が速いですし、それほど疲れないのです。

意外と知られていませんが、よく試合後半の疲労によって、周りを見れずにケアレスミスを起こすのは、首振りが一つの原因とされているようです(「肩こり」と同じようなもの)。

ただし眼球を動かす方が速いからと言って、首振りが必要ないというわけではありません。

むしろ、そうではなく使い分けが必要なのです。

例えば、オフザボールの時は首を振る、プレー中の首振りはわずかに止めて眼球を動かした方が良いのです。

ちなみに、日本代表の久保選手は試合中はよく首を振って周りを見ますが、そのほとんどはオフザボールの時です。またドリブルやパスをする時の首振りはほんのわずかです。

久保選手は卓球が強いそうですが、たぶん動体視力が発達しているのでしょう。だから首が振れない状況では、眼球を速く動かして視野を補っているのかも知れません。

そうした点でも、やはり使い分けは必要ですね。

子供が動体視力を鍛えて、目をキョロキョロと動かすと「落ち着きがない!」とか「目付きが悪くなる!」と叱ってしまうかも知れません。

でも、サッカーの試合では動体視力を使いこなすのは、とても大切です(詳しい練習法は後述します)。だから、そうした点は大目に見てください。

さて次は、これまでの視野の説明とは違って、ピッチを俯瞰することやヘリコプタービューなどについて解説します。

(4)俯瞰するとは

元日本代表の中田英寿や遠藤保仁は、視野が広い選手として有名です。またピッチを俯瞰したり、ヘリコプタービューのような視野を持っているとも言われます。

ところがサッカーのピッチは、縦と横の平面上の世界です。

もちろんこの世は三次元なので高さもありますが、それはせいぜい選手たちの身長の2mまでの範囲です(パントキックを蹴っても10~15m程度の高さ)。

これに対してピッチの縦と横は、国際ルールで100~110m×64~75mと決められています。

つまり高さに比べて縦横の比率がはるかに大きいので、試合中はどうしても平面をイメージするわけですね。

そうした条件のもとで、果たしてピッチを俯瞰することや、ヘリコプタービューのような視野を持つことは可能なのでしょうか?

ふつうに考えたら、スタンドからピッチを見たりテレビ中継を見たりしない限り、こうした視野を確保できないはずです。

したがってピッチを俯瞰することは物理的には無理でしょうが、唯一考えられるとしたら俯瞰の「イメージ」を持つことではないか?と思います。

そもそも中田英寿や遠藤保仁はボランチやトップ下の選手で、先ほど解説した久保選手はトップ下やサイドハーフ(ポジションチェンジで中に入ることが多い)の選手です。

したがって試合中はいつもピッチの中央付近に位置することが多いので、360度の視野が必要になるわけですね。そうするとピッチを見渡すような広い視野を確保するため、首を振って周りをよく見ているはずです。

またプロの試合は戦術としての攻守の約束事があるため、味方がどのように動くのかも心得ています。だから、そうした考えが頭の中に入っているので、作戦ボードを真上から見下ろすようなイメージを持っているのでしょう。

こうしたイメージは、味方との連携や相手の動きを先読みすると言う点で、将棋やチェスに似ています。もちろん、将棋やチェスも平面上の世界ですよね。

そうするとピッチを俯瞰したりヘリコプタービューのような視野を持つことは、選手自身のイメージによって作られていくものだと思います。

こうした俯瞰のイメージは、豊富な試合経験によって身に付けられるものです。

でも、ジュニアやジュニアユース年代においても、ほんのわずかな練習によって俯瞰のイメージ作りは可能です(詳細は後述します)。

スポンサーリンク

それでは、次にサッカーの試合中の視野として、何をどう見れば良いのか?という点を解説します。

この続きは下の四角のボタン「3」を押してください。