ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

ゴールデンエイジは間違っていた!脳科学で明かす真実とは?

ゴールデンエイジでは9~12歳までが運動学習に最適とされ、この時期を逃すと発達は困難とされています。

ところが脳科学や医学の分野では、実は間違っていたことが30年前に分かっています。

そこで今回はゴールデンエイジの間違いを脳科学で解明します。

特に、この記事の後半では衝撃の事実をお伝えするので注意してお読みください。

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1.ゴールデンエイジの理論

(1)ゴールデンエイジとは

ゴールデンエイジは、日本サッカー協会の「JFAキッズ(U-8/U-10)ハンドブック」の9ページに載っています。

たぶん、少年団やクラブチームに所属する子供の親御さんなら、一度は読まれたことがあるでしょう。

それによれば、

U-10~U-12年代は心身の発達が調和し、動作習得に最も有利な時期とされています。集中力が高まり運動学習能力が向上し、大人でも難しい難易度の高い動作も即座に覚えることができます。
「ゴールデンエイジ」と呼ばれ、世界中どこでも非常に重要視され、サッカーに必要なあらゆるスキル(状況に応じて技術を発揮すること)の獲得に最適な時期として位置づけられています。(以下省略)。

(引用元「JFAキッズ(U-8/U-10)ハンドブック」)

要するに、子供は9~12歳までの時期が運動学習に最適なので、この年代までにサッカーのスキルを覚えましょう…ということですね。

特に9~12歳までを「運動学習最適期」と呼び、ゴールデンエイジの理論の核心部分として、とても重要とされています。

その一方で、8歳以下の子供はプレゴールデンエイジと呼ばれ、ゴールデンエイジに向けて運動の基本動作(投げる、打つ、走る、跳ぶ、蹴る)を反復し、サッカーだけではなく全身をたくさん使うような運動も取り入れるよう推奨しています。

たしかに、8歳以下の子供が運動の基本動作を習得するために、全身をたくさん使うような運動も取り入れる…というのは正しいでしょう。

なぜなら、サッカーはスポーツとしての専門性が高いため、8歳以下の子供がいきなり始めると、上半身が貧弱なままで成長するなど、健全な発育を阻害する可能性があるからです。

つまり、スポーツは専門性が高いので、その前に運動の基本を身に付けましょうね…ということです。

たぶん、ふつうの方なら、これは大切だと思えるはずです(ただしそのように考えていない不勉強な親御さんも多いようです)。

ところが、9~12歳までの運動学習最適期の考え方がとても疑問に感じます。

それは子供が12歳を過ぎると、本当に運動学習には適さないのか?何をやってもダメなのか?という点です。

こうした素朴な疑問は、たぶん多くの方が抱えているはずです。

そうした問題に関しては、後ほど詳しく解説します。

(2)ゴールデンエイジ理論の普及

ゴールデンエイジの理論が世間に普及したきっかけは、Jリーグが発足する30年近く前にさかのぼります。

当時の日本サッカー協会は、Jリーグに参加する各クラブにジュニア~ユースまでの育成組織を持つよう指導しましたが、その際の育成組織の運営のガイドラインとして提唱されたのが、ゴールデンエイジの理論です。

その後、この理論はサッカー以外のいろいろなスポーツにも普及して、日本中に広まりました。

近年ではスポーツの低年齢化の傾向が見られますが、いわゆるエリート教育や選手強化などで、この理論が応用されています。

さらに、この理論はスポーツだけではなくピアノや書道などの習い事、学習塾など、あらゆる分野にも活かされているのです。

その結果、オリンピックなどの世界大会でメダリストが増えるなど、一定の成果が表れました。

そうすると、世間のお父さんやお母さんたちは「始めるなら早い方が…」「ゴールデンエイジに間に合わない」ということで、さらにスポーツの低年齢化に拍車をかけています。

この場合、ゴールデンエイジの理論は、日本サッカー協会という権威ある組織が提唱したので、ほとんどの方は正しいと思うはずです。

ところが、この理論は科学的に検証されたわけではありません。

また、ゴールデンエイジ理論の中核である9~12歳までの運動学習最適期の根拠は、「スキャモンの成長曲線」、「即座の習得」、「脳の可塑性(かそせい)」という3つの科学理論から導き出されていますが、日本中の数多くの子供たちの運動データを収集して分析するなどの深い研究成果は一切発表されていないのです。

つまりゴールデンエイジは正しい…という、何の証明もされていないわけですね。

そもそも、何の検証データも存在しない理論は単なる机上の空論でしかありません。

もっと言えば、ゴールデンエイジの理論は文献を引用した程度で作られた安易な意見とも言えるのです。

かなり過激な事を言ってしまいましたが、今回の記事は全国のサッカー少年を育てる親御さんにハッキリと警鐘します。

そこで次は、ゴールデンエイジの根拠とされる「スキャモンの成長曲線」、「即座の習得」、「脳の可塑性(かそせい)」という3つの科学理論の妥当性について順に解説します。

2.ゴールデンエイジの根拠と妥当性

(1)スキャモンの成長曲線

① スキャモンの成長曲線とは

ゴールデンエイジ理論の裏付けの一つとして用いられたスキャモンの成長曲線は、アメリカの医学者で解剖学が専門のスキャモン(1883-1952)が発表したものです。

また、スキャモンの成長曲線は、1930年にミネソタ大学出版会から出版された「The measurement of man」という書籍に掲載されています。

この成長曲線は、数多くの亡くなった子供たちを解剖し、個々の臓器の容量や重さを量り、グラフとしてまとめたものです。

その際、体のいろいろな組織を、一般型(いろいろな臓器)、神経系型、リンパ系型、生殖器系型の4つに分類して、年齢に応じて、どのように成長するのか?をまとめています。

また出生時を0%、成長のピークを20歳の100%と考え、年齢ごとの成長度合いをパーセントで表記しています。

このように、スキャモン成長曲線は、体の各部分の成長は年齢によって違いがあるという、あくまでも医学の基礎理論をまとめただけであって、ゴールデンエイジというスポーツ科学に応用されるのを想定して研究したわけではありません。

実は、スキャモンの研究成果は主に医学の分野で活かされています。

例えば、子供の胴体が成長すれば、心臓などの臓器も大きくなりますよね。

そうすると、何歳の時にどの程度の大きさになるのか?それによって各臓器はきちんと発育しているのか?という正確な診断が出来ますよね。

これはスキャモンの研究成果が因果関係のある事実として、きちんと活かされている事例です。

そうした意味でスキャモンの成長曲線は、ゴールデンエイジの理論に応用するのではなく医学の分野に限定して考えるべきなのです。

② スポーツ科学の応用と分析手法の矛盾

スキャモンの成長曲線は、近年スポーツ科学のいろいろな論文に引用されています。

特に多い引用のパターンは次のとおりです。

・小学生の時期は神経系が発達するので、基本的な運動動作の習得を目標にする。
・中学生の時期は呼吸器系(成長曲線の一般型を指す)が発達するので、持久力を付けるとともに専門種目を決める。

こうした考え方の根拠になっているのは、成長曲線の4分類のうちの「神経系型」の部分です。

特に神経系型は出生と同時に急激に上昇し、12歳ごろに容量や重さがピークになるという点です。

そうすると9~12歳までが運動学習最適期になるということだそうです。

だからゴールデンエイジの理論は正しい…。

たしかに一見すると正しそうに思えますよね。

でも、この点は極めて安易な発想です。

その安易さとは、神経系型のピークの12歳と、子供の運動学習最適期の9~12歳は必ずしも一致しないという点です。

なぜならスキャモンの成長曲線は、体のいろいろな組織の容量や重さをグラフ化しただけであって、そのうちの神経系型の容量や重さは12歳ごろにピークになっている…と示したのに過ぎません。

そもそも、スキャモンの成長曲線による神経系型の容量や重さは「量的」な分析です。

ところが、運動学習能力は、特定のスポーツのテクニックがどの程度まで上達したのか?という「質的」な分析が必要です。

例えばサッカーであれば、インステップキックが蹴れるようになった、ヘディングが出来るようになった、クライフターンが出来るようになった…などの、テクニックの上達の度合いです。

これらは、いずれも量ではなく、テクニックが上手くなったという質の問題ですよね。

そうすると、量と質を比較分析するのは非科学的で無理があるのです(そもそも量と質は科学的に比較できない)。

仮に、神経系型の容量や重さと運動学習能力の比較分析が可能であったとしても、12歳を過ぎても神経系型の容量や重さのピークの状態が続いているので、運動学習最適期も続いて良いはずです。

そうすると、運動学習最適期は9~12歳までに終わってしまうとは、必ずしも言い切れないのです。

その一方で、神経系型の容量や重さが運動学習能力と一致するのであれば、全ての子供がそろって同じ運動能力に成長するはずです。

そうすると、どんな子供でも9~12歳までに優秀なサッカー選手になってしまうという矛盾が起きるのです。

ところが、現実にはサッカーが上手い子もいれば、下手な子もいるので、実際には千差万別の結果が出ています。

こうした点を考慮すると、実に矛盾だらけの結果になるわけですね。

③ 因果関係の乏しさ

スキャモンの成長曲線は、「The measurement of man」という書籍のごく一部分に掲載されたグラフにすぎません。

これだけをもって、9~12歳までが運動学習最適期である…という結果を導き出すのは、因果関係が乏しいと思います。

そうすると、ゴールデンエイジを科学理論として考えること自体にも無理があります。

この場合の因果関係とは、〇〇が原因で××という結果が出るという、原因と結果が科学的に実証されている場合の理論です。

例えば、晴天(原因)になると気温が高い(結果)のは、科学的にも妥当性がありますよね。

だから、晴天の日が続いた(原因)から、高温の日が続いた(結果)という現象は、因果関係がある!と言い切れるわけです。

これに対して、因果関係が乏しい理論を相関関係といいます。

例えば、晴天の日が続くと亡くなる人が増える…というのは、必ずしも科学的ではありません(直感的に考えても正しいとは言えない)。

この場合、熱中症が増えるので…と想像するかも知れませんが、これは単に関連性があるだけであって、直ちに因果関係があるわけではありません。

こうした考えに基づけば、スキャモンの成長曲線では、神経系型は12歳ごろに容量や重さがピークになる。だから9~12歳までが運動学習最適期である。

というのは、単に関連性があるだけで因果関係は全くないということです。

そうするとゴールデンエイジの運動学習最適期の考え方には、原因と結果のきちんとした因果関係もなければ科学的な根拠もないわけです。

つまり、単なる推測の域を逃れられない、とても安易な発想と言えるのです!

さて次は、ゴールデンエイジを裏付ける3つの理論のうちの二つ目である「即座の習得」について詳しく解説します。

(2)即座の習得

ゴールデンエイジを裏付ける3つの理論の二つ目である「即座の習得」は、脳神経系の臨界期の考え方から導き出されたものです。

① 臨界期とは

脳神経系の臨界期(感受性期)とは、ヒトや動物の脳の働きが乳幼児期の経験によって変わることを指したものです。

代表例は1930年代の鳥の実験ですね。

これは、ひな鳥が目の前のおもちゃを親鳥と思って追いかけることを刷り込み(経験)と呼びますが、こうした行動は孵化後の8~24時間の間だけに限られます。

この8~24時間の期間を臨界期と言いますが、この時期を過ぎてから雛におもちゃを見せても、雛は何の反応も示しません。

その一方で、1970年代の実験では、子猫の片目を閉じた状態を続けると片目の視力を失いますが、この時の臨界期は生後3~4週頃までです。

そして生後15週を過ぎてから片目を閉じても、視力を失うことはなかったとの報告があります。

また、ヒトやサルにも同じような事例があるそうです。

このような実験結果によれば、脳神経系の臨界期は生後のわずかな期間に限られた現象とされています。

これに対してヒトの場合、例えば母国語の習得は12歳頃までが臨界期とされています。

これは日本人であっても12歳頃まで全く日本語を使わなければ、日本語を話せなくなるということですね。

また楽器の演奏や絶対音感などにも、生後何歳まで…という臨界期があるそうです。

これに対して別の研究では、必ずしも生後何歳までが臨界期という考えが適用しない事例も見られます。

例えば、日本のある研究グループが英語の文法について、小学校から学習している子供と中学校から始めた子供をグループ分けして、脳神経系の活性化にはどのような違いがあるのか?を調べた事例があります。

その結果、いつ始めたのか?よりも、学習期間の長い方が脳神経の活性化が見られたそうです。

そうすると脳神経系の臨界期は生後何歳まで…とは、あまり関係ないと考えられるわけですね。

さらに、イギリスのある研究グループは、ロンドンのタクシー運転手の海馬の大きさの違いを計測したところ、興味深い結果が出ています。

ロンドンのタクシー運転手はたくさんの通りや場所を覚えるため、空間学習能力が発達するので、同年代の男性の海馬よりも大きかったそうです(空間学習能力が発達すると海馬が大きくなる)。

しかも、運転歴の長いドライバーほど顕著だったそうです。

つまり空間学習能力は成長し続けるため、臨界期は存在しないということですね。

以上を総合的に考えると脳神経系の臨界期の理論は、未だ研究途上でハッキリしないことが多いと言えます。

しかも運動学習能力に関しては、生後何歳まで…という臨界期の研究は発表されていません。

そうするとゴールデンエイジの中核の一つである「即座の習得」も、実は非科学的な考え方なのです。

もっと言えば、ゴールデンエイジの理論そのものの信頼性にも、大きな影響があるわけですね。

② ゴールデンエイジと臨界期

ゴールデンエイジと臨界期の関係については、元日本サッカー協会技術委員長(2019年現在・FC今治監督)の小野剛氏が、次のように説明しています。

「運動機能には明確な臨界期は存在しないものの、これに相当する時期はある」。

その根拠としたのが、ドイツの運動学者マイネル(1898-1973)の「運動学」という書籍からの引用で、「子供の脳神経細胞の成長は9~12歳までに完成する」という点を根拠としているそうです(※スキャモンの成長曲線と同様に、ここでも単なる書籍の引用なので根拠は極めて乏しい)。

これはスキャモンの成長曲線から導き出した、ゴールデンエイジの運動学習最適期と全く同じですね。

マイネルはドイツ統一前の東ドイツの学者ですが、スキャモンはアメリカの解剖学者です。

また第2次大戦後の東ドイツは鎖国状態だったので、西側のアメリカの文献は普及していなかったはずです。

そうするとスキャモンの成長曲線の理論は、東ドイツに伝わっていないのではないか?と思います。

マイネルは「本当に9~12歳までに完成する…」なんて発表したのでしょうか…?

これはかなり怪しいですが、この点は100歩譲って良しとしましょう。

仮に言ったとしても、マイネルの「子供の脳神経細胞の成長は9~12歳までに完成する」という点と、ゴールデンエイジの運動学習最適期は9~12歳である…、という、お互いの理論の因果関係がハッキリしていません。

先ほども解説したとおり、日本サッカー協会は、晴天の日が続いた(原因)ので高温の日が続いた(結果)という程度の科学的な検証をしていないので、原因と結果の関係ではなく単に関連性があるとか、推測をしたというレベルなのです。

また注意しなくてはならないのが、12歳を過ぎると運動機能は脳神経系の臨界期なので、即座の習得は出来ないという根拠がハッキリしていません。

つまり先ほど解説した「子供が12歳を過ぎると、本当に運動学習には適さないのか?何をやってもダメなのか?」という点ですね。

これに対して小野剛氏には、ゴールデンエイジと臨界期の関係には、さらに2つの独自理論があるそうなので、これを考えてみましょう。

③ 小野剛氏の臨界期に対する考察

小野剛氏によれば、子供の運動学習は大人とは違って理性的な分析をしないため、体を動かす時は見たものを感じたままに行ってしまうそうです。

これは幼児が話しをする時に大人のような正しい会話力がなくても、話しが出来てしまうのと同じだから…と根拠づけています。

だから9~12歳の子供は運動学習最適期なのだそうです。

要するに、ゴールデンエイジの理論は正しい!と言いたいのでしょう。

ところが、どうして9~12歳の子供に限定されるのか?という根本的な疑問には、一切答えていません。

別に3歳でも5歳でも20歳でも良いはずでしょ?

でも、残念ながら、9~12歳という年齢の根拠が示されていません。

また、子供は運動学習を理性的に分析しない…と言いますが、だからと言って全てを大人の言われたままにしているわけではないですよね。

子供なりに、いろいろと考えて運動しているのです。

そもそも子供は、ロボットではありませんからね(笑)。

ここまで来ると、ゴールデンエイジの理論は単なるこじつけにしかなりません。

さて次は、ゴールデンエイジを裏付ける3つの理論のうちの二つ目である「脳の可塑性」について詳しく解説します。

(3)脳の可塑性

さて次は、ゴールデンエイジを裏付ける3つの理論のうちの二つ目である「脳の可塑性」について詳しく解説します。

※脳の可塑性の解釈はゴールデンエイジの考えが間違っていたことと深い関係があるので、注意してお読みください。

① 脳の可塑性とは?

脳の可塑性とは、ノルウェーの神経解剖学者のアルフ・ブロダが1973年に提唱した比較的新しい理論です。

特定の脳細胞が損傷するとその部分は再生しないが、他の細胞が損傷箇所を補って運動機能が回復するという理論です。

要するに脳細胞が変化して、元に戻ろうとするわけですね。

こうした理論は医学界でも普及していて、脳こうそくなどのリハビリ治療にも応用されています。

要するに脳細胞の使われない機能は退化するが、使われる機能は発達して補うことが出来るという理論です。

② 脳の可塑性とゴールデンエイジ

脳の可塑性とゴールデンエイジの関係について、前出の小野剛氏は次のように主張しています。

特定の運動を反復練習して正確に出来るようになるのは、脳神経系に新たな経路を作るためであり、これを「疎通」と呼ぶ…。この疎通は、ゴールデンエイジの9~12歳の子供の脳に可塑性があるので可能である…と言っています。

さらに、脳の可塑性は年齢とともに低下し20歳頃にはゼロに近づくので、このような疎通の状態は起きにくくなるそうです。

そうした意味では、ゴールデンエイジの9~12歳の子供が、運動学習における臨界期(運動学習最適期)と考えているようです。

じつに素晴らしい理論のように思えますが、やはり疑問があります。

そもそも、小野剛氏の提唱する脳の可塑性が低下して、20歳頃にはゼロに近づくとなると、先ほどのアルフ・ブロダの理論が脳梗塞のリハビリ治療に使えないことになります。

なぜなら、脳梗塞は壮年期(30歳以降)に多く発症する病気だからです。

つまり20歳で脳の可塑性がゼロに近づくなら、30歳以降に脳梗塞を発症したヒトは絶対に回復しないということになります。

でも現実的にはかなりの方がリハビリによって回復していますよね。

この事実をどのように考えれば良いのでしょうか?

残念ながら、答えは示されていません。

また小野剛氏が提唱した脳の可塑性の曲線は、いつ?どのようにして?研究されたのかが不明です。

もしもこうした研究成果が本当であれば、医学界に一大センセーションを巻き起こすはずです。

さて、それでは次に脳の可塑性に関する最新の研究成果を解説します。

衝撃の事実をお伝えするので、注意してお読みください。

3.脳の可塑性の最新の研究成果

ブリティッシュ・コロンビア大学で、ヒトの脳を研究しているララ・ボイド博士は、次の動画で最新の研究成果を公演しています。

この動画は英語ですが、日本語字幕も翻訳してあるので、それをご覧になるとよく分かります。

また長い動画ですが、あなたが今まで常識と考えていた脳の仕組みが根底から覆るはずですよ。

この動画の中で、ララ・ボイド博士は、これまでの常識とされた脳の仕組みについて、2つの誤解を指摘しています。

A.思春期を過ぎた脳は変化しない→大人になっても常に変化し続ける。
B.脳は一部の機能だけを使っている→常に活発に働いている。

その発見のカギとなったのが「脳神経の可塑性」です(前述の「脳の可塑性」と同じ意味)。

要するに、ララ・ボイド博士によれば、脳の可塑性は(前出の小野剛氏が言うように20歳でゼロになることはなく)何歳になっても変化及び成長をするという研究成果を指摘しています。

そうするとサッカーで言えば、12歳を過ぎても練習すれば上手くなる…ということなので、特に9~12歳の子供が運動学習最適期とは言えなくなるのです。

また、これらの事実は、脳梗塞の患者に対するMRI検査などによって、すでに25年前に発見された研究成果だそうです。

この動画は2015年12月に公開していますが、ここから25年前と言うと1990年ですよね(実際にはもっと前に研究成果が発見されている)。

これに対して、前述の「1-(2)ゴールデンエイジ理論の普及」の中で、ゴールデンエイジの理論が世間に普及したきっかけは、Jリーグが発足する30年近く前(正確には1992年)にさかのぼる…と解説しています。

そうすると現在は2019年なので、30年前は1989年になります。

つまり、日本サッカー協会がゴールデンエイジの理論を発表した当時の最新科学では、すでに脳の可塑性は20歳でゼロになることはなく、何歳になっても変化及び成長するという事実が発見されていたわけですね(つまり12歳を過ぎてもサッカーは上手くなるということ)。

でも日本人は、この事実を知らずにいて、日本サッカー協会も知ってか知らずか分かりませんが、このまま放置したために後戻りできなくなったのでしょう。

少し話が長くなってしまったので、次にゴールデンエイジの真相と間違いについて要点をまとめます。

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4.ゴールデンエイジの間違いと真相

(1)3つの科学理論の考察

ゴールデンエイジの根拠とされる「スキャモンの成長曲線」、「即座の習得」、「脳の可塑性(かそせい)」という3つの科学理論との関係について、次のとおり要点をまとめたのでお読みください。

① スキャモンの成長曲線

A.ゴールデンエイジの理論の根拠

スキャモンの成長曲線は、亡くなった子供たちを解剖し、個々の臓器の容量や重さを量り、グラフとしてまとめた医学資料ですが、このうち神経系型は出生と同時に急激に上昇し、12歳ごろに容量や重さがピークになるとされています。

これに対してゴールデンエイジの理論は、この部分を根拠として、9~12歳までが運動学習最適期になると提唱しています。

B.矛盾と間違いの指摘

スキャモンの成長曲線による神経系型の容量や重さは「量的」な分析ですが、運動学習能力は例えばテクニックがどの程度まで上達したのか?という「質的」な分析です。

そうすると、量と質を比較分析するのは科学的には無理なので、スキャモンの成長曲線を根拠とするのは科学的に矛盾します(そもそも量と質は科学的に比較できない)。

また、仮に量と質の比較分析が可能であり、神経系型の容量や重さが運動学習能力と一致するのであれば、全ての子供がそろって同じ運動能力に成長するはずです。ところが、実際には上手い子もいればそうでない子もいるという矛盾があります。

さらに、12歳を過ぎても神経系型の容量や重さのピークの状態は続いているので、運動学習最適期も続いて良いはずです。だから運動学習最適期を9~12歳までに限定するのは間違いです。

② 即座の習得

A.ゴールデンエイジの理論の根拠

脳神経系の臨界期とは、ヒトや動物の脳の働きが乳幼児期の経験によって変わることを指したもので、例えばひな鳥が、おもちゃを親鳥と思って追いかける行動は孵化後の8~24時間の間だけに限られます(この8~24時間が臨界期)。

これに対してゴールデンエイジの理論は「運動機能には明確な臨界期は存在しないものの、これに相当する時期はある」として、ドイツの運動学者マイネル(1898-1973)の「運動学」という書籍(脳神経細胞の成長は9~12歳までに完成するというもの)からの引用により、9~12歳までが即座の習得に最適な時期と提唱しています。

B.矛盾と間違いの指摘

マイネルの「脳神経細胞の成長は9~12歳までに完成する」という点と、ゴールデンエイジの運動学習最適期は9~12歳である…、という、お互いの理論の因果関係がハッキリしていません。

因果関係とは、晴天の日が続いた(原因)から高温の日が続いた(結果)という程度の科学的な検証が必要です。

ところが原因と結果の関係ではなく、単に関連性があるとか推測をしたというだけなので、そもそも、9~12歳までが即座の習得に最適な時期という発想は間違いです。

また12歳を過ぎると運動機能は脳神経系の臨界期なので、即座の習得は出来ないという根拠をハッキリ示していません。

③ 脳の可塑性

A.ゴールデンエイジの理論の根拠

脳の可塑性とは、脳細胞が変化して成長するという理論です。

これに対してゴールデンエイジの理論では、9~12歳の子供の脳には可塑性があるが、20歳頃にはゼロに近づくので、特定の運動を反復練習しても上手くならない…としています。

だから、9~12歳の子供は運動学習最適期ということだそうです。

B.矛盾と間違いの指摘

ブリティッシュ・コロンビア大学のララ・ボイド博士によれば、これまでの常識とされた脳の仕組みについて、2つの誤解を正しています。

A.脳は大人になっても常に変化し続ける。
B.脳は常に活発に働いている。

要するに最新科学では、脳の可塑性は何歳になっても変化及び成長をするので、特に9~12歳の子供が運動学習最適期とは言えないのです。

(2)ゴールデンエイジが発表された当時の状況

① Jリーグ発足当時の状況

ゴールデンエイジの理論が作られたきっかけは、日本サッカー協会がJリーグ発足当時の各クラブに、ジュニア~ユースまでの育成組織の運営上のガイドラインが必要だったからです。

そのために提唱されたのが、ゴールデンエイジの理論なのです。

当時は、Jリーグの発足が迫っていたので慌ただしかったのでしょう。

そうした意味では、間に合わせで作ったようなもの(やっつけ仕事のようなもの)なのです。

だからゴールデンエイジ理論は、「スキャモンの成長曲線」、「即座の習得」、「脳の可塑性(かそせい)」を引用してまとめただけで、科学的な検証は全く存在しません。

つまり、日本サッカー協会の都合に合わせて作られたわけですね。

でも「えっ?そんなことなんて考えたこともない…」という方は多いかも知れません。

日本人は権威主義的で大人しい民族なので、日本サッカー協会という権威ある立場の人々が言ったことを盲信する傾向があります。

そもそもスポーツ科学は歴史の浅い研究分野です。

例えば、昔は試合中に水を飲むな…と言われていましたが、現在では水分補給が当たり前になっていますし、時代は進化しているのです。

つまり、ゴールデンエイジは、しょせんはこの程度のレベルと考えた方が良いわけですね。

② 脳の最新科学と日本人の誤解

先ほどのララ・ボイド博士の動画によれば、日本サッカー協会がゴールデンエイジの理論を発表した同じ時期(30年前)に、脳の可塑性は20歳でゼロになることはなく、何歳になっても変化及び成長するという事実が発見されたと説明しています(つまりゴールデンエイジを過ぎても、サッカーは上手くなるということ)。

繰り返しますが、ゴールデンエイジの発表と、脳の可塑性の新発見が同じ時期ですよ。

つまり、ゴールデンエイジは間違っていたのに、発表してしまったということですね。

皮肉なことに、多くの日本人はこの事実を知らずにいて、日本サッカー協会も知ってか知らずか分かりませんが、このまま放置したために後戻りできなくなったのでしょう。

でも、その後で何が起きたと思いますか?

実は幼少期からの早期スポーツ専門化が起きているのです。

これは、スポーツを始めるなら早い方が良いということで、例えば、3~4歳からサッカーを始める…という親御さんの考えですね。

そもそも、サッカーは野球やテニスなどと同じで、特定の筋肉や関節を使い続けるスポーツのため、成長が未熟な幼児にとっては体に大きな負担をかけます。

そのため、本来であれば数年程度の期間をかけていろいろな運動を経験させるという、いわば準備期間が必要なのです。

たしかに、ゴールデンエイジのパンフレットにも、8歳以下の子供はプレゴールデンエイジとして、ゴールデンエイジに向けた運動の基本動作(投げる、打つ、走る、跳ぶ、蹴る)を反復して、全身をたくさん使うような運動も取り入れるよう推奨しています。

でも、親御さんからすれば、ゴールデンエイジの9~12歳までの運動最適期があるのなら、もっと早くから始めた方が良い…と考えてしまうのは無理もないと思います。

また、ゴールデンエイジで人生は決まってしまう…などという愚かしい発想が起きてしまうわけですね。

その結果、子供たちは慢性的なケガとテクニックの伸び悩みという問題に直面しているのです。

※子供たちが抱えている問題については、次の記事をお読みください。
幼児がサッカーを始める時の3つの注意点!【練習法も動画で解説】

いずれにしても、脳科学の最新の研究成果を知らない日本人の誤解が生んだ、一種の悲劇だと思います。

5.まとめ

これまで、ゴールデンエイジの理論の疑問点をいろいろと解説しました。

特にゴールデンエイジの根拠とされる「スキャモンの成長曲線」、「即座の習得」、「脳の可塑性(かそせい)」という3つの科学理論に基づいた、9~12歳までが運動学習最適期という考えは矛盾と間違いに満ちています。

またゴールデンエイジの理論は、どうして9~12歳までが運動学習最適期なのか?12歳を過ぎると本当に運動学習には適さないのか?何をやってもダメなのか?という点には一切答えていません。

私と同じように、こうした疑問を感じているお父さんやお母さんたちも多いのではないでしょうか?

私から言わせれば、そんなこと気にしなくても良いです!と強く言えます。

なぜなら、先ほども解説したとおりゴールデンエイジは矛盾と間違いだらけだからです。

日本サッカー協会としても、ゴールデンエイジが本当に正しい理論であるのならば、ぜひ科学的な検証をきちんとしてほしいと願っています。

もしも検証できないのであれば、間違いを認めた方が良いでしょう。

【画像引用:Youtube.com