(2)筋トレ
この練習メニューは筋トレとは言っても、腕立て伏せや腹筋のような苦しくて辛いメニューではなく、小学校低学年でも出来る簡単なトレーニングです。
その狙いは、全身の筋肉を使えるようにするということです。
例えば足の筋肉は、誰でも太ももの前側(大腿四頭筋)を使おうとしますが、それだけではなく後ろ側(ハムストリングス)も使えるようにする…という意図があり、これによって全身を使った蹴り方に活きるわけですね。
もちろん、その他にも使っていない筋肉を使えるようにする…という狙いもあります。
なお、このトレーニングをする時は、必ず鍛える部位を意識してください。
その理由は、2016年に発表されたデンマーク国立労働環境研究センターとオールボー大学などの研究チームの「プログレッシブレジスタンストレーニング中の意識と筋肉のつながりの重要性」という研究結果によれば、筋トレの際に筋肉の部位を意識すると高い効果が得られたそうです。
また2018年に発表されたアメリカ・ノースウェスタン大学とアリゾナ州立大学などの研究チームの「長期レジスタンストレーニング中の意識集中による異なる効果」という研究結果によっても、同じような効果が得られています。
これは現在の筋トレの理論で一般化した、いわゆるマインドマッスルコネクション(MMC)と同じ意味にもなります。
こうした理論は各種スポーツジムの指導マニュアルとしても普及しているので、ぜひ参考にしてください。
①ハムストリングスの強化
練習の目的
ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)の役割は、キックのバックスイングの時に、ハムストリングスが縮むことによって(力を入れて縮める)、膝を曲げて股関節を伸ばすというものです。
この場合、ハムストリングスを強化する狙いは次の二つです。
一つ目は、ハムストリングスが発達すると縮むスピードが速くなり、これに合わせて膝を曲げて股関節を伸ばす動作も素早くなるため、バックスイングが大きく速くなります。
二つ目は、ハムストリングスを素早く縮められるようになるので、同時に大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)を急激に伸ばすことが出来ます。そうすると筋肉の伸張反射がスピーディーに反応するので、これに応じてスイングスピードも速くなるのです。
注意点
日本では、大腿四頭筋の方を鍛えようとしますが、そもそもこの筋肉には、バックスイングの時のように素早く膝を曲げたり股関節を伸ばしたりという機能はありません。
そもそも大腿四頭筋は、ヒトが日常生活で立ったり歩いたりする時によく使う抗重力筋(立った姿勢を維持するための筋肉)なので、放っておいても発達します。
その反対に、日常生活では素早く膝を曲げたり股関節を伸ばしたりという動作はほとんどないので、ハムストリングスはあまり発達しません。
そのため大腿四頭筋を鍛え過ぎると、太ももの前後の筋肉がアンバランスになります。
そうした状態でハムストリングを急激に伸ばすなどの刺激が加わると、かえって肉離れを起こしやすくなるので注意してください。
練習方法
練習法としては、サッカーのドリブルの時や歩いたり走ったりする時に、次の姿勢を保つように意識付けしてください。
・軽くヒザを曲げて腰を落とす。
・足の指でグリップする(カカトは上げない)。
・背骨、背筋、お尻、ハムストリングス、ふくらはぎの部位を意識する。
このトレーニングは姿勢の悪い子に「背筋を伸ばしなさい!」と注意するのと同じで、筋肉に自然な緊張状態を作り出して筋トレと同様の効果を得るのが狙いです。
つまり、この姿勢を意識して習慣化するだけで、ハムストリングス、ふくらはぎ、背筋、お尻の筋肉が、いつの間にか強化出来るというわけですね。
また、ふくらはぎ、背筋、お尻の筋肉も強化する理由は、これらの筋肉がハムストリングスと連動するからです。
そうした意味では、体の後ろの筋肉をすべて鍛えるようにしましょう。
②骨盤前傾トレーニング
練習の目的
骨盤前傾になるとハムストリングスが緊張状態になり、日常生活の中で自然に発達するため、キックのスイングを大きく速くすることが出来ます。
また、背骨のS字カーブも発達するので、先ほど解説した体のバネ作用も使えるようになるのです。
特に欧米人は骨盤前傾なので、ハムストリングスと背骨のS字カーブが発達して、身体能力がとても高いですね。
これに対して日本人は骨盤直立なので、ハムストリングスが緩みやすく、背骨のS字カーブも未熟です。
巷では、スポーツには骨盤直立が最適などという間違った意見が蔓延していますが、そもそも骨盤直立は日常生活に適した形状なので、ご注意ください。
練習方法
トレーニングのやり方は、とても簡単です。
・カカトを浮かして、つま先立ちになる。
・背筋を伸ばして胸を張り、お尻を突き出す。
・一日あたり30秒~1分くらい。
注意点
動画では玄関を利用していますが、カカトを浮かせるのであれば、階段を使っても、その場でつま先立ちになるだけでも良いでしょう。
大切なポイントは、背筋を伸ばして胸を張り、お尻を突き出す姿勢を保つということだけです。
なお、子供さんがすでに骨盤前傾の場合は、背骨の発達に支障をきたすので、このトレーニングはやらないでください。
さて次は、腸腰筋、軸足と体幹、足首と足指の強化トレーニングについて解説します。
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