ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

無回転シュートの蹴り方!落ちるブレ球のキックを蹴ろう

無回転シュートを正しく蹴るとゴールキーパーの手前でブレ玉になって落ちます。

こうしたブレ球はゴールキーパーの真正面に飛んだとしても、非常にセーブし難いので大きな武器になります。

そこで今回は無回転シュートの正しい蹴り方とブレ球を蹴るための方法について解説します。

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1.無回転シュートの仕組み

無回転シュートは、英語で「knuckle shoot(ナックルシュート)」とも呼ばれ、次の動画のように無回転のボールがゴール直前でブレて落ちて行くという蹴り方です。

その際、無回転シュートを覚えるうえで、なぜボールがブレるのか?なぜゴールキーパーがセーブし難いのか?などの次の4つの点をきちんと理解しましょう。

そうすることが上達のための最短最速の近道です。

(1)ブレ玉になる仕組み
(2)GKがブレ球をセーブし難い理由
(3)キックの仕組み
(4)蹴り方の誤解

(1)ブレ玉になる仕組み

ここでは無回転シュートがブレ玉になる理由について、出来るだけ分かりやすく解説します。

流体力学によれば物体は回転が続く限り安定して動き続けますが、その反対に回転が落ちて来ると不安定になるという法則があります。

これを「ジャイロ効果」と呼んでいます。

例えばコマ回しの駒はくるくると速く回っているうちは安定して回転を続けますが、回転が落ちて来ると左右にぐらぐらしてやがて倒れてしまう…のと同じです。

こうした原理は、水平に飛ぶ物体にも当てはまります。

例えばライフル銃の銃弾がなぜ真っ直ぐ飛ぶのか?を考えると、銃身の内側にらせん状の切込みがあるので、その場所を通過する銃弾は回転しながら発射されます。

そうすると空気中に飛び出した銃弾もクルクルとらせん状に回転しながら飛ぶので、先ほどのジャイロ効果によって軌道が安定することから、真っ直ぐ飛ぶというわけです(物体は回転が続く限り安定する)。

それでは無回転シュートで蹴ったボールがなぜブレるのか…ということですが、何となく想像がつきませんか?

結論から言うと、先ほどの銃弾のように全く回転していないので軌道が不安定になるからです。

 

 

さらに加えて、無回転で移動する物体(シュートの場合は飛んで行くボール)の後方には「カルマン渦」が発生しますが、この現象も軌道を不安定にする…という特性があるのです。

つまり無回転で飛んでいくボールは、ジャイロ効果が効かない…、カルマン渦が生じる…ということで、軌道を不安定にする二つの要因によってブレ玉になるわけですね。

こうした場合、無回転のボールがブレ始めるまでには1秒前後の滞空時間があると効果が出やすいと考えられています(つまり蹴ってから1秒後)。

例えばクリスチアーノ・ロナウドのキックスピードは時速130㎞程度なので、1秒間にボールが進む距離は約35~36mになることから、ミドルシュートやロングシュートに使うとブレ球になりやすいというわけですね。

またキックスピードが時速120㎞なら33m、時速110㎞なら30m、時速100㎞なら27mというようにボールがブレ始める距離は異なります。

したがって自分のキックスピードをあらかじめ把握しておけば、どの距離から蹴れば良いのかが分かりますよね。

そうした意味で無回転シュートは、ゴールまでの距離と自分のキック力を天秤にかけながら効果的に使うようにしましょう。

それでは次にこの原理を踏まえて、なぜゴールキーパーはブレ玉をセーブし難いのか?について考えてみましょう。

(2)GKがブレ球をセーブし難い理由

ふつうゴールキーパーは飛んで来るボールの軌道を見ながら、次の瞬間もそのままの軌道で進むものと予測します。

例えば現在のボールの軌道が真っ直ぐであれば次の瞬間も真っ直ぐ来るだろう…と予測しますし、カーブやアウトフロントキックなどでボールが曲がっていれば次の瞬間も曲がリ続けるだろうと判断するのです。

したがってGKは、そうした軌道の予測に基づいてセーブの体勢に入ろうとするわけですね。

これはあなたの日常生活でも同じことで、例えば空に鳥が飛んでいたらそのまま飛び続けると思いますよね。まさか次の瞬間に落ちてくるなんて予測できないはずですよ。

これに対して無回転シュートの場合は軌道の不安定さによって、真っ直ぐ飛んできたボールがキーパーの目の前でいきなり上下左右にブレてしまいます。

しかもボールがブレる時に重力落下運動も働くことから、上にブレたら下に落ちますし、左にブレても下に落ちますが、それだけではなく重力の影響に打ち克ってそのまま左に行ってしまうことさえあります(右にブレる場合も同じ)。

そうするとGKは、ボールがブレる直前の軌道(そのままの軌道で飛んで来ると判断して)に基づいて、すでにセーブの体勢に入っていることから急には反応できないのです。

これは車は急に止まれない…のと同じですね。

しかもプロが蹴る無回転シュートのキックスピードは130㎞以上なので、この速さでいきなりブレたらブッフォンでもノイアーでもすぐに反応できるわけがありません。

この場合、もしもキーパーの真正面に来たボールが、一個分だけブレたとしたらどうなると思いますか?

ボール一個分なので何とかセーブできそうですよね。

でも、ヒトの予測能力や判断能力はそれほど高くはありません。

そもそもブレるということは、その直前に予測した次の瞬間のボールの軌道とは明らかに違うので、キーパーの思考が混乱して(訳が分からなくなる)思考停止状態になるのです。

つまり心理学的に考えても、それだけキーパーはブレ球をセーブし難いということですね。

そうした意味で無回転シュートは大きな武器なので、ぜひ覚えてください。

それでは次に無回転シュートを蹴るためのキックの仕組みについて考えてみましょう。

(3)キックの仕組み

① ボールの中心軸とキック力

過去の記事で『インステップキック(リンク)はボールの中心軸に対して、その距離の分(ボール一個分)だけ真っ直ぐ押し出すように蹴らなくてはいけない…、またボールは球体なので全ての面が中心になる、だから単に「中心を蹴る…」というのではなく「中心軸に向かってインパクトする…」』と解説しました。

この場合、無回転シュートを蹴る時もこの考え方が当てはまります。

また中心軸を正しくインパクトするとボールは一瞬だけ凹みますが、それだけの強いキックを蹴らないと無回転にはならないので、必ずキック力も付けましょう。

② ボールを正確に押し出す

無回転シュートのインパクトは、次の動画のようにボールを強く押し出すのが基本です。

この動画は無回転のボールがどのようにブレるのか?という実験の様子ですが、インパンクのやり方について一つのヒントがあります。

この実験用機械は本体の上側に組み込まれた2つのローラーによってボールを飛ばしていますが、ピッチ上に固定されているので機械本体は動いていませんよね。

これは何を意味するのかというとボールを飛ばす瞬間(キックならインパクトの瞬間)に、ボールを上下左右にほとんど動かずに押し出しさないと無回転にはならないということです。

つまり無回転シュートを蹴る時にボール1個分押し出すというのは、かなり正確に蹴らなくてはいけないということですね。

もっと言えばボールを押し出す時は、トンネルのような筒型の物体の中を正確に通すようなイメージ(筒の内側の壁に当たってもダメ)で蹴る必要があるのです。

そうすると無回転シュートをインステップ(足の甲)のような尖っている場所で蹴るのは「点」でインパクトするのと同じなので、そもそもボールの中心軸を捉え難いですよね。

これに対して、くるぶしの下か横またはインサイドのような広い面であれば中心軸を捉えやすくなるのです。

また何度もくどいようですが、中心軸をきちんと捉えつつ、上下左右に蹴り足が動かずに正確に押し出すのが大切です。

そのために必要なことは、先ずは「ちょんちょんリフティング」などで強固な体幹と軸足を養成することです。

なぜなら体幹と軸足が弱いとインパクトで体がぐらぐらしてしまい、インパクトが乱れて正確に蹴れないからです。

この点は大切なのでご注意ください。

ところで無回転シュートを蹴る時に、巷ではいろいろな誤解があるように思います。

そこで次に蹴り方の誤解について解説します。

(4)蹴り方の誤解

① つま先立ちで助走する

ネットでは「クリスチアーノ・ロナウドのように、つま先立ちをしながら助走する…」とよく言われています。

これはクリロナの助走を真似しただけであって、本来の意味を理解していないせいだと思います。

この場合クリロナは、たしかに次の①~③ではつま先立ちで助走していますよね。

これに対して③~④までの軸足の踏込が小さすぎると思いませんか?

ふつうなら蹴る直前の踏込は大きくなるはずですよね。

実は彼がキックをする時の体の使い方は、ふつうの選手とは全く違うのです。

これを普通の選手のキックフォームと比較すると、一般人は立った状態の時は全身が一本の棒のようになっていますが、クリロナはこの状態で逆C字型のバネを持っていると考えられています。

また一般人はバックスインクで背骨を反らし、フォロースルーにかけて反発させるというバネ作用を使います。

ところがクリロナはつま先立ちで助走する時に、平常時の逆C字型のバネを「ピン!」と張って垂直に伸ばし、フォロースルーにかけて反発して縮めることでスピードとパワーを発揮しているのです(バネが反発して縮む時は、みぞおち辺りを支点にして体が折り曲がる)。

しかもつま先立ちによる全身のバネが垂直に伸びた状態は、浮身と似たような姿勢になることから、股関節も無重力状態になるのでスイングスピードも速くなるのです。

たぶんクリロナの体は筋力の発達はもちろんですが、腱(骨と筋肉の接合部位)やじん帯(骨と骨を繋ぐ組織)も太く、全身を一本の太いゴムのように伸び縮みさせるような使い方をしているのではないかと思います。

その証拠に彼はドリブルでシザースをやる時も、つま先立ちになりますよね。

そうすると、やはり全身のバネが垂直に伸びた状態で浮身のような姿勢になることから、股関節も無重力状態になるので、とても速く足を動かせるのです。

要するにクリロナのつま先立ちは、彼の独特な体の使い方によって出来ることですし、そもそも日本人とは体の構造が全く違うので、普通の選手がいくら真似しても全く意味はないということです。

もちろんマネするだけなら良いですけどね(笑)。

② 蹴り足の指を握って足首を固定

インパクトの時に蹴り足の指を握ってグーのようにしたり、足首を固定した方が良い…というのもよく目にします。

でもこれは単に足の指と足首が弱い人たちの意見です。

たしかに無回転シュートはインパクトの瞬間にボールが上下左右にほとんど動かずに押し出す…という蹴り方が必要なので、一理あるように思えますよね。

でも、足の指や足首は鍛えればいくらでも強くなりますし、過度に固定していたら足が緊張するだけなので、かえって筋肉の伸張反射が使えなくなります。

そうすると、スイングのスピードパワーが発揮できないのです。

だから、そうした足の指や足首が弱い人たちの意見をまともに受け入れるのではなく、きちんと日ごろから鍛えましょう。

さて次は、いよいよ無回転シュートの蹴り方として、足の当てる場所とボールの当てる場所、助走、キックフォームについて、実際の蹴り方を参考にしながら詳しく解説します。

2.無回転シュートの蹴り方

(1)足の当てる場所

無回転シュートを蹴る時の足の場所は、一般的にはくるぶしの下か横またはインサイドとされています。

この場合、インパクトの瞬間にボールの中心軸をきちんと捉え、上下左右に蹴り足が動かずに正確にボールを押し出せるのであれば、どこで蹴っても構いません。

私の息子の場合はくるぶしの近くで蹴っていますが、この場所はインステップキックのミートポイントにもなっています。

この場所は本人がコントロールしやすいポイントなので、息子の感覚を尊重しています。

そもそも足の形は人それぞれですし、身長や脚の長さも違います。

そうした意味でサッカーの蹴り方には正解がないので、自分の蹴りやすい場所で蹴るのがいちばん良いと思います。

だから自分に合った場所で蹴りましょう。

(2)ボールの当てる場所とスイング軌道

ふつうボールの当てる場所は中心より少し下…と言われていますが、それでは大雑把過ぎです。

この場合に大切なのはボールの放射角を意識することです。

放射角とは、地面に対してどのくらいの角度で蹴れば良いのか?ということです。

この場合、これまで何度も「インパクトの瞬間にボールの中心軸をきちんと捉え、上下左右に蹴り足が動かずに正確にボールを押し出すのが大切…」と解説しましたよね。

そうすると、ボールのどの場所を蹴るのか?を考える時も、この放射角を意識しないと意味がありません。

なぜならボールを押し出す時にほんの僅かでもスイングの放射角がずれると、中心軸を捉えられませんし、ボールに上下左右の回転が掛かってしまう可能性があるからです。

つまりボールの当てる場所はどこか?という安直な考えではなく、インパクトの瞬間(ボールに当たる瞬間)の放射角が30度であれば、スイング軌道も30度を維持するという考えが先に来ないとおかしいわけですね。

そのうえで、始めてボールの中心から1㎝下が良いとか、2㎝下が良いとかの発想が出て来るのです。

そうした意味で単にボールの中心から少し下というのではなく、先ずは放射角とスイング軌道を意識したうえで、中心から何㎝下が良いのか?という考えを持ちましょう。

ちなみに私の息子はゴールまでの距離に応じて、20mなら中心から1㎝下、30mなら1.5㎝下というように細かく分けていますが、最終的には本人が練習によって体得した独自の感覚を持っているようです。

そうした意味では何度も蹴ってみて、自分が良いと思える場所を決めましょう。

(3)キックフォーム

① 助走

助走については、次の①~②のようにインパクト直前の踏込みを大きくすることが重要です。

その理由は③でバックスイングを大きくして背骨を反らす(板バネのように伸ばす)ためです。

これによって④~⑥まで背骨のバネが反発(縮む)する時に、スイングのスピードとパワーが得られるのです(同時に筋肉の伸張反射が起きますが、詳細は後述します)。

これに対して先ほどクリスチアーノ・ロナウドのつま先立ちの助走を解説しましたが、くれぐれも日本人に彼の真似は出来ないので止めた方が良いでしょう。

また助走に入る角度はインステップキックやインフロントキックと同じように斜めから入れば良いので、自分のやりやすさを考えましょう。

そもそも人によって足の長さや身長が違うので、どのくらいの角度とか何歩で…というのも、特に決まったものはありません。

さらに無回転シュートのインパクトまでのキックフォームは、他の種類のキックと比べるとほとんど変わらないので、それほど難しく考える必要はないのです。

② 押し出すように蹴る

これは先ほどの連続写真の④~⑤を見ると分かりますが、インパクトの瞬間(ボールに当たる瞬間)の放射角と、押し出す時のスイング軌道を維持するのが大切です。

ここが上手くいかないと無回転にはなりません。

これは、たぶん多くの方が失敗する原因になっていると思います。

そうした意味では、単に押し出せば良い…というのではなく、放射角も意識して蹴るようにしましょう。

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3.キック力を付ける

無回転シュートでブレ球を蹴るためには、キック力を付けるのが大切です。

その場合、全身を使った蹴り方を覚えましょう。

また練習方法としては、「スイングスピードを速くする」「筋トレ」「ストレッチ」などになります。

このうちスイングスピードを速くするためには、

① 足の重さと遠心力を使う
② バックスイングを大きくする
③ キックの素振り
④ 筋肉の伸張反射体のバネ作用

筋トレについては、

① ハムストリングスの強化
② 骨盤前傾トレーニング
③ 腸腰筋トレーニング
④ 軸足と体幹の強化
⑤ 足首と足指の強化

ストレッチについては筋肉の伸張反射と体のバネ作用を起こしやすくするために、体の前と後ろを入念に行ってください。

体の前側:腸腰筋、大腿四頭筋、前脛骨筋、大胸筋、腸腰筋、大腿四頭筋、前脛骨筋

体の後ろ側:背筋、お尻、ハムストリングス、ふくらはぎ

※キック力を付けるための詳しい練習方法は次の記事で解説しています。

4.まとめ

これまで無回転シュートの蹴り方をいろいろと解説しました。

特に無回転シュートの仕組みとして次の4つをきちんと理解しましょう。

(1)ブレ玉になる仕組み
(2)GKがブレ球をセーブし難い理由
(3)キックの仕組み
(4)蹴り方の誤解

そのうえで正しい蹴り方として次の3つも覚えましょう。

(1)足の当てる場所
(2)ボールの当てる場所とスイング軌道
(3)キックフォーム

さらに無回転シュートでブレ球を蹴るためにはキック力も必要なので、ぜひキック力を付ける練習もしてください。

ぜひ日本の多くの子供たちが無回転シュートを蹴れるよう願っています。