ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

左利きのサッカー選手は有利?利き足は変えられるのか?

左利きのサッカー選手と言えば、海外ではメッシやマラドーナ、日本では久保建英、本田圭佑、中村俊輔、名波などが有名ですね。

私は30年前にブラジル・サンパウロのクラブでアシスタントコーチをしていましたが、当時からよく言われていた格言として「一つのポジションに同じレベルの選手がいたら、左利きを使え」というのがありました。

その一方で、日本では左利きのサッカー選手は有利だとか天才が多いとよく言われます。

また、利き足を右から左に変えようという発想もあるようです。

でも、これは本当に正しいのでしょうか?

そこで今回は、左利きのサッカー選手の有利さや利き足を変えることなどについて解説します。

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1.左利きのサッカー選手の特徴

(1)左利きが天才と言われる理由

左利きのサッカー選手はよく天才と言われますが、その理由は右脳の発達にあるとされています。

特に右脳の発達によって、図形の認識や空間認知力などのイメージ、直観力(ひらめき)などが向上すると言われているそうです。

また、脳梁(左右の脳半球を結ぶ神経細胞の束)が大きくなりやすいため、目の前に起きた出来事に対し、高い想像力とスピーディーで正確な情報処理能力を発揮します。

例えば久保建英、本田圭佑、中村俊輔、名波などの左利きのサッカー選手は、パス、フリーキック、コーナーキックの精度が高く、相手の不意を突くような思いもよらないパスセンスを見せてくれますよね。

これもイメージや直観力が発達しているため、右利きの選手とは違ったボール感覚を持っているのでしょう。

その一方で、脳梁の発達という点では、サッカーで必要とされる状況判断が迅速で想像性の高いプレーが出来ると言われています。

たぶん、左利きの選手は右利きのプレーヤーと比べると、グラウンド内で見る景色や視点がかなり違っているのでしょう。

こうしたことが、左利きのサッカー選手が天才と言われる理由なのかも知れません。

それでは、右利きは平凡な選手が多いのでしょうか?

実はそうではなく、実際にも優秀なプレーヤーは多いです。

そもそも右利きと左利きの割合はほぼ9対1です。

その場合、天才的な能力を持つ選手の総数という点では、右利きの方が左利きよりも多いはずです(選手が100人いれば、右利きは90人)。

また、先ほど左利きは右脳が発達しているので天才…と解説しましたが、これは科学的にはあくまでも「利き手」に関する研究結果であって、利き足に関するものではありません。

実は、利き手と違って、利き足に関する脳科学の研究はあまり進んでいないのです。

一方、ネットであふれる科学的根拠の乏しい不確かな情報としては、安易に左利きのサッカー選手を称賛し過ぎますが、やはり左利きのサッカー選手は天才である…という主張は言い過ぎではないでしょうか?

私が思うに、左利きのサッカー選手が天才とされる理由は、別のところにあると考えています。

(2)左利きの有利さと日本の育成指導

日本サッカーの育成指導では、左利きというだけで過度な両足練習をやらせない傾向があります。

どちらかと言えば左利きに寛容で、どこの少年団でもクラブチームでも同じでしょうし、特に右利きの子供や親御さんは実感しているはずです。

そうした点では、左利きの子供は比較的自由に育ちやすいということですね。

そのようにして成長した左利きの選手は、左足に特化したボールの持ち方をすることが多くなります。

そうすると自然と軸足も鍛えられますし、繊細なボール感覚や独特なテクニックが身に付くのです。

そのため、キックでは、ボールにカーブやアウト回転をかけたり、左足だけで左右に蹴り分けるなど、いろいろな種類の蹴り方が出来るようになるという特徴があります。

だから、試合中に対戦した相手にとっては、不意を突かれた…とか、上手い…と感じるのでしょう。

これに対して右利きは左側に蹴る時は右足を使い、右側に蹴る時は左足を使うというように、左右の足を使い分けます。

そうすると相手にとってはパスコースが分かりやすいので、次のプレーが簡単に予測されてしまうわけです(次のプレーが見破られやすい)ね。

一方、左利きがドリブルする時は、必ずと言って良いほど相手のディフェンスは左側を切ってきますし、右足を使ってボールを奪いに来ます。

そうした場合、メッシが得意とするような相手の右足が出た瞬間にアウトサイドで抜くとか、2~3人に囲まれたような狭い場所では、ヒザ下や小指の辺りなど、必ず相手の足が届き難いところにボールを置くテクニックを覚えます。

だから、右利きの選手にとっての左利きの印象は、ボールが奪えそうで奪えない…、やり難い相手だな…という不思議な感覚があると思います。

そもそも、右利きのディフェンダーは右利きのドリブラーを相手にすることが多いので、左利きには慣れていません。

ところが左利きにとっては、相手は最初から右利きが多いので慣れています。

こうした点も左利きの有利さとして考えられます。

いずれにしても左利きには、こうした特徴的で有利なプレースタイルがあるのです。

それでは右利きの子供も、左利きのように利き足に特化した練習を続けたらどうなると思いますか?

そうしたら、もちろん天才的なサッカー選手がたくさん育つはずです。

私が思うに、日本のサッカー指導のように、幼少期から過度な両足練習をするのは良い事とは思えません。

先ずは、利き足で全てのプレーが出来るようになってから逆足練習をすれば良いのです。

こうした点は、左利きの選手が、育成過程で過度な干渉を受けないことで上手くなっているのがハッキリしていますし、日本の指導現場でもいい加減に気が付かないといけません。

さて次は、左利きに有利なポジションについて詳しく解説します。

(3)左利きのサッカー選手のポジション

サッカーのグラウンドを左右に分けた場合、左サイドには左利き、右サイドには右利きの選手を使うと有利になります。

この理由はいくつかあります。
① 左利きは左サイドからのクロスが蹴りやすい。
② ドリブルをする時は中央から逆サイドまでが見やすい。
③ サイドライン付近でパスを受ける時の利き足が遠い方の足としてトラップしやすい(ボールを守れる)。

だから、左サイドバックや左サイドハーフは左利きが有利とされているのです。

ちなみに、ブラジル代表の左サイドバックは、ロベルト・カルロスやマルセロが有名ですが、2人とも左利きですよね。

また左センターバックも左利きの方が有利です。

その理由はディフェンスラインからビルドアップする時に、相手からのプレスを回避しやすくなるからです。

その場合、相手は縦パスを入れさせないように左半身で中を切って来るので、右利きのCBがボールを持つと自分の蹴り足にまともにプレスを受けることになります。

ところが左利きは相手のプレスを受けても左足を自由に使えるので、比較的簡単にパスを出すことが出来るのです。

そうした意味では、アギーレジャンパンの頃、左利きのサガン鳥栖の坂井を選出したのはよく分かります。

またダブルボランチのフォーメーションの場合に、一方の選手を左利きにするのも有利でしょう。

ただし、チームの戦術によっては左利きの選手がドリブラータイプ(例:メッシ、ロッベン)の場合、右サイドに配置することも多いので、必ずしも絶対に有利とは考えない方が良いですね。

さて次は、左利きに変えることは可能か?そのための練習法について詳しく解説します。

2.左利きに変えることは可能か?

利き足は先天的な要因によって決まりますが、右から左に変えることは可能だと考えています。

ただし、いつでも良いというわけではなく、何歳までに…という最適な時期があると思います。

そうした中で、私の息子「とも」は8歳(小学二年生)の時に利き足を右から左に変えています。

そこで、そうした経験も合わせて、次に左利きに変えることについて解説します。

(1)左利きに変える最適期はいつか?

先ほど解説した左利きに変える最適期ですが、私としては2つの理由で4~5歳頃までが最も良く、どんなに遅くとも9歳までが限界ではないかと考えています。

そこで、次にこの2つの点を考えてみましょう。

① 利き手が決まる時期

利き足を右から左に変えることによる子供の心身の影響や、最適期はほとんど研究されていません。

そこで参考として考えたのが、子供の利き手が決まる時期はいつなのか?ということです。

アメリカの心理学者のアーノルド・ゲゼルの研究によれば、子供は4歳頃になって利き手が決まると結論付けています。

ゲゼルの研究対象として、生後8週~10歳までの子供をサンプリングし、10年間かけていろいろな動作を観察しながら利き手がいつ決まるのかを調べました。

その結果、子供は1歳あたりから両手を使い始めますが、2歳を過ぎると左右いずれかの手をたくさん使い、3歳ごろには再び両手を使い、4歳ごろになって利き手がハッキリとすることが判明したのです。

この結果は専門家の間でも周知されていて、現在でも定説と考えられています。

ただし、この研究結果は利き手に関するものであって、利き足が決まるのも同じく4歳頃なのか?それよりも前か後なのか?というのは結局分かりませんでした。

でも理想としては、利き手の決定時期である4歳ごろにまでに利き足を変えるのが最も良いと思います。

そうは言っても、「とも」が左利きに変えようと考えたのは8歳になってからです。

そこでもう一つの拠り所を考えてみました。

② スキャモンの成長曲線

アメリカの解剖学者のスキャモンは、0歳~20歳までの子供の臓器の容量や重さを測定し成長曲線として発表しました。

この曲線は年齢ごとの成長度合いをパーセントで表記しています(出生時を0%、成長のピークを20歳の100%とする)。

ここで私が着目したのは、身体組織を4分類したうちの一つである「神経系型」です。

これによれば10歳~12歳は、神経系がほぼ完成する時期であるのが明らかです。

また、利き足は脳神経に依存するものです。

そうであるならば、8歳であれば左利きに変えるのは、まだ間に合うという希望が出て来ました。

そこで息子の「とも」がメッシのようになりたいという想いを尊重して、小学二年生の二学期から私と二人三脚で左利きのサッカー選手を目指して練習を始めました。

(2)左利きに変える練習

① 右足の使用禁止

左利きに変えるためには、右足を使っていては意味がないので、思い切って右足を使用禁止にしました。

「とも」の場合は左利きにしてから、一年くらいで右足のボール感覚がなくなりました(右足でまともに蹴れない)。

実は、ここからが左足本来の強化になります。

② トラップ

浮き球のトラップはあまり練習していませんが、その代りに利き足リフティングをたくさんやることで、自然と浮き球の処理に慣れました。

ただしグラウンダーのボールのトラップは、かなり時間をかけて練習しました。

例えば左足に来たボールはインサイドで、右足や身体の真ん中に来たボールはアウトサイドで…というように徹底して左足を使いました。

③ キック

キックは一からやり直しで、先ずは軸足強化から始めました。

先ほどの動画で「ちょんちょんリフティング」をやっていますが、軸足強化にとってはいちばん効果があります。

ちょんちょんリフティングが100回連続で出来たあたり(だいたい一か月くらい)で、インステップ、インフロント、インサイドのキックに本格的に取り組みました。

インサイドキックは5mの距離を正確にマト当てして、距離感とボールコントロールを養成しましたが、インステップキックはあまり練習していません。

その理由は、最初の動画でインステップリフティングをしていますが、きちんとインステップに当てられれば自然と蹴れるようになるからです。

だから、先ずは正確に当てること、回数を続けることを考えました。

実は「とも」が無回転のインステップキックを蹴れるようになったのは、小5になってからで、それまでは一人でコツコツ練習していたようです。

インフロントキックは、次の動画の練習をやりました。

バックスピンをかける感覚とボール感覚を身に付ける練習です。

このころの「とも」の飛距離は15mくらいです。

「とも」が30m以上の距離を蹴れるようになったのは、小5になってからです。

とにかく地道な感覚練習が大切ですね。

インフロントの感覚が身に付いたら、インパクトの瞬間に擦り上げればカーブが蹴れます。

カーブそのものは小5になってから覚えましたが、小2のころから続けたこの練習が、後々になって役に立ったというわけですね。

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④ ドリブル

ドリブルも左足だけを使い、次の動画と同じような練習をしました。

ア.アウトのドリブルとアウトのターン
イ.アウト・インのドリブル

マーカーを使った左足だけのジグザグドリブルもやりました。

ウ.クーパーコーチング

動画では両足を使いますが、左足だけで出来るものに限定していろいろと練習しました。

エ.一対一ゲーム

一対一ゲームは、どんなに狭い場所でもボールが奪われない技術を身に付けること、連続したDFを次々と抜けるようにする練習メニューです。

ブラジルのストリートサッカーをモデルにした練習メニューです。

いじわるのつもりではないですが、私は徹底的に「とも」の左を切るようにしました(左利きの弱点)。

この練習を繰り返すことで、マシューズフェイント、足裏のコントロール、また抜き、シャペウなどが得意になりました。

また自然と腕を使ったり、ボディコンタクトまでも覚えました。

利き足だけ!というルールをつくれば、子どもだって何とかしようと工夫しますからね。

⑤ サッカー以外のスポーツ

サッカー以外のスポーツも積極的に取り入れて左手と左足、左半身の使い方を意識してトレーニングしました。

ア.走る、飛ぶ、跳ねるの基本動作

走る時も歩く時も左足から…を徹底し、その他にも、飛ぶ、跳ねるも、左足で踏み切ることを意識しました。

イ.野球

ボールを左手で投げて左手でキャッチし、バッティングも左でやりました。

特に腕だけではなく、時計回りに体幹をひねる動作を意識させています。

ウ.バドミントン

左手でラケットを持って、ひたすらラリーを続けました。

エ.バスケットボール

左手だけで、ドリブル、パス、シュートを繰り返しました。

その他にもいろいろとやりましたが、主に役に立ったのは以上です。

3.まとめ

これまで、左利きのサッカー選手の有利さ、利き足を変えることなどについて解説しました。

左利きの選手は右利きに比べると、いろいろな有利さがあるとは思いますが、左利きのサッカー選手は天才である…という主張は言い過ぎだと思います。

右利きの選手も、左利きのように利き足に特化した練習を続ければ、天才的なサッカー選手をたくさん育てられるはずです。

そうした意味では、自分の本来の利き足を大切にして欲しいと思います。

一方、左利きに変えることは可能ですが、4~5歳頃までが最も良く、どんなに遅くとも9歳までが限界(10歳~12歳は神経系がほぼ完成する時期なので無理)ではないかと考えています。

もしも左利きにしたいと思うのなら、そうした点も考慮した方が良いでしょう。

【画像引用:Youtube.com