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ジンガの本当の意味!ブラジルサッカーの才能とは?

投稿日:2019年4月3日 更新日:

ネイマールのドリブルのフェイント

ジンガを持っている!とは、ブラジルではサッカーの才能を意味する言葉です。
私は30年前にブラジルサンパウロのサッカークラブでアシスタントコーチをしていました。
当時の先輩コーチたちは、上手くて才能ある選手たちを「ジンガ!」とよく褒めていたのを思い出します。

でも日本でジンガと言うと、なぜか土屋健二さんのジンガステップなどが有名で、これが本物だと勘違いしている方はかなり多いですね

そこで今回はジンガの本当の意味、ブラジルサッカーとの関係について詳しく解説します。

1.ジンガとブラジルサッカーの関係

(1)ジンガとカポエイラ

ジンガ(ginga)とはブラジルの公用語であるポルトガル語の「千鳥足」、「よちよち歩き」が語源です。
またブラジルの国技「カポエイラ」の基本ステップがジンガと呼ばれています。

でも、どうしてジンガの動きが千鳥足やよちよち歩きと言われるのでしょう?
たぶん多くの方がそのように感じているはずですし、日本人にはなかなか分かり難いと思います。
その答えはカポエイラの試合に秘められています。

カポエイラは、ブラジルがポルトガルの植民地時代、アフリカから連れてこられた黒人奴隷が考案した格闘技です。
ところが、黒人の格闘技であり反体制的ということで、国内では一時期禁止されていました。
そうした中、黒人たちはダンスのような動きを交えることで国の摘発を逃れて技を発展させたのです。

カポエイラはジンガの動きを駆使しながら、二人でお互いを蹴り合うようなアクロパチックで素早い動きをします。
そうした足技が多い理由は、黒人奴隷が手かせをはめられていて手が自由に使えなかったからだとされています。

ただし、蹴り合うと言ってもキックボクシングのように相手を傷付けるようなことはありません。
どちらかと言えば空手の寸止めに近く、白黒ハッキリさせるような格闘技ではないのです。
むしろ自分と相手がお互いの技で共演し、サンバのようなアップテンポのリズムに乗ってダンスのように楽しむスポーツです。
また大勢の人々が輪になり、その中から二人ずつ入れ替わり立ち代わり参加して技術を披露します。

その際、カポエイラはアクロパチックの動きの中で倒れそうで倒れない…、まるで酔っぱらってふらふらしたかのような動作になります。
ブラジル人にとっては、こうした全身を脱力させたジンガの動きが、千鳥足、よちよち歩きのように見えるのでしょう。

一方、ジンガは映画「酔拳」に主演したジャッキー・チェンの演武に似ています。
酔拳は「酔えば酔うほど強くなる」ということで、まさに千鳥足ですね。
ジンガの動きが、千鳥足、よちよち歩きと呼ばれる所以がお分かり頂けたかと思います。

(2)ジンガとブラジルサッカー

① ジンガとは才能のこと

ブラジルにはサッカーの才能を表す表現として、「ジンガを持っている」という言葉があります。

これはどういう意味だと思いますか?

ジンガそのものはカポエイラの基本ステップでしたよね。
またジンガの特徴は体を左右に動かす動作です。

実は、ブラジルではジンガ特有の左右に体を揺する動作が、ドリブルのフェイントに似ていると考えられています。

また単なる小手先のフェイントではなく、全身を使って相手を騙すようなボディフェイクのことを指します。

そうしたフェイント動作の上手いサッカー選手が「ジンガを持っている!」と言われるのです。

ネイマールのフェイント

つまり、ジンガはカポエイラでは基本ステップを指しますが、サッカーにおいては才能のことを意味するわけです。

そうすると日本でおなじみの土屋健二さんのジンガステップなどは、ブラジル本来のジンガとは何の関係もありません。
なぜならこのステップはサッカーの動作を示すものであって、ジンガ本来の才能を意味するものではないからです。
むしろ土屋さんが勝手に名付けた造語でしかありません。
そうした意味では本当のジンガではないのです。

② ジンガとネイマール

ブラジルでは、ネイマールの才能を評して「ジンガを持っている」と称えられます。
また、過去に戻ればロナウジーニョやロビーニョなどもそのように呼ばれました。

彼ら三人に共通するのは、全身を左右に揺するようなボディフェイントが得意という点です。

実際にもネイマールはそうしたフェイントを得意にしています。

全身を左右に揺するようなボディフェイントをするネイマール

一方、日本人がブラジルのサッカー選手を評して、華麗なドリブルテクニック!と称賛することがあります。

そうした場合、日本では彼らのフェイントを「足技」と呼ぶことが多く、フェイントは足だけを使ってやるもの…という誤った考えが根強いようです。

また日本ではプロでもアマチュアでもパスサッカーが隆盛です。
そうすると多くの日本人はドリブルをしなくなるため、ブラジル人のようなボディフェイントの動きは見られなくなります。
実際にやったとしても、足だけを使うのでとても下手です。
これはJリーガーであってもアマチュアでも同じ傾向があります。

ところが、ブラジルではジンガのような全身を使ったボディフェイクの動きがあって、初めてドリブルのフェイントとみなされます。

そうした点で、日本にはジンガのようなサッカー文化が根付いていないと言えるのです。

③ 日本にはジンガの文化はない

ブラジルではサッカーの才能を持つ選手は「ジンガがある」と言われますが、日本ではそうした比喩はありません。

ところが、日本の野球では似たような表現があります。
例えば、コントロールの良いピッチャーのことを「針の穴を通すような…」と言います。
また、ボールには手を出さないバッターのことを「選球眼がある…」とも言います。

野球のピッチャー

日本の野球にジンガのような比喩がある理由は、昔から国民の文化として深く根付いていたからです。
そもそも、野球は戦前からの人気スポーツで長い歴史があるのです。

それに比べてサッカーの人気が定着したのは、Jリーグが出来る30年ほど前からです。
つまり、歴史的には野球の半分にも満たないのです。

一方、日本とブラジルの文化の特徴にも大きな違いがあります。

それは日本が「静」の文化で、ブラジルが「動」の文化という違いです。

例えば格闘技を比較すると、その違いが分かります。

日本の相撲、柔道、剣道などは組み合って止まっている時間が長く、動き出すと一瞬で勝負が決まるという特徴があるので静の文化の日本によく合います。

相撲の取り組み

これに対してブラジルのカポエイラはお互いにずっと動き続けたままで、止まるようなことはありません。
正に動の文化のブラジルに合うものです。

先ほどの野球も静の文化に合うので、日本では長く定着しています。
例えばピッチャーが一球投げるごとにプレーが始まり…、そしていったん終わって…というように動いて止まって…を繰り返します。
しかも攻撃と守備がハッキリ分かれているという特徴もあります。

ところがサッカーは前後半で45分間、ほぼ休みなく動き続けます。
それに攻守が頻繁に切り替わるので「動」の文化の国の産物です。
そうすると「静」の文化を持つ日本にとって、サッカーはそもそも馴染みにくいスポーツなのです。

いずれにしても、日本のサッカーにおいてブラジルのジンガのような文化が根付くためには、かなり長い歴史が必要です。

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2.ジンガとサンバ

(1)ジンガとサンバステップ

ブラジルでおなじみのサンバのステップは、ジンガの動きが速くなったものとされています。
次の動画の1:09からのシーンがサンバの基本ステップです。

ジンガとサンバは似ても似つかないと思われますが、そうではありません。

ジンガは左手と右足を前に出すと、右手と左足を後ろに下げます。
また、右手と左足を前に出すと、左手と右足を後ろに下げます。

サンバステップもジンガと同じで、左手と右足を前に出すと、右手と左足を後ろに下げます。

ジンガとサンバの比較画像

こうしたジンガとサンバの動きはクロスステップと言って、ダンスの基本動作になります。

このクロスステップをとても速くすると、次のようなサンバステップになるわけです。

そうした意味では、ジンガのステップがあったからこそサンバが生まれたと言えるのでしょう。

別の言い方をすれば、ジンガもサンバもブラジル人の心の中に刻み込まれているわけです。

(2)サンバのリズムとドリブル

ブラジルのサッカー選手のドリブルには、サンバのリズムが刻み込まれている…とよく言われます。
特に「ジンガを持っている!」と言われる、ネイマール、ロナウジーニョ、ロビーニョなどのドリブルは称賛されています。

こうした場合、ほとんどの方は「アップテンポで軽快なリズムのこと?」とか「ドリブルの早さがサンバに似ている?」などと考えると思います。

でも、そうした抽象的な意味ではありません。

サンバには独特な「リズムの訛り」があって、これがドリブルに活かされているのです。

次の動画の4:04からのシーンを見ると、そのヒント(リズムの訛り)が分かります。

動画ではやや分かり難いので、リズムの訛りを簡単に解説しましょう。

サンバの基本リズムは、3連打+1打で構成されています。
動画の実演者さんは、右手のスティックで3連打、左手で1打を叩いています。
「タ、タ、タ」「タン」の変則的な4拍子ですね。

こうした4拍子は、一般的な西洋音楽であれば全く同じ音調の4連打になります。
ドラムで叩くと右手、左手、右手、左手という「タ、タ、タ、タ」なので、リズムの訛りは起きません。

一方、サンバのリズムの「タ、タ、タ」の三連打を速くすると、二打目の音が出ているはずなのに実際には消えてしまう(または聞き取れない)という不思議な現象が起きます。

つまり「タ、タ、タ」ではなく、「タ、…、タ」と言った感じですね。

そうすると「タ、タ、タ」「タン」の4拍子で演奏しているはずなのに、なぜか「タ、…、タ」「タン」という3拍子に聞こえてしまうのです。

これがサンバのリズムの訛りです。

実はこうした訛りは、ブラジルのサンバやアフリカの民族音楽にのみ見られる独特な音調です。
現代的な西洋音楽や日本の伝統音楽にはありませんし、そもそもこのリズム感は勤勉実直な日本人の日常生活には存在しません。

それではこうしたリズムの訛りが、果たしてどのようにドリブルに活かされているのか?ということですが、それは次の動画で説明しています。
3:40秒程度のそれほど長くない動画なので、ぜひ最後までご覧ください。

動画の実演者さんは、サンバのリズムの訛りをマシューズフェイントに例えています。
マシューズフェイントとは私の息子「とも」が実演する、次の動画のようなフェイントです。

そこでマシューズフェイントのリズム感を解析してみましょう。

マシューズフェイントのリズム感の解析画像(連続写真)

この動きを詳しく見ると、①~④まで左足→右足→左足→右足の順に着地しています。

ところが⑤では左足を着地していません。
なぜなら空中動作で体が浮いているからです。
そして⑥では右足で着地しています。

もしもディフェンスと向き合っていたとしたら、左足「タ」→右足「タ」→左足「タ」→右足「タ」の規則正しいリズムなので、次は左足「タ」で着地するだろう…と相手は考えるはずです。
ところが左足は着地せずに、右足で着地したということで、左足は「…」で、右足は「タ」のリズムになります。

ここで先ほどのサンバのリズムの訛りを思い出してください。
「タ、タ、タ」「タン」の4拍子で演奏しているはずなのに、なぜか「タ、…、タ」「タン」という3拍子に聞こえてしまう…ということです。

これを「とも」のマシューズフェイントに例えると、通常なら「タ、タ、タ、タ、タ、タ」の6拍子になるはずですが、「タ、タ、タ、タ、…、タ」という5拍子になります。

つまり相手にとってはタイミングが狂ってしまうということです。

そして、これがフェイントにおけるサンバのリズムの訛りなのです。

一方、「…」の部分はフェイントの空中動作です。
そうするとこうした空中動作のないフェイントには、サンバのリズムの訛りは起きません。
だから相手のタイミングは狂わないということであり、フェイントとしては通用しないのです。

例えば次の動画ようなフェイントには空中動作がほとんどないので、相手にとっては対応されやすいということになります。
その理由はジンガのように全身を大きく揺するようなフェイント動作がなく、足だけを使うことに原因があるのです。
そうするとサンバのリズムの訛りも起きないわけです。

このように、ブラジルのサンバはドリブルのリズムに活かされています。
特に大切なことは、ジンガのように全身を大きく揺するようなフェイント動作をすることです。
これによって体が浮いて「サンバのリズムの訛り」が起きるため、相手のタイミングを狂わせることが出来るのです。

要するに、フェイント動作は足だけを使っていては全く通用しないということをご理解ください。

参考記事:マシューズフェイントのやり方!動画と画像で詳しく解説

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3.ジンガを身に付けるためには?

ネイマール、ロナウジーニョ、ロビーニョのような「ジンガを持っている」選手になるためには、二つのトレーニングが効果的です。

(1)一本歯下駄トレーニングで身体能力を高める

ドリブルのフェイントはジンガのように全身を大きく揺することで、フェイク動作が使えるようになります。
こうした動きを見に付けるためには、全身の筋肉と骨格をくまなく動かせるようになることが大切です。

そこで、おススメなのが一本歯下駄トレーニングです。

一本歯下駄トレーニングをする中学生

一本歯下駄トレーニングは、次の5つの点で身体能力がアップします。
・バランス感覚が身に付く。
・全身のバネ作用が覚醒する。
・高重心になる。
・足のアーチと足指が鍛えられる。
・二軸動作が身に付く。

こうした身体能力が身に付けば、ジンガのように全身を使ったフェイント動作が出来るようになります。

実際に自主練で取り入れている子供さんは上半身と下半身が連動したり、上半身の柔軟性や肩甲骨の脱力、背骨や肋骨のバネ作用が身に付いているはずです。
また、一本歯下駄トレーニングはリラックスして行うので、カポエイラのジンガのような脱力した動作も習得できますし、筋肉の伸張反射も起こせます。
そうすると、ネイマール、ロナウジーニョ、ロビーニョのように、しなやかな動作が身に付いたり、スピードやパワーまでも発揮できるようになるのです。

私の息子「とも」のドリブルも全身をリラックスさせるので「くにゃくにゃ」した動きをします。
この「くにゃくにゃ」した動きは、先ほどの「しなやかな動作」を指します。
そうすると口の悪い方はこの動きを「オネエ」と言ったりしますが、実はネイマール、ロナウジーニョ、ロビーニョの動きをスローモーションで解析すると似たような動きをしています。
また、一本歯下駄トレーニングをやっていると人とやらない人を比べると、動きの違いがハッキリします。

そうした意味ではやって損はないと思います。
ぜひチャレンジしてみてください。

参考記事
一本歯下駄の効果!身体能力アップに役立つ5つの理由!
一本歯下駄トレーニング!サッカー向け練習メニュー22選

(2)ドリブルのリズム感を養成する

次の動画の2:36からのシーンにあるように、ドリブル練習の際、サンバに使うような打楽器(音が出れば何でも良い)を叩いてリズム感を変化させると効果的です。

そうすることで、子供たちは直観的にドリブルのリズムを変化させることが出来るようになります。

意外と簡単な練習法なので、小中学生の育成年代のサッカー選手にはぜひ取り入れてほしいと思います。

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4.まとめ

これまでジンガの本当の意味、カポエイラやサンバとの関係について解説しました。

ジンガはブラジルにおいてはサッカーの才能を評する大切な言葉であり、歴史的にも文化的にもブラジル国民に根付いています。

ところが、日本では土屋健二さんのジンガステップなどが本物だ…という間違った解釈が横行しています。

こうしたことがないよう、日本の子供たちにはぜひ本物のジンガを理解して、本当の意味でサッカーが上手くなっていただきたいと願っています。

【画像引用:Youtube.com

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