ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

無回転シュートの仕組みと蹴り方!落ちるブレ球のキックを蹴ろう

(3)蹴り方の注意点

①ボールの中心軸とキック力

過去の記事で『インステップキック(リンク)はボールの中心軸に対して、その距離の分(ボール一個分)だけ真っ直ぐ押し出すように蹴らなくてはいけない…、またボールは球体なので全ての面が中心になる、だから単に「中心を蹴る…」というのではなく「中心軸に向かってインパクトする…」』と解説しました。

この場合、無回転シュートを蹴る時もこの考え方が当てはまります。

また中心軸を正しくインパクトするとボールは一瞬だけ凹みますが、それだけの強いキックを蹴らないと無回転にはならないので、必ずキック力も付けましょう。

②ボールを正確に押し出す

無回転シュートのインパクトは、次の動画のようにボールを強く押し出すのが基本です。

この動画は無回転のボールがどのようにブレるのか?という実験の様子ですが、インパンクトのやり方について一つのヒントがあります。

この実験用機械は本体の上側に組み込まれた2つのローラーによってボールを飛ばしていますが、ピッチ上に固定されているので機械本体は動いていませんよね。

これは何を意味するのかというとボールを飛ばす瞬間(キックならインパクトの瞬間)に、ボールを上下左右にほとんど動かずに押し出しさないと無回転にはならないということです。

つまり無回転シュートを蹴る時にボール1個分押し出すというのは、かなり正確に蹴らなくてはいけないということですね。

もっと言えばボールを押し出す時は、トンネルのような筒型の物体の中を正確に通すようなイメージ(筒の内側の壁に当たってもダメ)で蹴る必要があるのです。

そうすると無回転シュートをインステップ(足の甲)のような尖っている場所で蹴るのは「点」でインパクトするのと同じなので、そもそもボールの中心軸を捉え難いですよね。

これに対して、くるぶしの下か横またはインサイドのような広い面であれば中心軸を捉えやすくなるのです。

また何度もくどいようですが、中心軸をきちんと捉えつつ、上下左右に蹴り足が動かずに正確に押し出すのが大切です。

そのために必要なことは、先ずは「ちょんちょんリフティング」などで強固な体幹と軸足を養成することです。

なぜなら体幹と軸足が弱いとインパクトで体がぐらぐらしてしまい、インパクトが乱れて正確に蹴れないからです。

この点は大切なのでご注意ください。

ところで無回転シュートを蹴る時に、巷ではいろいろな誤解があるように思います。

そこで次に蹴り方の誤解について解説します。

(4)蹴り方の誤解

①つま先立ちで助走する

巷では「クリスチアーノ・ロナウドのように、つま先立ちをしながら助走する…」とよく言われています。

これはクリロナの助走を真似しただけであって、本来の意味を理解していないせいだと思います。

この場合クリロナは、たしかに次の①~③ではつま先立ちで助走していますよね。

これに対して③~④までの軸足の踏込が小さすぎると思いませんか?

ふつうなら蹴る直前の踏込は大きくなるはずですよね。

実は彼がキックをする時の体の使い方は、ふつうの選手とは全く違うのです。

これを普通の選手のキックフォームと比較すると、一般人は立った状態の時は全身が一本の棒のようになっていますが、クリロナはこの状態で逆C字型のバネを持っていると考えられています。

また一般人はバックスインクで背骨を反らし、フォロースルーにかけて反発させるというバネ作用を使います。

ところがクリロナはつま先立ちで助走する時に、平常時の逆C字型のバネを「ピン!」と張って垂直に伸ばし、フォロースルーにかけて反発して縮めることでスピードとパワーを発揮しているのです(バネが反発して縮む時は、みぞおち辺りを支点にして体が折り曲がる)。

しかもつま先立ちによる全身のバネが垂直に伸びた状態は、浮身と似たような姿勢になることから、股関節も無重力状態になるのでスイングスピードも速くなるのです。

たぶんクリロナの体は筋力の発達はもちろんですが、腱(骨と筋肉の接合部位)やじん帯(骨と骨を繋ぐ組織)も太く、全身を一本の太いゴムのように伸び縮みさせるような使い方をしているのではないかと思います。

その証拠に彼はドリブルでシザースをやる時も、つま先立ちになりますよね。

そうすると、やはり全身のバネが垂直に伸びた状態で浮身のような姿勢になることから、股関節も無重力状態になるので、とても速く足を動かせるのです。

要するにクリロナのつま先立ちは、彼の独特な体の使い方によって出来ることですし、そもそも日本人とは体の構造が全く違うので、普通の選手がいくら真似しても全く意味はないということです。

もちろんマネするだけなら良いですけどね(笑)。

②蹴り足の指を握って足首を固定

インパクトの時に蹴り足の指を握ってグーのようにしたり、足首を固定した方が良い…というのもよく目にします。

でもこれは単に足の指と足首が弱い人たちの意見です。

たしかに無回転シュートはインパクトの瞬間にボールが上下左右にほとんど動かずに押し出す…という蹴り方が必要なので、一理あるように思えますよね。

でも足の指や足首は鍛えれば強くなりますし、過度に固定していたら足が緊張するだけなので、かえって筋肉の伸張反射が使えなくなります。

そうするとスイングのスピードパワーが発揮できないのです。

だから、そうした足の指や足首が弱い人たちの意見をまともに受け入れるのではなく、きちんと日ごろから鍛えましょう。

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さて次は、いよいよ無回転シュートの蹴り方として、足の当てる場所とボールの当てる場所、助走、キックフォームについて、実際の蹴り方を参考にしながら詳しく解説します。

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