(4)全身を使った強いキック
インステップキックを蹴る時は、全身を使うことで強力なパワーとスピードを発揮するので、ぜひ参考にしてください。
①強いキックが蹴れない例
次の動画をご覧いただくと分かりますが、この方の蹴り方はインパクトの瞬間に左腕が曲がり、上体が立ったままで、バックスイングが小さく、フォロースルーが大きいです。
これは何を意味するのか?というと、足の力だけで蹴っているということです。
せめて左腕を水平くらいにまで伸ばして上体を反らせば、大胸筋や腹斜筋の伸縮と背骨のバネ作用を使った強いインステップキックが蹴れるはずです。
この場合、ヒトの体重比は6対4で上半身の方が重たいため、上半身を使わないで足の力だけで蹴ると、上半身が単なる重り(重たい荷物のようになる)のようになってしまいます。
そのため、フルパワーで蹴っているつもりでも、上半身の重さと言うハンデを抱えているので、インパクトのパワーとスピードを十分に引き出せません。
その一方で、バックスイングが小さく、フォロースルーが大きいのは、やはりインパクトのパワーとスピードを損しています。
なぜなら、バックスイングの大きさ(蹴り足の振り幅)は、蹴り足の遠心力の大きさに比例するからです。
また、キックの遠心力はインパクトのパワーとスピードに影響するので、バックスイングが小さいと、強いボールが蹴れなくなります。
だから、動画の実演者は、パワーとスピード補おうとしてフォロースルーを大きくしているのでしょう。
でも、この蹴り方はおかしなもので、フォロースルーを大きくすると、今度はインパクトでバランスを崩す(蹴り終えた後に体が少しぐら付いている)ため、ボールコントロールが安定しません。
そうした意味では、改善点の多い蹴り方だと思います。
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②全身を使った強いキックとは
大切な4つの点
サッカーのキックは全身運動なので、強いキックを蹴るためには全身のパワーを引き出す必要があります。
特に大切な点は、次の四つです。
A.筋肉の伸張反射
B.上半身のバネ作用
C.足の重さと遠心力
D.二軸キック
この場合、小学生年代の子供は非力なので、サッカーに限らず、ほぼすべてのスポーツで、無意識のうちに全身を使ったプレーをしようとします。
そうすると必要最低限のテクニックだけ教えて、ある程度放任していたとしても、例えば全身を使った強いキックの蹴り方であれば、子供なりに覚えてしまうはずです。
ところが日本の育成指導の現場では、「こうあるべき!」という型にはまった指導をするので、例え、それが間違っていたとしても、従順な子供たちは指導者の教えを守ろうとしてしまうのでしょう。
その結果、サッカーであれば「足だけを使う…」という、間違った教えを受け入れて成長したのが、今の日本のプロたちではないでしょうか?
実は、先ほどの、①筋肉の伸張反射、②上半身のバネ作用、③足の重さと遠心力、④二軸キックなどは、スポーツ科学的に考えても正しい理論なので、指導者たちはきちんと勉強するべきだと思います。
そうした意味では、私がわざわざこうした内容を記事に書かなくても、正しい理論に基づいた指導が全国に普及するよう願うばかりです。
さて、それでは次に4つの点を順に解説して行きましょう。
A.筋肉の伸張反射
筋肉の伸張反射とは、筋肉がゴムのように伸び縮みする動きを利用した反射運動です。
この動きは反射神経と同じで、例えば目に異物が入った時に直ぐに目を閉じる…というのと同じ原理なので、とても速い反応で筋肉が動きます。
またインステップキックを蹴る時のバックスイングでは、上腕筋、大胸筋、腹斜筋、腸腰筋、大腿四頭筋などをゴムのように伸ばすと、フォロースルーまでの間に急激に縮みます。
つまり、このような筋肉の伸び縮みの反射作用を使うことで、インパクトスピードが格段に上がって強いインステップキックを蹴れるのです。
特にバックスイングを大きくする(筋肉を伸ばす)ことで、これに比例して筋肉が縮む時の反射作用が大きくなります。
また、サッカーのような動的スポーツでの筋肉の使い方は、力を入れてパワーを発揮するのではなく、筋肉の伸び縮みという反射作用を使って、パワーを最大限に引き出すのが正しい考え方です。
たぶん多くの方は、筋肉に力を入れないとパワーを発揮できない…というように勘違いしていると思いますが、筋肉に力を入れてパワーを出すのはウェイトリフティングなどの一部の競技に限られています。
こうした点は、ぜひご注意ください。
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B.上半身のバネ作用
上半身のバネ作用は、サッカーのいろいろなテクニックで効果的に使えます。
特に、インステップキックを蹴る時は、バックスイングでの身体を反らす姿勢から、フォロースルーでの元に戻す動きの中で、強力な背骨のバネ作用が働きます(背骨が板バネのように作用する)。
バックスイングでは体を弓なりに反らし(背骨のバネを反らす)、フォロースルーでは反らした背骨のバネが急激に巻き戻されています。
このようにバックスイングを大きくすると、上半身のバネ作用に加えて、先ほど解説した筋肉の伸張反射との相互作用により、インパクトのパワーがさらにアップするわけです。
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C.足の重さと遠心力を使う
インステップキックで足の重さと遠心力を使うと、スピードとパワーがさらにアップします。
足の重さを使うという意味は、ヒトの片足あたりの重さが体重の約18%なので、体重が70㎏のヒトの場合は約12㎏の足の重さをハンマー投げのように使うということです。
また遠心力を使うという意味は、足の縦回転の遠心力を利用して強力なパワーを生み出すことです。
こうした場合、意外と思われるかも知れませんが、リラックスして軽く蹴った方が足の重さと遠心力を効果的に使えます。
練習すれば簡単に身に付くので、ぜひ覚えてください。
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D.二軸キック
次の動画は、中心軸動作と二軸動作の蹴り方を比較したものです。
インステップキックの二軸動作とは、インパクトからフォロースルーにかけて、軸足→蹴り足へと軸を切り替えることです。
この動作は、蹴り足を意識すれば誰でもこうした蹴り方が出来ますが、二軸動作のメリットは、軸足に乗ったパワーを100とした場合、蹴り足に100を漏れなく伝えられるという点です。
これに対して中心軸動作のメリットは、軸足が安定するのでボールコントロールが良くなるという点です。
なお、二軸で蹴るとパワーアップするという考えがありますが、これは間違いで、例えば元々のパワーが50しかない場合は、50しか伝えることが出来ません。
つまり、二軸のキックは、軸足が強くなって初めて意味があるわけですね。
なお、二軸動作と中心軸動作はどちらが良いのか?というと、必ずしもそのように決める必要はなく、どちらかといえば局面に応じた使い分けが必要です。
例えば、フリーの状況で全身のパワーを使って蹴れる場合は二軸で蹴った方が良いですし、その反対にシュートコースが狭く、ピンポイントでコントロールする時は中心軸動作で蹴るなど、使い分けを考えると良いでしょう。
以上が、全身を使った強いインステップキックの蹴り方です。
これを踏まえて、次に初心者でも出来る簡単な練習方法を紹介します。
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