ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

ゴールデンエイジは間違い!JFAの不都合な真実とは?

【ゴールデンエイジの根拠と妥当性】

(1)スキャモンの成長曲線

①スキャモンの成長曲線とは

ゴールデンエイジ理論の裏付けの一つとして用いられたスキャモンの成長曲線は、アメリカの医学者で解剖学が専門のスキャモン(1883-1952)が発表したものです。

また、スキャモンの成長曲線は、1930年にミネソタ大学出版会から出版された「The measurement of man」という書籍に掲載されています。

この成長曲線は、数多くの亡くなった子供たちを解剖し、個々の臓器の容量や重さを量り、グラフとしてまとめたものです。

その際、体のいろいろな組織を、一般型(いろいろな臓器)、神経系型、リンパ系型、生殖器系型の4つに分類して、年齢に応じて、どのように成長するのか?をまとめています。

また出生時を0%、成長のピークを20歳の100%と考え、年齢ごとの成長度合いをパーセントで表記しています。

このように、スキャモン成長曲線は、体の各部分の成長は年齢によって違いがあるという、あくまでも医学の基礎理論をまとめただけであって、ゴールデンエイジというスポーツ科学に応用されるのを想定して研究したわけではありません。

実は、スキャモンの研究成果は主に医学の分野で活かされています。

例えば、子供の胴体が成長すれば、心臓などの臓器も大きくなりますよね。

そうすると、何歳の時にどの程度の大きさになるのか?それによって各臓器はきちんと発育しているのか?という正確な診断が出来ますよね。

これはスキャモンの研究成果が因果関係のある事実として、きちんと活かされている事例です。

そうした意味でスキャモンの成長曲線は、ゴールデンエイジの理論に応用するのではなく医学の分野に限定して考えるべきなのです。

②スポーツ科学の応用と分析手法の矛盾

スキャモンの成長曲線は、近年スポーツ科学のいろいろな論文に引用されています。

特に多い引用のパターンは次のとおりです。

・小学生の時期は神経系が発達するので、基本的な運動動作の習得を目標にする。
・中学生の時期は呼吸器系(成長曲線の一般型を指す)が発達するので、持久力を付けるとともに専門種目を決める。

こうした考え方の根拠になっているのは、成長曲線の4分類のうちの「神経系型」の部分です。

特に神経系型は出生と同時に急激に上昇し、12歳ごろに容量や重さがピークになるという点です。

そうすると9~12歳までが運動学習最適期になるということだそうです。

だからゴールデンエイジの理論は正しい…。

たしかに一見すると正しそうに思えますよね。

でも、この点は極めて安易な発想です。

その安易さとは、神経系型のピークの12歳と、子供の運動学習最適期の9~12歳は必ずしも一致しないという点です。

なぜならスキャモンの成長曲線は、体のいろいろな組織の容量や重さをグラフ化しただけであって、そのうちの神経系型の容量や重さは12歳ごろにピークになっている…と示したのに過ぎません。

そもそも、スキャモンの成長曲線による神経系型の容量や重さは「量的」な分析です。

ところが、運動学習能力は、特定のスポーツのテクニックがどの程度まで上達したのか?という「質的」な分析が必要です。

例えばサッカーであれば、インステップキックが蹴れるようになった、ヘディングが出来るようになった、クライフターンが出来るようになった…などの、テクニックの上達の度合いです。

これらは、いずれも量ではなく、テクニックが上手くなったという質の問題ですよね。

そうすると、量と質を比較分析するのは非科学的で無理があるのです(そもそも量と質は科学的に比較できない)。

仮に、神経系型の容量や重さと運動学習能力の比較分析が可能であったとしても、12歳を過ぎても神経系型の容量や重さのピークの状態が続いているので、運動学習最適期も続いて良いはずです。

そうすると、運動学習最適期は9~12歳までに終わってしまうとは、必ずしも言い切れないのです。

その一方で、神経系型の容量や重さが運動学習能力と一致するのであれば、全ての子供がそろって同じ運動能力に成長するはずです。

そうすると、どんな子供でも9~12歳までに優秀なサッカー選手になってしまうという矛盾が起きるのです。

ところが、現実にはサッカーが上手い子もいれば、下手な子もいるので、実際には千差万別の結果が出ています。

こうした点を考慮すると、実に矛盾だらけの結果になるわけですね。

③因果関係の乏しさ

スキャモンの成長曲線は、「The measurement of man」という書籍のごく一部分に掲載されたグラフにすぎません。

これだけをもって、9~12歳までが運動学習最適期である…という結果を導き出すのは、因果関係が乏しいと思います。

そうすると、ゴールデンエイジを科学理論として考えること自体にも無理があります。

この場合の因果関係とは、〇〇が原因で××という結果が出るという、原因と結果が科学的に実証されている場合の理論です。

例えば、晴天(原因)になると気温が高い(結果)のは、科学的にも妥当性がありますよね。

だから、晴天の日が続いた(原因)から、高温の日が続いた(結果)という現象は、因果関係がある!と言い切れるわけです。

これに対して、因果関係が乏しい理論を相関関係といいます。

例えば、晴天の日が続くと亡くなる人が増える…というのは、必ずしも科学的ではありません(直感的に考えても正しいとは言えない)。

この場合、熱中症が増えるので…と想像するかも知れませんが、これは単に関連性があるだけであって、直ちに因果関係があるわけではありません。

こうした考えに基づけば、スキャモンの成長曲線では、神経系型は12歳ごろに容量や重さがピークになる。だから9~12歳までが運動学習最適期である。

というのは、単に関連性があるだけで因果関係は全くないということです。

そうするとゴールデンエイジの運動学習最適期の考え方には、原因と結果のきちんとした因果関係もなければ科学的な根拠もないわけです。

つまり、単なる推測の域を逃れられない、とても安易な発想と言えるのです!

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さて次は、ゴールデンエイジを裏付ける3つの理論のうちの二つ目である「即座の習得」について詳しく解説します。

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