ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

ハイプレスとは?サッカー初心者でも分かりやすく解説!

【具体的な守備戦術】

(1)高い位置でボールを奪う

この場合は2段階に分けて考えましょう。

①ディフェンスラインにプレス

この時に大切なのは二列目(特にボランチ)に簡単に縦パスを出させないこと、横パスやバックパスを出させるというものです(前にパスを出さない限り攻撃が出来ない)。

これによって相手の攻撃の選択肢を減らせるので、そのためには先ずパスコースを切るのが大切です。

もちろん相手から直接ボールを奪えれば良いのですが、近年のディフェンダーは足元の技術が高いので簡単にかわされます。

そこでボールを奪うことも大切ですが、先ずはパスコースを切って相手をじわじわと追いつめた方が良いでしょう。

具体的には、先ず相手のビルドアップ(ディフェンスラインでパスを回す)の時にFWやSHがパスコースを切りながらプレスをかけて、ボランチ(攻撃の起点)への縦パスを阻止します。

次のようなプレスを掛けるとパスコースは右サイドだけですよね。

そうするとプレスを掛けた方のマンチェスターシティ(水色のユニフォーム)のディフェスライン(センターラインあたりにいるので画像では見えません)は全体的に相手の右サイド方向にシフトします。

そしてセンターバックから右サイドバックに横パスを出させ、そこから右サイドハーフに縦パスを入れたところを囲い込んで奪うわけですね。

もちろん右サイドックからボランチ(中にいる選手)にパスを出したとしても奪えるはずです。

なぜならマンチェスターシティのディフェンスラインが、すぐにプレスを掛けられるような位置にいるからです(もちろんチェルシーの右サイドバックがすぐにサイドチェンジのロングパスをするのであれば別です)。

先ほど解説した攻撃の選択肢を減らすというのは、こういうことです。

実際の試合ではこのような方法で守備をするのが多いですね。

②ロングボールを蹴らせる

先ほど相手のディフェンスラインで横パスやバックパスを出させる…と解説しましたよね。

そうした状況は相手が手詰まり状態なので、そうするとディフェンスラインの裏を狙ってロングボールを蹴って来ることがあります。

そこで今度は味方のセンターバックやサイドバックが相手FWとの空中戦になるので、ヘディングした後のセカンドボールを確実に拾うことで攻撃に移ることが可能になります。

次の動画の0:13からシーンでは黒チームのハイプレスに対して、白チームがゴールキーパーにバックパスをしてロングポールを蹴っています。

その後、黒チームのセンターバックがヘディングで味方にパスしています。

これは黒チーム側がわざとロングキックを蹴らせてマイボールにしたわけですね(キーパーの苦し紛れのロングキック)。

このように考えれば相手にロングボールを蹴らせるのは、こちらが攻撃に移れるチャンスと考えるべきでしょう。

もちろんディフェンスラインを上げてコンパクトにするのも必要ですよ。

相手に中盤のスペースを使われてしまいますからね。

その一方で相手チームのセンターバックが、最初から二列目を飛ばしてサイドの選手にロングパスをするケースもあるので、そうした点には注意が必要です(例えば左サイドバックから右サイドハーフへのロングパス)。

ただしこの場合でもサイドであれば、すぐにはピンチにならないのでパスが通ったとしても、味方の戻りを待つためのディレイ戦術で、相手の攻撃を遅らせましょう(詳細は後述します)。

(2)前線でボールを奪われた場合

この場合も2段階に分けて考えましょう。

①ボールを奪われた直後

相手陣内でボールを奪われた時、すぐにプレスをかけて奪い返すことで攻撃が続けられます。

そこでボールを奪われたら、奪われた選手と近くの選手が協力して相手を囲い込むなど、なるべく早くプレスを掛けましょう。

次の動画は先ほどご覧になったものですが、マンチェスターシティの選手たちがしつこくハイプレスをしていますよね。

この場合、ボールを奪われたのに立ち止まって追いかけなかったり、そのまま見過ごしてしまうのは絶対にダメです。

なぜならボールを奪った相手はパスを出して広いスペースに展開するか、そのままドリブルして前進するかなどによって、その場からボールを移動させることを真っ先に考えるからです。

上の動画でもセンターバックのダビドルイスが前に蹴り出そうとしていましたよね(タッチラインを割ってしまいましたが…)。

つまり放っておくと、どんどん時間が経ってボールを奪い返す機会を逃してしまうわけですね。

こういうシーンは少年サッカーの試合でもよくありがちですよ。

そうならないためにも、ボールが奪われたエリアの中でかつ短時間で、味方と協力してボールを奪い返しましょう。

この場合、マンチェスターシティであれば5秒ルール、FCバルセロナであれば7秒ルールなどがあるので、選手たちは短時間で必死になってプレスを掛けようとします。

そうしたシーンは試合中も、よく見られるのでぜひ参考にしてください。

②守備ブロックを作るタイミング

相手陣内でボールを奪い返せなかった場合、または奪い返せそうもないと判断した場合は、直ちに守備ブロック(2列のディフェンスライン=ゾーンディフェンス)を作り直す必要があります(例えば4-4-2など)。

またボールを持った相手と対峙した選手は、相手の攻撃を出来るだけ遅らせましょう。

ここでの優先順位はとにかく相手の攻撃を遅らせることなので、間違っても簡単に突破されないことが重要です。

そうすることで味方が守備ラインを作る時間を稼げますからね。

こちらの動画では相手陣内でボールを奪い返せなかった場合のハイプレスからゾーンディフェンスへの切り替えの様子が解説されています。

この動画の例では相手にボールを奪われた時点で数的不利の状況になったため、ハイプレスをあきらめてゾーンディフェンスに変わって行く様子が分かると思います。

なお相手から奪い返せそうもないと判断する基準は、動画でご覧になったように相手との関係が数的不利になっているなど、明らかに相手の攻撃が有利に展開しそうな場合です。

これはチーム内での決め事にも関わってくるので一概には言えませんが、試合経験を積んだうえで身に付けて行く高度な状況判断になります。

その場合、まだ奪い返せそうなのにハイプレスをあきらめて守備ブロックを作ろうとすると、せっかくの攻撃チャンスを逃してしまいます。

その反対に、いつまでもハイプレスにこだわっていたら、かえってピンチになってしまうでしょう。

私が思うに、この点はプロでも判断ミスを起こしやすく、ハイプレス戦術の最も難しい部分だと思います。

ちなみにこうした判断の参考になるのは、2019年現在ではマンチェスターシティ、リバプールFC、アトレティコ・マドリードの守備だと考えています。

そうした意味では、この3つのチームの試合はぜひご覧になった方が良いでしょう。

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さて次はハイプレスを掛ける場合の選手の体力的な問題について解説します。