【ダブルタッチで相手に足を出させる】
(1)イニエスタのダブルタッチ
イニエスタのダブルタッチは、特にフェイントを使っているわけでもないのに、どうして簡単に相手を抜けるのだろう?と思えますよね。
実は彼の抜き方は、ダブルタッチ特有の「ボールをさらす」という動作を逆手に取ったテクニックなのです。
次の画像を見ると、ボールをさらすことで相手に足を出させていますよね。
特に大切なのが、相手が出して来る方の足の前に、ボールをさらすことです(相手の目の前にボールを置く)。
これは何かというと、イニエスタは右利きなので、右足のインサイドを使って、相手の右足の前にボールをスライドさせます。
そうすると相手としては、そのまま右足を出してボールを突こうとしますよね。
そこでイニエスタは、そのタイミングを狙って相手を抜き去ってしまうわけです。
このパターンの抜き方は次の動画でも同じですが、特にニクイのが、わさわざ2回もボールを動かしているところですね。
ここまでやると、まるで相手が足を出すのを待っているようで、まさに駆け引きだと思います。
ただし、この抜き方で注意していただきたいのが、相手との位置関係です。
先ほどは相手が右足を出していたので成功しましたが、もしも左足を少し前に出しているとしたら、どうなるでしょうか?
これでは相手の足が届いて、ボールが奪われてしまいますよね。
それでは、どうしたら良いのかというと、アウトサイドで抜けば良いだけです(利き足側に抜くのなら、別の抜き技でも良い)。
実際にもイニエスタは、相手の右足の前にボールをさらして、そのまま右足を出して来るとダブルタッチを使います(相手が右から来るのと同じ)。
また、相手の左足の前にボールをさらして、そのまま左足を出すとアウトで抜くことが多いです(相手が左から来るのと同じ)。
要するに、ダブルタッチでもアウトで抜くにしても、ボールをさらして相手に足を出させるわけで、実に巧妙な駆け引きですね。
こうしたイニエスタのテクニックは、相手にしてみたら、ダブルタッチで来るのか?アウトで抜いて来るのかが分からないので、全く予測が出来ません。
さらに、ボールをさらす…という動作は、相手にとって「次はどうやって動くのだろう…」と考えるのではなく、「ボールを取りに行きたい…」という心理が先に働いて思考停止になります。
そうすると、イニエスタの次の動きの予測まで頭が働かなくなるのです。
何しろ一瞬のことですからね。
まるで、飼い犬の目の前にエサを置いて、お預けをしているようなもので、犬にとっては目の前のエサのことしか頭にないから他のことは思考停止になるのと同じです。
ちなみに、イニエスタのダブルタッチは他にもいろいろなパターンがあります。
次の動画では、相手がイニエスタの右足を狙って向かって来ましたが、左にかわしています。
これは相手の重心が左足に寄っているので、いくら右足を出してもダメなわけですね。
これは「後出しじゃんけんゲーム」の練習法と同じです。
ドリブルが本当に上手くなる練習方法とは?即効・対人メニュー!
こうして考えると、イニエスタは特に難しいテクニックを使っているわけではなく、相手にボールをさらしてわざと足を出させたり、相手が向かって来たり飛び込んで来たら、逆を突いてかわすだけなのです。
そうした意味では、とてもオーソドックスなテクニックだと思います。
ところで、先ほどの相手に足を出させるという抜き方ですが、どのタイミングでダブルタッチを仕掛けるのか?という点には注意が必要です。
そこで、次にこの点を解説します。
(2)相手の足が出る瞬間を見抜く方法
先ほどのイニエスタの抜き方を私の息子「とも」が実演すると、次のようになります。
ここで注目していただきたいのが、ディフェンダーの足が出る動きを見抜く瞬間ですが、それは動画の0:55からのシーンにある通り相手の膝が動いた時です。
実はヒトの動作特性として、足を動かす時は必ず膝が最初に動きます。
またいったん一つの動作を開始すると、急に止めることは出来ません。
つまり相手の膝が動いたら、ほぼ100%に近い状態で足を出してしまう…ということであって、「車は急に止まれない!」のと同じですね。
でも膝が動くのを見てダブルタッチを仕掛けるというのは、まるで後出しジャンケンと同じやり方です。
たぶん、イニエスタも、こうしたヒトの動作特性を理解しているのでしょう。
さて次は、フェイントを使う(メッシ)ダブルタッチについて解説します。
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