ブラジルで「ジンガを持っている!」という言葉は、サッカーの才能を意味します。
でも日本では、なぜか土屋健二さんのジンガステップが本物だと勘違いしている方はかなり多いようですね。
そこで今回はジンガの本当の意味、ブラジルサッカーとの関係について詳しく解説します。
※この記事は4つのページに分かれているので、順番に読んでも良いですし、直接それぞれのページを読んでいただいても結構です。
1ページ目(このページに書いてあります)
【ジンガとブラジルサッカーの関係】
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【ジンガとサンバ】
(1)ジンガとサンバステップ
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(2)サンバのリズムとドリブル
4ページ目(←クリック!)
【ジンガを身に付けるためには?】
【まとめ】
※土屋健二さんのジンガステップの真相を詳しくお知りになりたい方は、次の記事をお読みください。
ジンガステップは本当にサッカーが上手くなるのか?
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【ジンガとブラジルサッカー】
(1)ジンガとカポエイラ
ジンガ(ginga)とは、ブラジルの公用語であるポルトガル語の「千鳥足」「よちよち歩き」などが語源になります。
また、国技の「カポエイラ」の基本ステップがジンガと呼ばれているのです(詳しくは動画をご覧ください)。
でも、どうしてジンガの動きが千鳥足やよちよち歩きと言われるのでしょう?
たぶん多くの方がそのように感じるはずですし、日本人にはなかなか分かり難いですよね。
その答えは、カポエイラの試合に秘められています。
カポエイラは、ブラジルがポルトガルの植民地時代に、アフリカから連れて来られた黒人奴隷によって考案した格闘技です。
ところが、黒人の格闘技であり反体制的ということで、国内では一時期禁止されていました。
そうした中、黒人たちはダンスのような動きを交えることで国の摘発を逃れて技を発展させたのです。
カポエイラの特徴は、ジンガの動きを駆使しながら、二人でお互いを蹴り合うようなアクロバチックで素早い動きをしますが、なぜか足技が多いですよね。
その理由は、黒人奴隷が手かせをはめられて、手が自由に使えなかったからだとされています。
ただし、蹴り合うと言ってもキックボクシングのように相手を傷付けるようなことはありません。
どちらかと言えば空手の寸止めに近く、白黒ハッキリさせるような格闘技ではないのです。
むしろ自分と相手がお互いの技で共演し、サンバのようなアップテンポのリズムに乗ってダンスのように楽しむスポーツに進化しています。
また大勢の人たちが輪になり、その中から二人ずつ入れ替わり立ち代わり参加して技術を披露するのも特徴ですね。
その際、カポエイラはアクロバチックな動きの中で、倒れそうで倒れない…、酔っぱらってふらふらしたかのような動作になります。
たぶんブラジル人にとっては、こうした全身を脱力させたジンガの動きが、千鳥足、よちよち歩きのように見えるのでしょう。
(2)ジンガとブラジルサッカー
①ジンガとは才能のこと
ブラジルにはサッカーの才能を表す表現として、「ジンガを持っている」という言葉があります。
これはどういう意味だと思いますか?
先ほどの、カポエイラの基本ステップことではありませんよ。
実は、ブラジルではジンガ特有の左右に体を揺する動作が、ドリブルのフェイントに似ていると考えられているのです。
また単に足だけを使った小手先のフェイントではなく、全身を使って相手を騙すようなボディフェイクを指しています。
そうしたフェイント動作の上手いサッカー選手が、「ジンガを持っている!」と言われるわけですね。
つまり、ジンガはカポエイラでは基本ステップを指しますが、サッカーにおいては才能のことを意味するのです。
そうすると日本でおなじみの土屋健二さんのジンガステップは、ブラジル本来のジンガとは何の関係もありません。
なぜならこのステップはサッカーの動作を示すものであって、ジンガ本来の才能を意味するものではないからです。
むしろ、土屋さんが自分で名付けた造語でしかなく、本物のジンガではないのです。
さて次は、ジンガを持っているということで有名なネイマールとの関係、また日本とジンガの文化について解説します。
②ジンガとネイマール
ブラジルでは、ネイマールの才能を評して「ジンガを持っている」と称えられますが、過去に戻ればロナウジーニョやロビーニョなどもそのように呼ばれていました。
彼ら三人に共通するのは、全身を左右に揺するボディフェイントが得意という点ですね。
実際にも、ネイマールはそうしたフェイントをたくさん魅せてくれます。
一方、日本人がブラジルのサッカー選手を評して、華麗なドリブルテクニック!と称賛することがよくありますよね。
その場合、日本では彼らのフェイントを「足技」と呼ぶことが多く、フェイントは足だけを使ってやるもの…という誤った考えが多いようです。
また、日本ではパスサッカーが主流なので、ブラジル人のようなボディフェイントを使ったドリブルが少なくなっています。
実際にやったとしても、足だけを使うのでお世辞にも上手いとは言えませんし、これはJリーガーでもアマチュアでも同じですね。
これに対して、ブラジルではジンガのような全身を使ったボディフェイクの動きがあって、初めてドリブルのフェイントと評価されます。
そうした点で、日本にはジンガ(ボディフェイク)のようなサッカーの本当の文化が根付いていないと思えるのです。
そこで、次に日本とジンガの文化について考えてみましょう。
③日本にはジンガの文化はない
ブラジルではサッカーの才能を持つ選手は「ジンガがある」と言われますが、日本ではそうした例えはありません。
ところが、日本の野球では似たような表現があります。
例えば、コントロールの良いピッチャーのことを「針の穴を通すような…」と言い、ムダなボールに手を出さないバッターのことを「選球眼がある…」とも言いますよね。
このように日本の野球にジンガのような例えがある理由は、昔からの人気スポーツで長い歴史があったため、国民の文化として深く根付いていたからです。
それに比べてサッカーの人気が定着したのは、Jリーグが出来る30年ほど前からなので、歴史的には野球の半分もありません。
だから、野球選手を評価する独特の例え(ブラジルのジンガのような)が出来たわけですね。
その一方で、日本とブラジルは、文化の特徴にも大きな違いがあります。
それは日本が「静」の文化で、ブラジルが「動」の文化という違いです。
例えば格闘技を比較すると、その違いがよく分かります。
日本の相撲、柔道、剣道などは組み合って止まっている時間が長く、動き出すと一瞬で勝負が決まるので、静の文化の日本によく合います。
これに対してブラジルのカポエイラは、お互いにずっと動き続けたままで止まるようなことがないため、動の文化のブラジルに合うのです。
先ほどの野球も静の文化に合うので、日本では必然的に定着したのでしょう。
例えばピッチャーが一球投げるごとにプレーが始まり…、そしていったん終わって…というように動いて止まって…を繰り返します。
しかも、攻撃と守備が、将棋や囲碁のようにハッキリ分かれているという特徴もありますよね。
ところがサッカーは、前後半で45分間ほぼ休みなく動き続けますし、攻守が頻繁に切り替わるので「動」の文化の国の産物と言えます。
そうすると「静」の文化を持つ日本にとって、サッカーはそもそも馴染みにくいスポーツかも知れません。
いずれにしても、日本のサッカーにおいてブラジルのジンガのような文化が根付くためには、野球と同じようにもっと長い歴史の積み重ねが必要だと思います。
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ところで、ブラジル人のドリブルにはサンバのリズムがあるとよく言われます。
そこで次に、ジンガとサンバの関係を詳しく解説します。
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