ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

サッカーのキック力をつける練習法!全身を使う蹴り方とは?

「あの選手はなぜあんなにキック力があるのだろう…」なんて、うらやましく思ったことはありませんか?

実はそうした選手には、ある秘密が隠されているのです。

そこで今回はキック力の科学的な仕組み、私の息子が実際にトレーニングした練習法と成果について詳しく解説します。

スポンサーリンク

目次

1.キック力の仕組みを理解する

(1)本当に目指すべき蹴り方とは?

スポーツ科学では、どのような競技でも、自分のパワーとスピードを最大限に引き出す!という全身運動の考え方が常識とされています。

そのため、サッカーのキックにおいても、全身運動によってパワー(筋力)とスピード(スイングスピード)を生み出す!と考えましょう。

つまり、パワー×スピード=キック力というわけですね。

そこで、育成年代の子供たちがキック力をアップするためには、まず最初に全身を使った蹴り方を覚えてください。

その次に、キックフォームの細かい点を微調整すれば良いのです。

これに対してネットや書籍等の情報では、キック力をアップする方法がいろいろと載っているので、果たして何が本当に正しいのか?と迷っている方は多いでしょう。

例えば、足首の固定、勢いよく助走、膝から下を強く振る、フォロースルーを大きく、蹴った後に上体をかぶせる、あごを引く、筋トレ、などというものですね。

ところが、こうしたテクニックは単なるキックフォームの微調整でしかないので、例えば飛距離を2~3m程度アップするくらいの効果しかありません。

つまり、子供たちにとっては覚えるべき順番が逆であって、「木を見て森を見ず」でしかないのです。

本当に目指すべきことは、例えば、今まで10m程度しか蹴れなかった子供が、20~30mまで蹴れるようなスキルを覚えることではないでしょうか?

でも、そうしたスキルを身に付けるためには、いろいろな練習が必要なのでたくさんの時間が必要だと思います。

また、こうした考え方は一見して遠回りのように思えますが、そもそもキック力をアップするための即効性のある方法は、この世に存在しません。

だから多少時間がかかったとしても、先ずは全身を使った蹴り方を覚えるべきなのです。

そこで、全身を使った蹴り方を正しく覚えるために、先ずはキックの科学的な仕組みや全身運動の考え方をきちんと理解しましょう。

そのうえで、私の息子「とも」が実際にトレーニングした練習法とその成果を参考にしてください。

そうすることが、キック力をアップするための最短最速の近道なのです。

(2)キックのパワーとスピードの仕組み

① インパクトとパワー

サッカーのキックとは、地面にあるボールを水平に叩く(インパクト)ことです。

また、ボールを強く遠くに飛ばすためには、インパクトのパワーを最大にするのが重要で、これはボレーシュートのように浮いたボールを蹴る時でも変わりません。

この仕組みは、かなづちで釘を水平に叩くのと同じで、サッカーのキックに見立てれば、かなづちが蹴り足、釘がボール、抑える手が軸足になるわけですね。

また、かなづちのインパクトを強くするのであれば、大ハンマーを使って叩くのが効果的です。

これをサッカーのキック力に見立てると、足の重さを利用したり筋力を付けて…強く遠くに蹴るということになります。

でも、これだけではインパクトは最大にはならないため、キック力はアップしません。

なぜなら、もう一つの要素としてのスピードが必要になるからです。

そこで、そのために利用するのが次に解説する遠心力です。

② 遠心力とスピード

サッカーのキックは遠心力を使ってスイングをしますが、その時のバックスイングからインパクトまでが縦回転で、フォロースルーからフィニッシュまでは横回転になります。

その際、ボールを叩くという点で、スピードを最大化させるためには、バックスイングからインパクトまでの縦回転の遠心力をいかに大きく速くするのかが課題です。

またフォロースルーからフィニッシュまでの横回転は、インパクトの反動でしかないので、フォロースルーを大きくしてもあまり意味はありません。

むしろ大切なことは、縦回転の大きな遠心力を軸足(片足)と体幹できちんと支えることが出来るのかどうか?ということです。

この仕組みは風車と同じで、羽根の縦回転の遠心力を支えるためには、強力な軸が必要になるのと同じことですね。

ちなみにサッカーのキックとよく似た動作特性として、ゴルフのスイングがありますが、これも縦回転の遠心力をいかに大きく速くするのかが重要です。

これによってヘッドスピードが上がり、ボールが遠くに飛ぶわけですね。

この場合、ゴルフのスイングが、サッカーのキックと比べて大きく違うのは、縦回転の遠心力を両足で支えているということです。

だから非力な女性でも軸が安定するので、ボールを遠くに飛ばせるわけですね。

これに対してサッカーのキックは、縦回転の大きな遠心力を片足(軸足)だけで支えるため、軸足と体幹の強化が必要になるのです(軸足強化の練習法は後述します)。

以上ですが、キックの基本の仕組みとしてインパクトを強くするためには、次の二つの点が重要です。

(1)パワーを生み出すのは、足の重さや筋力。
(2)スピードを引き出すためには、縦回転の遠心力を大きく速くする。

さて、以上の基本の仕組みを踏まえて、さらにキックのパワーとスピードを最大化させるため、次に全身を使った蹴り方の仕組みを解説します。

2.全身を使った蹴り方とは?

(1)全身を使う意味

サッカーのキックで、パワーを生み出すのは足の重さや筋力で、スピードを引き出すのは縦回転の遠心力でしたよね。

この場合、足の重さや筋力は、子供の成長によって徐々に発達するので、小学生や中学生がいくら筋トレをしても、すぐに効果が出るわけではありません。

だから、そうしたパワーに頼るのではなく、むしろ現在の自分の能力を基に、縦回転の遠心力をいかに大きく速くしてスイングスピードをアップさせるのか?という蹴り方を考えましょう。

その方がムダな時間と努力をしなくて済みます。

ちなみに、先ほどゴルフのスイングの例で「縦回転の遠心力を大きく速くすることで、ヘッドスピードが上がってボールが遠くに飛ぶ…」と解説しましたよね。

そこで、サッカーのキックのスイングスピードをアップする方法について、ゴルフのスイングを例にしながら考えてみましょう(サッカーの例は後述します)。

この場合、ゴルフの上手い人は遠心力を大きく速く(ヘッドスピードを上げる)するために、全身を使ってボールを飛ばしますが、こうした考え方は男子でも女子も同じです。

でも、ここで一つの疑問が出て来ませんか?

それは、なぜ非力な女子が遠くに飛ばせるのか?ということです。

実は、この点がサッカーのキック力アップのヒントになるのです。

次の動画は「なぜ腕力のあるおじさんは、女子プロよりも飛ばないのか?」というものです。特に、1:03からの解説は、サッカーのキック力を付けるための大きなヒントになります。

この動画では「女子プロとおじさんは体の柔軟性が違う…、女子プロはバックスイングの時に正面から背中が見えるくらいに大きくひねる…」と言っています。

これに対して、おじさんは体が硬いので、バックスイングが小さくなって背中が見えないそうです(遠心力が小さくなってスイングスピードが遅くなる)。

また、おじさんはスイングスピードを挽回するために、腕の力だけで打とうとする…と解説しています。

つまり、おじさんは腕のパワーに頼ろうとしますが、女子プロはバックスイングを大きくすることで、全身を使ったショットをしているのです(遠心力が大きくなってスイングスピードが速くなる)。

そうすると、この考え方をサッカーのキック力に応用すれば、足の力に頼ってはダメで、全身を使ってスイングスピードを上げるのが重要…というわけですね。

これを別な言い方をすると、サッカーは足の力だけで蹴っていてはダメということです!

また、この考え方はプロのサッカー選手でも、女子でも子供でも変わりません。

そこで、次に一般男性よりも非力な子供と女性のキックの例を考えてみましょう。

(2)子供と女性の例

サッカーのキックで、全身を使ってスイングしているかどうかは、バックスイングの大きさと上半身の使い方を見るとよく分かります。

① 子供の例

次の画像は、私の息子「とも」が小1の頃のインステップキックを蹴っている時の様子ですが、軸足から踏み切って、バックスイングが大きいですよね。

また、左腕を水平に伸ばしていますが、これは背骨のバネ作用と筋肉の伸張反射を使ってスイングスピードを速くしているためです(詳細は練習法の箇所で後述します)。つまり全身を使って蹴っているわけですね。

私は30年前にブラジル・サンパウロのサッカークラブでジュニアとジュニアユースのアシスタントコーチをしていましたが、当時の子供たちへの指導は自由放任でした。

その狙いは、全身を使った蹴り方を自然に覚えさせるためです。

そのため、息子の「とも」に対しても、ここをこうして…、ああして…というような細かい教え方は一切せず、自由に蹴らせていたら自然と全身を使った蹴り方を覚えたのです。

ところが日本では、子供がクラブチームや少年団に入ると、コーチたちから「こうあるべき」というように蹴り方を矯正されてしまいます。

しかも日本のサッカーは、先ほどのおじさんゴルファーが腕の力に頼ってスイングするのと同じように、足の力を使った蹴り方を指導するので、一時的には遠くに飛ばせたとしても、それだけではやがて限界が来るのです。

そもそも子供は非力なので、どのようなスポーツでも、ふつうなら自然と全身を使ってパワーとスピードを出そうとします。

でも、結局は矯正されて、足だけを使うようになってしまうわけですね。

むしろそうではなく、よほど変な蹴り方をしない限り、子供には自由に蹴らせて、先ずは全身を使うキックを覚えさせるべきではないかと思います。

また、そうしたキックを覚えた後で、微調整として細かい点をアドバイスをする…というのが最適です。

そうすることによって、本当の意味でキック力のアップに結び付くのではないでしょうか?

そうした意味では、なでしこジャパンの次の二人の蹴り方は対照的です。

② 女子の例

女子の場合は子供と同じように、やはり非力なので、ふつうは全身を使ったキックになるのですが、宮間選手と田中選手は相反する蹴り方をしています。

A.宮間あや

宮間選手は、小柄でそれほどパワーもないため、バックスイングが大きく、全身を使った蹴り方をしています。とてもリラックした蹴り方で、スイングスピードも速いですね。

先ほどの「とも」の蹴り方と比べると撮影アングルが違うので、少し分かりにくいですが、全身を使うという点は変わりません。

ちなみに、彼女の蹴り方はFCバルセロナのメッシのキックフォームとほぼ同じです。

メッシは身長169㎝と小柄ながら、全身を使ってキックするのでプロの中でもトップクラスのスピードです。

そうした意味では、メッシも宮間選手も全身を使った教科書的なキックと言っても良いでしょう。

B.田中陽子

田中選手は左右でフリーキックを蹴りますが、両方のバックスイングを比べると興味深いことが分かります。

右足で蹴る時はバックスイングが小さく、左腕が曲がっているので、どちらかと言えば足の力に頼った蹴り方をしています。

これに対して左足で蹴る時は、バックスイングが大きく、右腕が大きく伸びているので宮間選手の蹴り方と同じように全身を使っているようです。

たぶんこの違いは、彼女が元々右利きで、左足で蹴る時はパワー不足(筋力の問題)のため、無意識のうちに全身を使った蹴り方をしているのでしょう。

そうした意味では、右足で蹴る時も、全身を使った蹴り方に変えれば、もっとキック力がアップすると思います。

ちなみに彼女は小学校を卒業した後に、JFAアカデミー福島(日本サッカー協会が運営する中高一貫教育)に入学したそうですが、その際に典型的な日本の蹴り方を覚えてしまったのかも知れません。

3.キックの仕組みと全身運動のまとめ

今回の記事は専門的でかなり分かり難かったので、これまで解説したキックの仕組みと全身を使った蹴り方をいったんまとめておきましょう。

(1)先ず、育成年代の子供たちがキック力をアップするためには、

① 最初に全身を使った蹴り方を覚える。
② 次に、キックフォームの細かい点を微調整すれば良い。

(2)キックの基本の仕組みとしては、

① パワーを生み出すのは、足の重さや筋力。
② スピードを引き出すのは、縦回転の遠心力。

したがって、パワー×スピード=キック力になるわけです。

(3)全身を使った蹴り方とは、

縦回転の遠心力を大きく速くして、スイングスピードをアップさせること。

さて次は、これまで解説した内容を踏まえて、いよいよキック力をアップするための練習法について解説します。

4.キック力をアップする練習法

次の練習法は、私が「とも」に教えたメニューですが、実際に効果が出たものです。

特に、縦回転の遠心力をいかに大きく速くしてスイングスピードをアップさせるのか?そのためにはどのように全身を使うのか?という点を大切にしています。

この練習を大きく三つに分けると「(1)スイングスピードを速くする」「(2)筋トレ」「(3)ストレッチ」になりますが、この三つを並行して練習すれば、子供の成長に応じてキック力がアップするはずです。

また、一つ一つのメニューには「練習方法」「練習の目的」「注意点」などを詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

(1)スイングスピードを速くする

この練習メニューはステップアップ方式なので、①~④まで順番に練習するようにしてください。

またこの練習に慣れて来たら、練習頻度を少なくしても構いません。

① 足の重さと遠心力を使う

A.練習方法

先ずは正しいスイングの感覚を覚えるため、股関節から足全体を脱力して振り子のように素振りをしながら、足の重さと遠心力を体感しましょう。

コツとしては、足全体をハンマー投げの重りのようなイメージで素振りすることです。

また、足首に軽いウエイト(濡れた手ぬぐいでも良い)を巻くと感覚が掴みやすいと思います。

B.足の重さと遠心力を使うとは?

足の重さを使うとは、ヒトの片足あたりの重さが体重の約18%なので、例えば体重60㎏の人であれば約10㎏分をハンマーの重りのように利用して叩くという意味です。

また、遠心力とは足の縦回転のスイングでしたよね。

足の重さと遠心力を使う感覚に慣れると、むしろ力を入れない方が楽に蹴れるようになりますが、その理由は筋肉の伸張反射と関係します(詳細は後述します)。

ちなみに日本では、膝から下を強く!速く!振るように指導されますが、これはじん帯の負担が大きく、ケガの原因になりやすいので注意してください。

足の重さと遠心力を使うための練習法をもっと詳しくお知りになりたい方は、次の記事をお読みください。

② バックスイングを大きくする

A.練習方法

次にスイングの遠心力アップのため、バックスイングを大きくしましょう。

コツとしては、助走の時に、全身をリラックス(筋肉の伸張反射を使うため)しながら、蹴る直前の一歩を大きくすることです。

蹴り足から踏み切って、幅跳びのように高くジャンプしながら、蹴り足のカカトがお尻に当たるくらいまでの大きなバックスイングを意識して、ボールの横に軸足を着地させてください。

その場合、助走は必ず一歩にしてください。

B.注意点

この練習はあくまでもバックスイングを大きくするのが目的なので、正確にボールが蹴れるかどうかは関係ありません。バックスイングの大きさだけを意識してください。

また、時々ビデオで撮影して、自分のフォームが正しいのかどうかもチェックすると良いでしょう。

③ キックの素振り

A.練習方法

①と②の練習に慣れたら、次の動画のようにインステップキックとインフロントキックの素振りをしてください。

この練習の時も、全身をリラックスして、「①足の重さと遠心力」を体感しつつ、「②バックスイングを大きくする」ことを意識してください。

そうすることで、全身を使ったキックの感覚が身に付きます。

インステップキックの場合は、ボールを押し出すようなイメージでスイングしてください。

※インステップキックの素振りのフォームは無回転シュートのスイングとほぼ同じなので、そのまま無回転シュートの練習にも利用できます。

インフロントキックの場合は、上から下に蹴るイメージでダウンスイングをしてください。

B.注意点

先ほど、ゴルフスイングの例を解説しましたが、非力な女子プロの選手たちは、アマチュア時代から素振りの練習をたくさんしてスイングスピードを速くしています(ボールを打ってスイングスピードを上げたわけではない)。

だから、いくらボールを蹴っても、それだけではキック力はアップしないわけですね。

これは足を速くするためには、走れば走るほど速くなるという誤った考え方と同じなので注意しましょう(正しい走り方を覚えないと速くならない)。

インステップキックやインフロントキックが上手く蹴れない方は、次の記事を読んで正しい蹴り方を覚えてください。
関連記事
インステップキックの蹴り方と練習法!強いシュートの打ち方とは?
インフロントキックの正しい蹴リ方と練習法!【動画解説付き】

④ 筋肉の伸張反射と体のバネ作用

①~③までの練習に慣れたら、次はスイングスピードを飛躍的にアップさせるため、筋肉の伸張反射と体のバネ作用を覚えましょう。

こうした作用は生まれ付き全てのヒトに備わっている身体能力なので、練習によって誰でも使いこなせるようになります。

ところが、日本ではこうした指導はほとんどなく、足の力に頼った蹴り方を教えますよね。

でも、そうではなく上半身も含めた全身を使えるようにしないとキック力はアップしません(全身を使った蹴り方に活かす)。

また、「とも」のキック力がアップした最大の要因は、後述の「ちょんちょんリフティング」と並んで、筋肉の伸張反射と体のバネ作用が覚醒したからです。ぜひ参考にしてください。

A.筋肉の伸張反射とは?

筋肉の伸張反射とは、バックスイング~フォロースルーにかけて筋肉をゴムのように伸び縮みさせる反射運動です。

これは筋肉の伸張(伸びる)と収縮(縮む)という、全身運動になります。

この作用は熱いものを触った時にすぐに手を離す…という通常の反射神経と同じで、とても素早く反応します。

B.体のバネ作用とは?

体のバネ作用とは、バックスイング~フォロースルーにかけて背骨のS字カーブを板バネのように伸び縮みさせる作用(バネの変形と復元)です。

この作用も練習することで、筋肉の伸張反射と同様に素早く使えるようになります。

筋肉の伸張反射と体のバネ作用は、とても密接な関係があります。

バックスイングの時は、筋肉の伸張反射として、体の前側の筋肉が急激に伸ばされます。また体のバネ作用としては、背骨のS字カーブが急激に伸ばされます。

これに対して、インパクト~フォロースルーにかけては、伸ばした筋肉と背骨のS字カーブが合わせて縮もうとします。

つまり、両方の伸び縮みの作用が同時に働いて、強力なスイングスピードを発揮するわけですね。

C.練習方法

筋肉の伸張反射と体のバネ作用を身に付ける練習法は、一本歯下駄トレーニングが最適です。

なお、一本歯下駄をお持ちでない方は、次の動画の動きを真似するだけでも良いので、ぜひ練習してみてください。

さて次は、(2)筋トレの練習メニューについて解説します。

(2)筋トレ

この練習メニューは筋トレとは言っても、腕立て伏せや腹筋のような苦しくて辛いメニューではなく、小学校低学年でも出来る簡単なトレーニングです。

その狙いは、全身の筋肉を使えるようにするということです。

例えば足の筋肉は、誰でも太ももの前側(大腿四頭筋)を使おうとしますが、それだけではなく後ろ側(ハムストリングス)も使えるようにする…という意図があり、これによって全身を使った蹴り方に活きるわけですね。

もちろん、その他にも使っていない筋肉を使えるようにする…という狙いもあります。

なお、このトレーニングをする時は、必ず鍛える部位を意識してください。

その理由は、「筋トレをする時は、その部位に意識を向けるだけでトレーニング効果が高くなる…」という、2006年発表の英国心理学会会議の研究報告に基づいているからです。この理論は、各種スポーツジムの指導マニュアルとしても普及しているので、ぜひ参考にしてください。

① ハムストリングスの強化

A.練習の目的

ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)の役割は、キックのバックスイングの時に、ハムストリングスが縮むことによって(力を入れて縮める)、膝を曲げて股関節を伸ばすというものです。

この場合、ハムストリングスを強化する狙いは次の二つです。

一つ目は、ハムストリングスが発達すると縮むスピードが速くなり、これに合わせて膝を曲げて股関節を伸ばす動作も素早くなるため、バックスイングが大きく速くなります。

二つ目は、ハムストリングスを素早く縮められるようになるので、同時に大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)を急激に伸ばすことが出来ます。そうすると筋肉の伸張反射がスピーディーに反応するので、これに応じてスイングスピードも速くなるのです。

B.注意点

日本では、大腿四頭筋の方を鍛えようとしますが、そもそもこの筋肉には、バックスイングの時のように素早く膝を曲げたり股関節を伸ばしたりという機能はありません。

そもそも大腿四頭筋は、ヒトが日常生活で立ったり歩いたりする時によく使う抗重力筋(立った姿勢を維持するための筋肉)なので、放っておいても発達します。

その反対に、日常生活では素早く膝を曲げたり股関節を伸ばしたりという動作はほとんどないので、ハムストリングスはあまり発達しません。

そのため大腿四頭筋を鍛え過ぎると、太ももの前後の筋肉がアンバランスになります。

そうした状態でハムストリングを急激に伸ばすなどの刺激が加わると、かえって肉離れを起こしやすくなるので注意してください。

C.練習方法

練習法としては、サッカーのドリブルの時や歩いたり走ったりする時に、次の姿勢を保つように意識付けしてください。

・軽くヒザを曲げて腰を落とす。
・足の指でグリップする(カカトは上げない)。
・背骨、背筋、お尻、ハムストリングス、ふくらはぎの部位を意識する。

このトレーニングは、姿勢の悪い子に「背筋を伸ばしなさい!」と注意するのと同じで、筋肉に自然な緊張状態を作り出して、筋トレと同様の効果を得るのが狙いです。

ちなみに、2016年に発表されたデンマーク国立労働環境研究センターとオールボー大学などの研究チームの「プログレッシブレジスタンストレーニング中の意識と筋肉のつながりの重要性」という研究結果によれば、筋トレの際に筋肉の部位を意識すると高い効果が得られたそうです。

また2018年に発表されたアメリカ・ノースウェスタン大学とアリゾナ州立大学などの研究チームの「長期レジスタンストレーニング中の意識集中による異なる効果」という研究結果によっても、同じような効果が得られています。

これは現在の筋トレの理論で一般化した、いわゆるマインドマッスルコネクション(MMC)と同じ意味にもなります。

つまり、この姿勢を意識して習慣化するだけで、ハムストリングス、ふくらはぎ、背筋、お尻の筋肉が、いつの間にか強化出来るというわけですね。

また、ふくらはぎ、背筋、お尻の筋肉も強化する理由は、これらの筋肉がハムストリングスと連動するからです。

そうした意味では、体の後ろの筋肉をすべて鍛えるようにしましょう。

② 骨盤前傾トレーニング

A.練習の目的

骨盤前傾になるとハムストリングスが緊張状態になり、日常生活の中で自然に発達するため、キックのスイングを大きく速くすることが出来ます。

また、背骨のS字カーブも発達するので、先ほど解説した体のバネ作用も使えるようになるのです。

特に欧米人は骨盤前傾なので、ハムストリングスと背骨のS字カーブが発達して、身体能力がとても高いですね。

これに対して日本人は骨盤直立なので、ハムストリングスが緩みやすく、背骨のS字カーブも未熟です。

巷では、スポーツには骨盤直立が最適などという間違った意見が蔓延していますが、そもそも骨盤直立は日常生活に適した形状なので、ご注意ください。

B.練習方法

トレーニングのやり方は、とても簡単です。

・カカトを浮かして、つま先立ちになる。
・背筋を伸ばして胸を張り、お尻を突き出す。
・一日あたり30秒~1分くらい。

C.注意点

動画では玄関を利用していますが、カカトを浮かせるのであれば、階段を使っても、その場でつま先立ちになるだけでも良いでしょう。

大切なポイントは、背筋を伸ばして胸を張り、お尻を突き出す姿勢を保つということだけです。

なお、子供さんがすでに骨盤前傾の場合は、背骨の発達に支障をきたすので、このトレーニングはやらないでください。

さて次は、腸腰筋、軸足と体幹、足首と足指の強化トレーニングについて解説します。

③ 腸腰筋トレーニング

A.練習の目的

腸腰筋は、小腰筋、大腰筋、腸骨筋の総称で、3つの筋肉が1つにまとまり、みぞおち辺りから股関節まで繋がった体幹の筋肉です。

また、股関節から下に大腿四頭筋などの足の筋肉がありますが、この部分の筋肉と腸腰筋の連動がとても大切です。

この場合の腸腰筋と足の筋肉の連動には、二つの意味があります。

一つ目は、腸腰筋と足の筋肉が一本の筋肉のように動くため、股下が80㎝の人に15㎝の腸腰筋を足したのと同じで、足が長くなったように使えます。

二つ目は、腸腰筋と足の筋肉が連動すると、バックスイングの時に大腿四頭筋と合わせて腸腰筋も伸びるので、筋肉の伸張反射の範囲が広くなって、パワーアップします。

そうすると、2つの効果によってキックのスイングが、さらに大きく速くなるわけです。

これに対して、腸腰筋の未熟な人は、大腿四頭筋しか働かないので、足の筋肉だけに頼ったキックになってしまいます。

B.練習方法

トレーニングのやり方は、次の動画のとおり三種類です。

・前方ジャンプ
・片足ジャンプ
・立ち腹筋

C.注意点

三種類のメニューとも体への負荷が大きいので、一日あたり5~6回から始めましょう。

また、対象年齢は10歳以上か小学校3年生からにしてください。

小学校低学年(小学二年生以下)は、次の動画の要領で、片方の足を脱力して、腸腰筋を使って後ろに反らす動的ストレッチを繰り返してください。

筋トレの前段階として、筋肉や骨格を刺激するのが狙いです。

もしも低学年の子供が、こうした練習をしないで、いきなり前方ジャンプ、片足ジャンプ、立ち腹筋などのトレーニングをすると、肉離れなどを起こす危険性があるので注意してください。

④ 軸足と体幹の強化

A.練習の目的

キックのスイングが速くなると、それに比例して遠心力も大きくなります。

また、その際の遠心力は軸足と体幹できちんと支えないと、体がグラグラしてキックが不安定になります。

この場合、日本では体幹トレーニングはしても、軸足を鍛えるという発想がほとんどないのでプロになっても軸が弱い選手が多いです。

B.練習方法

次の動画のように「ちょんちょんリフティング」をたくさん練習しましょう。

このリフティングは単なる筋トレよりも極めて効果が高いです。

しかも回数に比例してキックの飛距離や強さが目に見えて伸びて来ます。

そうした意味で、今回ご紹介する練習法の中では、最も即効性が高いメニューだと思います。

先ずは1000回連続を目指しましょう(「とも」は毎日5000回以上)。

先ほども解説しましたが、「とも」のキック力がアップした最大の要因は、前述の筋肉の伸張反射と体のバネ作用とともに、この「ちょんちょんリフティング」をたくさん練習したからです。

C.注意点

ちょんちょんリフティングを練習する時は、先ほどの「①ハムストリングスの強化」で解説したように、背骨、背筋、お尻、ハムストリングス、ふくらはぎを意識してください。

そうすると、体の後ろ側の筋肉も自然と強化されます。

もしも、ちょんちょんリフティングを練習した後で、大腿四頭筋、足の付け根の前、鼠蹊部が筋肉痛になったとしたら、体の後ろ側の筋肉を使っていない証拠なので、ご注意ください。

⑤ 足首と足指の強化

A.練習の目的

足首と足指の強化の目的は三つあります。

一つ目は、足首を強くして、キックのインパクトの衝撃に耐えられるようにすることです。

日本ではキックの時に足首を固定するようによく言われますが、ほとんどの子供は足首が弱いので素直に固定して蹴っていたら捻挫を起こしやすいと思います。

むしろ無理に足首を固定して蹴るのではなく、自然と固定できるだけの筋力強化を優先するべきです。

二つ目は、足指のグリップを強くして、軸足を安定させることです。

これは、先ほどの「ちょんちょんリフティング」との複合的な効果を狙ったものですね。

三つ目は、土踏まずのアーチを発達させて、蹴り足のバネ作用を発揮することです。

これにより土踏まずのアーチ構造が板バネのように使えるようになるので、キック力がさらにアップします。

B.練習方法

次の動画で実演しているように、足指グーパーと足指スリスリで足回りの強化をしましょう。

また、指と一緒にリスフラン関節(足の甲の中心辺り)を動かすことで、スネ、ふくらはぎ、指のグリップ、土踏まずなどを広範囲に強化することが出来ます。

(3) ストレッチ

① 練習の目的

ストレッチは、体の柔軟性を高めることやケガの防止だけが目的ではありません。

筋肉の伸張反射やバネ作用を促すためにも必要です。

特に、サッカーの練習の前後や入浴後に行うと効果的ですね。

② 練習方法

・体の前側

腸腰筋、大腿四頭筋、前脛骨筋、大胸筋、腸腰筋、大腿四頭筋、前脛骨筋

・体の後ろ側

背筋、お尻、ハムストリングス、ふくらはぎ

さて次は、5.練習の成果について解説します。

スポンサーリンク

5.練習の成果

練習の成果については、「とも」の幼少期と現在の蹴り方を比較して解説します。

(1)インフロントキック

① 小2の頃

この頃は左右で蹴っていましたが、飛距離は15mくらいです。

また、クラブチームに入団して足の力に頼った蹴り方を覚えてしまったせいで、バックスイングが小さく、筋肉の伸張反射や体のバネ作用があまり使えていませんでした。

さらに、蹴った後に、軸足がぐらぐらするシーンも多いことから、軸足や体幹の弱さも目立ちます。

② 中学一年生の頃

この頃になると、小学生の頃から続けていた全身を使った蹴り方が完成し、「(1)スイングスピードを速くする」「(2)筋トレ」「(3)ストレッチ」の成果が全て出た蹴り方になっています。

この動画を撮影した時は、フルパワーの半分の力で蹴っていたので、飛距離は35mくらいです(本気で蹴るとバックネットを超えて、ボールがグラウンドの外に出てしまう)。

たぶん、本気で蹴っていたら50mは軽く超えていたと思います。

(2)インステップキック

① 小1の頃

この頃は、サッカーを始めて2か月くらいですが、全身を使った蹴り方をしています。

その後、地元のクラブチームに入団したところ、先ほどの小二の頃のインフロントキックのように足の力に頼った蹴り方を覚えしまいました。

ちょっと残念でしたね。

② 中学一年生の頃

インステップキックに関しても、先ほどのインフロントキックと同様にフルパワーの半分の力で蹴っています。

また、スイングスピードが速いので無回転が蹴れるようになっています。

(3)ボールコントロール

先ほど解説したインステップでもインフロントでも、特に大切なのはフルパワーで蹴らなくても十分なキック力が付いたという点です。

そのため、ボールコントロールが抜群に良くなりました。

その理由は軽く蹴った方が目標を正確に狙えるからです。

特に、試合で狙ったところにピンポイントで蹴れないと、どんなキックでも役に立ちません。

これはとても大切なことで、単に遠くに強く蹴れば良いというわけではないのです。

いずれにしても、キック力が付くとフルパワーの半分の力で蹴っても速く遠くに飛ぶようになりますし、ボールコントロールも正確になるので、ぜひたくさん練習してほしいと思います。

6.まとめ

これまで、サッカーのキック力を付ける方法について詳しく解説しました。

これをまとめると、

(1)育成年代の子供たちがキック力をアップするためには、
① 最初に全身を使った蹴り方を覚える。
② その後で、キックフォームの細かい点を微調整をすれば良い。

(2)キックの基本の仕組みとしては、
① パワーを生み出すのは、足の重さや筋力。
② スピードを引き出すのは、縦回転の遠心力。

(3)全身を使った蹴り方とは、
縦回転の遠心力を大きく速くして、スイングスピードをアップすること。

(4)練習法としては、
① スイングスピードを速くする
② 筋トレ
③ ストレッチ

これに対してネットや書籍等の情報では、キック力をアップする方法がいろいろとあるようですね。

でも、そうしたものは、しょせんは小手先のテクニックでしかなく、そもそも即効性のある魔法のような練習法はありません。だから、そうしたものは一切気にしない方が良いでしょう。

何度もくどいようですが、育成年代の子供にとって本当に大切なのは、多少時間がかかったとしても、全身を使った蹴り方を覚えることです。

そうした意味では、ぜひ今回紹介した練習法にチャレンジして、全国のサッカー少年のキック力がアップすることを願っています。

【画像引用:Youtube.com