ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

カーブの蹴り方と練習方法!【実演動画と画像で詳しく解説】

カーブを蹴ってフリーキックを決めるためには、ボールが曲る仕組みをきちんと理解して、正しい蹴り方を覚えましょう。

そこで今回は、1.ボールが曲がる仕組み、2.蹴り方、3.練習方法など、あなたがカーブを蹴れるようになるために知っておくべき全てを詳しく解説します。

※この記事は4つのページに分かれているので、順番に読んでも良いですし、直接それぞれのページを読んでいただいても結構です。

1ページ目(このページに書いてあります)
【ボールが曲がる仕組み】

2ページ目(←クリック!)
【カーブの蹴り方(フリーキック)】
(1)日本人に合った蹴り方
(2)キックフォーム

3ページ目(←クリック!)
(3)横回転と縦回転の蹴り方の違い
(4)ボールと足の当てる場所
(5)助走と軸足

4ページ目(←クリック!)
【練習方法】
【まとめ】

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【ボールが曲がる仕組み】

カーブの蹴り方はかなり難しいので、先ずはボールが曲がる仕組みをきちんと理解しましょう。

そのうえで、今回の記事の後半で解説する正しい蹴り方を覚えてください。

そこで、先ずはボールが曲がる仕組みとして、次の3つを解説します。

(1)ボールが曲がるメカニズム
(2)スイングの仕組み
(3)カーブの弾道とGKの反応

(1)ボールが曲がるメカニズム

①マグナス効果

カーブを蹴った時にボールが曲がるのは、マグナス効果によるもので、これはボールが回転しながら飛ぶ時に左右の気圧が変化するため、気圧の低い方に引っ張られて曲がる…という仕組みです。

そこで、このメカニズムを図で詳しく解説しましょう。

右利きの選手を例にすると、最初はボールに反時計回りの回転が掛かりながら真っ直ぐ飛びます。

その際、ボールの右側と左側では空気の流れの違いによって気圧が変化します。

右側の空気は進行方向に逆らって流れるので、空気が停滞して壁(空気の層)が発生し、流れが遅くなって気圧が高くなります。

その反対に、左側の空気は進行方向とは逆向きに流れるので、流れが速くなって気圧が低くなります。

その結果、気圧の高い方から低い方に向かってボールが引っ張られるように曲がるというわけですね。

またボールのスピードが速いほど、左右の気圧差も大きくなるため、GKの手前で突然曲がるような鋭いカーブになります(鋭く曲がる)。

この場合、昔のカーブは大きく曲がった方が良いと言われましたが、現代は速く鋭く曲げる蹴り方が主流となり、またインパクトの際のパワーも必要です。

詳しくは、(3)カーブの弾道とGKの反応…の箇所で後述します。

こうした原理はインフロントキックでボールを飛ばす仕組みと同じです。

インフロントキックを蹴る時にボールを擦り下げると、下側の気圧が高く、上側は低くなって、気圧差が生じてボールが浮きます。

また、その時のインパクトのパワーが大きいほど、気圧差も大きくなって高く遠くに飛ぶわけです。

ところで昔の蹴り方では、大きく曲げるためにボールの回転数を多くする…という考え方がありました。

たしかに物理学的にはそのとおりなのですが、回転数が多すぎると別の問題が起きます。

そこで、次にボールの回転数について解説します。

②ボールの回転数

カーブを蹴る時は、ボールを擦り上げて回転させる…と言われ、回転数が多いほどよく曲がる…とも思われがちです。

また、アマチュアよりもプロが蹴ったボールの方が回転数が多いのではないか?という疑問もあるでしょう。

この場合、時速100㎞で蹴ったボールの回転数は毎秒7~8回転なので、だいたい3~4m程度曲がります。

そうするとボールの回転数だけをもっと多くすれば、たしかに大きく曲げることは可能です。

ところが回転数を多くすると、ボールのスピードが落ちてしまい、GKにセーブされやすくなります。

こうした現象は、エネルギー保存の法則によって説明出来ます。

例えば、ボールが真っ直ぐ進むエネルギーを8として、回転のエネルギーを2とすると、その合計は10になりますよね。

この時に回転数が多くなって、そのエネルギーが2⇒5程度に増えたとすると、ボールが真っ直ぐ進むエネルギーは8⇒5に減ってしまいます。

なぜならエネルギー保存の法則によって、合計10の数値は変化しないので、この範囲内でエネルギーのやり取りをするからです。

つまり、ボールのスピードと回転数は反比例するので、回転数を多くするとスピードのエネルギーが使われてしまうわけですね。

そうした意味で、ボールの回転数はあまり関係なく、むしろ回転をかけ過ぎない方が良いのです。

それでは、効率的に曲げるためにはどのように蹴れば良いのか?ということで、次に(2)スイングの仕組みについて解説します。

(2)スイングの仕組み

カーブのスイングの仕組みを考えるうえで、フェイスベクトルとスイングベクトルという物理の原理を使います(出来るだけ簡単に説明します)。

ベクトルとは重さや力の「向き」を指します。

フェイスベクトルのフェイスとは、蹴り足の「面(カーブの場合はインフロント)」のことで、蹴り足の面がどの方向に向くのか?という意味になります。

スイングベクトルは蹴り足のスイングの向きを指します。

以上の知識を踏まえて、次にカーブのスイング、横回転と縦回転、擦り上げについて順番に解説します。

①スイングベクトルと蹴り方

次の図は、右利きの選手がインパクトする時の蹴り足とボールの関係を真上から見たものです。

ボールを真っ直ぐ蹴る時(インステップキック、インフロントキック、インサイドキックなど)は、フェイスベクトル(蹴り足の面)とスイングベクトル(蹴る方向)が一致しています。

これに対してカーブを蹴る時は、フェイスベクトル(蹴り足の面=インフロント)をやや内側に向けて、スイングベクトルは真っ直ぐのままとします。

この時、特に注意していただきたいのが、インステップキックのようにボールを真っ直ぐ蹴る場合でも、カーブを蹴る場合でも、スイングベクトルは真っ直ぐ前に向かうということです(真っ直ぐ前に蹴る)。

このようにしてカーブを蹴るとボールが回転しながら真っ直ぐ飛んで、マグナス効果によってボールの左右に気圧差が生じて曲がるというわけですね。

だから、

カーブは真っ直ぐ蹴る!
ボールが曲がるのは気圧の差!

この二つは特に大切なので、ぜひ覚えてください。

②横回転と縦回転

カーブの横回転と縦回転を蹴り分けるためには、ほんの少しだけ工夫が必要です。

フリーキックを蹴る時は、ディフェンスの壁を超える高い弾道が必要なので、横回転も縦回転も斜め上に蹴り上げることが必要です。

その際にご注意いただきたいのが、ボールの中心から何㎝下を蹴れば良いのか?足の角度はどのくらいが良いのか?縦回転と横回転ではどのように蹴り分けるのか?などは、ある程度の目安はあるものの一概に言えないという点です。

その理由は、人によって足の形が違うからです。

インフロントの面が広い人もいれば、狭い人もいるでしょうし、また足の大きさにも関係します。

実はカーブの蹴り方で最も難しい部分がこの点ですが、たくさん練習して自分なりのスイングとインパクトポイントを掴むしかないと思います。

※詳しい蹴り方については、後ほど詳しく解説します。

③擦り上げ

フリーキックでカーブを蹴る時は擦り上げが大切という人が多いですが、これは昔の話です。

いわゆる擦り上げとは、インパクトの瞬間にボールに当たる時の蹴り足の感覚だと思います。

カーブの場合はフェイスベクトル(インフロント)がやや内側で、スイングベクトルは真っ直ぐでしたよね。

その際、インパクトの瞬間からボールの回転が始まるので、蹴り足のインフロント面の2~3㎝程度の範囲で、ボールが回転する感覚が起きます(ボールが擦れる感覚)。

現代では、この感覚が擦り上げと呼ばれているのではないでしょうか?

この場合、昔のボールであれば縫い目があったので擦り上げが比較的簡単でしたが、今は、野球のボールと違って縫い目が隠れているので、この部分を利用するのは無理でしょう(野球のボールに縫い目があるのは、ピッチャーが指を引っ掛けて変化球を投げるから)

いずれにしても、今のカーブはマグナス効果を起こすために、フェイスベクトルとスイングベクトルを意識したうえで、速いインパクトスピードで気圧差を起こして曲げるわけですね。

そうした意味で「擦り上げ」という表現は、現代では紛らわしく、多くの子供たちに勘違いをもたらす原因かも知れません。

ところが、実際の指導現場、書籍、ネットの世界では、カーブを蹴る時は擦り上げる…などと未だに言われています。

そうした意味では、一人でも多くの方がきちんと学ぶべきだと思います。

さて、次は(3)カーブの弾道とGKの反応について解説します。

(3)カーブの弾道とGKの反応

カーブを蹴る時は、弾道の変化によって、ゴールキ―パーがどのように反応するのか?という点を正しく理解しましょう。

次の図は、AとBの二種類の弾道を比較したものです。

Aは3~5mくらい大きく曲がるが、スピードは遅い(ボールの回転数が多い)。

Bは2~3m程度小さく曲がるが、スピードは速い(回転数はやや少なめ)。

そうするとキーパーは次のように判断します。

Aの場合⇒「このままファーサイドに大きく曲がるだろう!」

Bの場合⇒「真っ直ぐ向かって来るが、いつ曲がるのだろう?」

つまりGKがシュートコースを判断するのは、ボールが壁を超えて曲がり始めた時点なのです。

逆の言い方をすると、ボールが曲がり始めない限り真っ直ぐ来ると予測するしかないわけですね。

こうした場合、Aはすでに曲がり始めているのでGKにとっては弾道が分かりやすいです。

ところが、Bのようにいつまでも曲がらないと、GKとしてはそのまま真っ直ぐ来るのではないか?と躊躇します。

そうした時に、いきなり曲がるとキーパーの反応は遅れてしまい、しかもボールが壁を超えた時点のスピードが速ければ速いほど判断に迷うのです。

実は現在のカーブの蹴り方で世界的に主流なのはBの方で、Gkの直前まで真っ直ぐ来てから突然曲がるボールです。

そうした場合、例え1~2mくらいしか曲がらなくてもゴールが決まってしまいます。

ちなみにこうした考え方は、無回転シュートのぶれ球と同じです(ボールが真っ直ぐ向かって来て突然変化するため、GKは反応出来ない)。

あなたがプロの試合を見ていて「この選手のカーブはそれほど曲がらないのに、なぜGKは取れないのだろう?」と感じたことはありませんか?

実は、こうした仕組みに基づいて蹴っているのです。

これに対して、昔はベッカムのような大きく曲がるカーブの方が良いとされた時期もありました。

ところが、この蹴り方をふつうの人が真似すると、エネルギー保存の法則の関係でボールの回転エネルギーを浪費するため、どうしてもスピードが遅くなり、GKにセーブされやすくなるのです。

要するに、いくらベッカムの真似をしても、本人にしかこの蹴り方は出来ないと考えた方が良いでしょう。

そうした点で育成年代の子供たちには、曲がり方はそれほど大きくなくても良いので、GKの判断を迷わせるような速くて鋭いカーブ(真っ直ぐ飛んでいきなり曲がる)を覚えましょう。

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さて、これまで解説したカーブが曲がる仕組みを踏まえて、いよいよ次からは、フリーキックのカーブの蹴り方について詳しく解説します。

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