ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

ジンガの本当の意味!ブラジルサッカーの才能とは?

ジンガを持っている!とは、ブラジルではサッカーの才能を意味する言葉です。
私は30年前にブラジルサンパウロのサッカークラブでアシスタントコーチをしていました。
当時の先輩コーチたちは、上手くて才能ある選手たちを「ジンガ!」とよく褒めていたのを思い出します。

でも日本でジンガと言うと、なぜか土屋健二さんのジンガステップなどが有名で、これが本物だと勘違いしている方はかなり多いですね

そこで今回はジンガの本当の意味、ブラジルサッカーとの関係について詳しく解説します。

※土屋健二さんのジンガステップの真相を詳しくお知りになりたい方は、次の記事をお読みください。
ジンガステップは本当にサッカーが上手くなるのか?

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1.ジンガとブラジルサッカーの関係

(1)ジンガとカポエイラ

ジンガ(ginga)とはブラジルの公用語であるポルトガル語の「千鳥足」、「よちよち歩き」が語源です。
またブラジルの国技「カポエイラ」の基本ステップがジンガと呼ばれています。

でも、どうしてジンガの動きが千鳥足やよちよち歩きと言われるのでしょう?
たぶん多くの方がそのように感じているはずですし、日本人にはなかなか分かり難いと思います。
その答えはカポエイラの試合に秘められています。

カポエイラは、ブラジルがポルトガルの植民地時代、アフリカから連れてこられた黒人奴隷が考案した格闘技です。
ところが、黒人の格闘技であり反体制的ということで、国内では一時期禁止されていました。
そうした中、黒人たちはダンスのような動きを交えることで国の摘発を逃れて技を発展させたのです。

カポエイラはジンガの動きを駆使しながら、二人でお互いを蹴り合うようなアクロパチックで素早い動きをします。
そうした足技が多い理由は、黒人奴隷が手かせをはめられていて手が自由に使えなかったからだとされています。

ただし、蹴り合うと言ってもキックボクシングのように相手を傷付けるようなことはありません。
どちらかと言えば空手の寸止めに近く、白黒ハッキリさせるような格闘技ではないのです。
むしろ自分と相手がお互いの技で共演し、サンバのようなアップテンポのリズムに乗ってダンスのように楽しむスポーツです。
また大勢の人々が輪になり、その中から二人ずつ入れ替わり立ち代わり参加して技術を披露します。

その際、カポエイラはアクロパチックの動きの中で倒れそうで倒れない…、まるで酔っぱらってふらふらしたかのような動作になります。
ブラジル人にとっては、こうした全身を脱力させたジンガの動きが、千鳥足、よちよち歩きのように見えるのでしょう。

一方、ジンガは映画「酔拳」に主演したジャッキー・チェンの演武に似ています。

酔拳は「酔えば酔うほど強くなる」ということで、まさに千鳥足ですね。
ジンガの動きが、千鳥足、よちよち歩きと呼ばれる所以がお分かり頂けたかと思います。

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(2)ジンガとブラジルサッカー

① ジンガとは才能のこと

ブラジルにはサッカーの才能を表す表現として、「ジンガを持っている」という言葉があります。

これはどういう意味だと思いますか?

ジンガそのものはカポエイラの基本ステップでしたよね。
またジンガの特徴は体を左右に動かす動作です。

実は、ブラジルではジンガ特有の左右に体を揺する動作が、ドリブルのフェイントに似ていると考えられています。

また単なる小手先のフェイントではなく、全身を使って相手を騙すようなボディフェイクのことを指します。

そうしたフェイント動作の上手いサッカー選手が「ジンガを持っている!」と言われるのです。

ネイマールのフェイント

つまり、ジンガはカポエイラでは基本ステップを指しますが、サッカーにおいては才能のことを意味するわけです。

そうすると日本でおなじみの土屋健二さんのジンガステップなどは、ブラジル本来のジンガとは何の関係もありません。
なぜならこのステップはサッカーの動作を示すものであって、ジンガ本来の才能を意味するものではないからです。
むしろ土屋さんが勝手に名付けた造語でしかありません。
そうした意味では本当のジンガではないのです。

② ジンガとネイマール

ブラジルでは、ネイマールの才能を評して「ジンガを持っている」と称えられます。
また、過去に戻ればロナウジーニョやロビーニョなどもそのように呼ばれました。

彼ら三人に共通するのは、全身を左右に揺するようなボディフェイントが得意という点です。

実際にもネイマールはそうしたフェイントを得意にしています。

全身を左右に揺するようなボディフェイントをするネイマール

一方、日本人がブラジルのサッカー選手を評して、華麗なドリブルテクニック!と称賛することがあります。

そうした場合、日本では彼らのフェイントを「足技」と呼ぶことが多く、フェイントは足だけを使ってやるもの…という誤った考えが根強いようです。

また日本ではプロでもアマチュアでもパスサッカーが隆盛です。
そうすると多くの日本人はドリブルをしなくなるため、ブラジル人のようなボディフェイントの動きは見られなくなります。
実際にやったとしても、足だけを使うのでとても下手です。
これはJリーガーであってもアマチュアでも同じ傾向があります。

ところが、ブラジルではジンガのような全身を使ったボディフェイクの動きがあって、初めてドリブルのフェイントとみなされます。

そうした点で、日本にはジンガのようなサッカー文化が根付いていないと言えるのです。

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③ 日本にはジンガの文化はない

ブラジルではサッカーの才能を持つ選手は「ジンガがある」と言われますが、日本ではそうした比喩はありません。

ところが、日本の野球では似たような表現があります。
例えば、コントロールの良いピッチャーのことを「針の穴を通すような…」と言います。
また、ボールには手を出さないバッターのことを「選球眼がある…」とも言います。

野球のピッチャー

日本の野球にジンガのような比喩がある理由は、昔から国民の文化として深く根付いていたからです。
そもそも、野球は戦前からの人気スポーツで長い歴史があるのです。

それに比べてサッカーの人気が定着したのは、Jリーグが出来る30年ほど前からです。
つまり、歴史的には野球の半分にも満たないのです。

一方、日本とブラジルの文化の特徴にも大きな違いがあります。

それは日本が「静」の文化で、ブラジルが「動」の文化という違いです。

例えば格闘技を比較すると、その違いが分かります。

日本の相撲、柔道、剣道などは組み合って止まっている時間が長く、動き出すと一瞬で勝負が決まるという特徴があるので静の文化の日本によく合います。

相撲の取り組み

これに対してブラジルのカポエイラはお互いにずっと動き続けたままで、止まるようなことはありません。
正に動の文化のブラジルに合うものです。

先ほどの野球も静の文化に合うので、日本では長く定着しています。
例えばピッチャーが一球投げるごとにプレーが始まり…、そしていったん終わって…というように動いて止まって…を繰り返します。
しかも攻撃と守備がハッキリ分かれているという特徴もあります。

ところがサッカーは前後半で45分間、ほぼ休みなく動き続けます。
それに攻守が頻繁に切り替わるので「動」の文化の国の産物です。
そうすると「静」の文化を持つ日本にとって、サッカーはそもそも馴染みにくいスポーツなのです。

いずれにしても、日本のサッカーにおいてブラジルのジンガのような文化が根付くためには、かなり長い歴史が必要です。

ところで、ブラジル人のドリブルにはサンバのリズムがあるとよく言われます。

そこで次に、ジンガとサンバの関係を詳しく解説します。
大切な内容なので、ぜひお読みください!

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