私が30年前に過ごした、ブラジル・サンパウロの子供たちのボールの蹴り方は、とにかくいろいろでした。
当時の私がヘッドコーチからよく言われたのは「狙ったところにボールを蹴れるのなら、どのようなフォームでも良い。」「ボールの蹴り方には正解はない。」というものです。
でも日本では「こうしなければならない!」「こうあるべき!」というように、型にはまった指導が多いですよね。
そもそも子供の足の形は全員が全く同じではありませんし、体型も違うのでボールの蹴り方も違って良いはずです。
だから、どのような蹴り方をしても構わない…と考えるべきではないしょうか?
そこで、今回はボールの蹴り方に対するブラジルと日本の指導の違いを解説します。
※この記事は3つのページに分かれているので、順番に読んでも良いですし、直接それぞれのページを読んでいただいても結構です。
1ページ目(このページに書いてあります)
【ボールの蹴り方に対する指導の違い】
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【シュートとパスの蹴り方の違い】
3ページ目(←クリック!)
【ブラジルの教えを受け継いだ蹴り方】
【まとめ】
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【ボールの蹴り方に対する指導の違い】
(1)日本とブラジルの蹴り方の指導の違い
日本のボールの蹴り方の指導は、「こういうふうにしなさい!」という型にはまった考えが先に来ます。
そうすると子供たちは教えられたことを忠実に守ろうとするのです。
また少しでも違っていると、すぐに矯正されることも多いですね。
これは、キックの技術を個別に切り取ったような指導と言えるでしょう。
そうした場合、ほとんどの子供は「切っても切っても金太郎飴」というように、同じような蹴り方しか出来なくなるのです。
たしかに、指導という点では失敗が少ないですが、これでは個性的な選手は育ち難いと思います。
つまり日本の指導は「蹴り方」という形を重視するので、試合で使えるかどうかという多様性のあるキックが出来ないわけですね。
これに対してブラジルの指導は、よほどおかしな蹴り方をしない限り、あまり細かいことには口を出しません。
私がサンパウロにいた当時のコーチたちが最も大切にしたのは、パスでもシュートでも、試合できちんと使えるか?どうか?でした。
そんな時に私がアシスタントコーチとして、子供たちにいろいろと教えようとすると「ダメダメ!放っておけ!」とよく叱られたものです。
つまりブラジルの指導は、試合で使えるのか?どうか?という点を重視するわけです。
これに対して日本では、あくまでも蹴り方の技術指導だけでしかありません。
要するに、日本とブラジルの指導を比べると、キックの技術指導なのか?試合で使えるのか?という違いがあるのです。
(2)つま先を使った蹴り方
子供がサッカーを始めた時は、誰でも「つま先」を使ってボールを蹴っていたはずです。
ところが、日本ではどこの少年団でもクラブチームでも、「つま先ではダメだ!」と言われて、最初に覚えるのがインサイドキックになります。
そうなると、つま先を使った蹴り方は矯正されてしまうわけですね。
たしかにインサイドキックは、現代のパスサッカーにとって大切なテクニックですが、つま先を使うのもトーキックと言って大切な技術です。
しかも、この蹴り方を矯正するのは、子供たちがトーキックを使わなくなることを意味するのです。
これに対してブラジルの指導は、つま先を使うことは否定しません。
だから、トーキックは一つのテクニックとして尊重し、そのうえで新たにインサイドキックを指導します。
そうすると、子供たちはトーキックとインサイドキックの2つのテクニックを試合で併用して使うようになるわけですね。
実際にもブラジル代表のオスカルは、トーキックのシュートを得意としますし、元代表のロナウドも良く使いましたね。
こうした点は、子供のころからの指導によるものなのでしょう。
要するに日本ではトーキックを否定しますが、ブラジルではテクニックの一つとして使うことを前提に指導するという違いがあるのです。
さて次は、キックで足首を固定すること、軸足の踏込みについて解説します。
(3)キックで足首を固定する蹴り方
日本ではインサイドキックやインステップキックなど、ほぼすべての蹴り方で「足首を固定する!」という指導があります。
ところが、ブラジルではこのような指導はありません。
その理由は、子供たちの足首がとても強いので固定する必要がないからです。
この場合、日本ではブラジルの子供たちのように裸足で過ごす習慣がほとんどないため、偏平足になりやすく、足底筋膜や足指のグリップ力も発達しないので、その影響が足首の弱さになって表れます。
そうした状態で足首を固定してボールを蹴るのは、足首のじん帯に過度な緊張状態を及ぼすため、インパンクトの衝撃をまともに受けることになるのです(捻挫の原因)。
もっと分かりやすく言うと、ウエィトリフティングの選手が100㎏以上のバーベルを持ち上げられるのは、筋トレをしているからであって、何もしていない人だったら30㎏を持ち上げるのも大変だと思います。
それでも、ふつうの人が100㎏に挑戦したら、ケガをするはずです。
つまり、日本の子供たちが、キックで足首を固定する…という指導は、これと全く同じことをしているわけですね。
たぶん、ほとんどのサッカー少年は、口に出さなかったとしてしても何らかの形で足首の痛みを抱えているはずで、その原因は明らかだと思います。
最も大切なことは、足首を固定する…ではなく、まず最初に足首を鍛えるのが先ではないでしょうか?
その一方で、足首を固定すると足首周りの筋肉が過度に緊張し、膝や股関節にも影響が出てしまうので筋肉の伸張反射が活かせなくなります。
これに対して、ブラジルでは足首を柔軟に使うようなボールの蹴り方を教えるので、カーブやアウトフロントなどの変化球のキックが上手くなるのです。
例えば、ロベルトカルロスのアウトフロントキックは有名ですよね。
でも日本人は、なかなかこの蹴り方を覚えられません。
その理由も、足首の固定にあるのです。
そもそも足首を柔軟に使うためには、足首の強さが必要であって、それでも真似をしようとしたら捻挫するだけだと思います。
ちなみに私は、息子の「とも」に足首を固定するよう教えたことがありません。
その理由は、幼児期に足首を強化して、ブラジルの子供並みま強さになったからです。
次の動画はロべカルと同じアウトフロントキックの様子ですが、本人も足首の固定はあまり意識していないようです。
またカーブを蹴る時も同じく意識していません。
いずれにしても、キックで足首を固定するのは後回しにして、まず最初に足首を鍛えてブラジルの子供と同じくらいに強くするべきです。
そのうえで、足首を柔軟に使った蹴り方を指導するべきでしょう。
そうすれば、キックの時に足首を固定することまでいちいち指導する必要はなくなりますし、むしろその方がカーブやアウトフロントなど、多彩な蹴り方を覚えるわけですね。
(4)軸足の踏込み
日本の指導は、キックの種類によって軸足の位置を変えさせることが多いようです。
例えばインステップキックなどで低い弾道のボールを蹴る時は、軸足のつま先をボールの少し前に置き、高い弾道のボールは軸足を少し下げるように教えます。
そうすると、相手から見ると軸足の置く位置で球筋が分かってしまいます。
また、軸足は必ず蹴る方向に向けるという指導もあります(カーブやアウトフロントは少し違う)よね。
そうすると、例えばインサイドキックでは相手にパスコースが分かってしまうのです。
これに対してブラジルの指導は、しっかり踏み込むのであれば自分が蹴りやすい場所に軸足を置けば良く、あとは次の二つのことを繰り返して教えるだけです。
① パスの時は味方に正確に蹴る。
② シュートの時はゴールの枠に向って蹴る。
そうすると子供たちはほとんどのキックで、軸足を同じ場所に置くようになりますし、軸足を蹴る方向に向けたり向けなかったり、その時々でいろいろと変えたりします。
さらに蹴り足だけでボールコントロールするようになるので、同じキックフォームで弾道の高低やストレート、カーブ、アウト回転などのボールを蹴り分ける技術を自然と覚えてしまうのです。
キックの蹴り分けの意味と正しい使い方とは?
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こうした日本とブラジルの違いは、試合中のシュートやパスにも特徴が見られます。
そこで次は、シュートとパスの蹴り方の違いについて解説します。
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