(3)脳の可塑性
※脳の可塑性の解釈はゴールデンエイジの考えが間違っていたことと深い関係があるので、注意してお読みください。
①脳の可塑性とは?
脳の可塑性とは、ノルウェーの神経解剖学者のアルフ・ブロダが1973年に提唱した比較的新しい理論です。
特定の脳細胞が損傷するとその部分は再生しないが、他の細胞が損傷箇所を補って運動機能が回復するという理論です。
要するに脳細胞が変化して、元に戻ろうとするわけですね。
こうした理論は医学界でも普及していて、脳こうそくなどのリハビリ治療にも応用されています。
要するに脳細胞の使われない機能は退化するが、使われる機能は発達して補うことが出来るという理論です。
②脳の可塑性とゴールデンエイジ
脳の可塑性とゴールデンエイジの関係について、前出の小野剛氏は次のように主張しています。
特定の運動を反復練習して正確に出来るようになるのは、脳神経系に新たな経路を作るためであり、これを「疎通」と呼ぶ…。この疎通は、ゴールデンエイジの9~12歳の子供の脳に可塑性があるので可能である…と言っています。
さらに、脳の可塑性は年齢とともに低下し20歳頃にはゼロに近づくので、このような疎通の状態は起きにくくなるそうです。
そうした意味では、ゴールデンエイジの9~12歳の子供が、運動学習における臨界期(運動学習最適期)と考えているようです。
じつに素晴らしい理論のように思えますが、やはり疑問があります。
そもそも、小野剛氏の提唱する脳の可塑性が低下して、20歳頃にはゼロに近づくとなると、先ほどのアルフ・ブロダの理論が脳梗塞のリハビリ治療に使えないことになります。
なぜなら、脳梗塞は壮年期(30歳以降)に多く発症する病気だからです。
つまり20歳で脳の可塑性がゼロに近づくなら、30歳以降に脳梗塞を発症したヒトは絶対に回復しないということになります。
でも現実的にはかなりの方がリハビリによって回復していますよね。
この事実をどのように考えれば良いのでしょうか?
残念ながら、答えは示されていません。
また小野剛氏が提唱した脳の可塑性の曲線は、いつ?どのようにして?研究されたのかが不明です。
もしもこうした研究成果が本当であれば、医学界に一大センセーションを巻き起こすはずです。
さて、それでは次に脳の可塑性に関する最新の研究成果を解説します。
衝撃の事実をお伝えするので、注意してお読みください。
【脳の可塑性の最新の研究成果】
ブリティッシュ・コロンビア大学で、ヒトの脳を研究しているララ・ボイド博士は、次の動画で最新の研究成果を公演しています。
この動画は英語ですが、日本語字幕も翻訳してあるので、それをご覧になるとよく分かります。
また長い動画ですが、あなたが今まで常識と考えていた脳の仕組みが根底から覆るはずですよ。
この動画の中で、ララ・ボイド博士は、これまでの常識とされた脳の仕組みについて、2つの誤解を指摘しています。
A.思春期を過ぎた脳は変化しない→大人になっても常に変化し続ける。
B.脳は一部の機能だけを使っている→常に活発に働いている。
その発見のカギとなったのが「脳神経の可塑性」です(前述の「脳の可塑性」と同じ意味)。
要するに、ララ・ボイド博士によれば、脳の可塑性は何歳になっても変化及び成長をするという研究成果を指摘しています(前出の小野剛氏が言うように20歳でゼロになることはない)。
そうするとサッカーで言えば、12歳を過ぎても練習すれば上手くなる…ということなので、特に9~12歳の子供が運動学習最適期とは言えなくなるのです。
また、これらの事実は脳梗塞の患者に対するMRI検査などによって、すでに25年前に発見された研究成果だそうです。
この動画は2015年12月に公開していますが、ここから25年前と言うと1990年ですよね(実際にはもっと前に研究成果が発見されている)。
これに対して、前述の「1-(2)ゴールデンエイジ理論の普及」の中で、ゴールデンエイジの理論が世間に普及したきっかけは、Jリーグが発足する30年近く前(正確には1992年)にさかのぼる…と解説しています。
そうすると現在は2019年なので、30年前は1989年になります。
つまり、日本サッカー協会がゴールデンエイジの理論を発表した当時の最新科学では、すでに脳の可塑性は20歳でゼロになることはなく、何歳になっても変化及び成長するという事実が発見されていたわけですね(つまり12歳を過ぎてもサッカーは上手くなるということ)。
でも日本人は、この事実を知らずにいて、日本サッカー協会も知ってか知らずか分かりませんが、このまま放置したために後戻りできなくなったのでしょう。
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少し話が長くなってしまったので、次にゴールデンエイジの真相と間違いについて要点をまとめます。
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