ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

岡部将和さんのドリブルはサッカーに役に立つ?

岡部将和さんのドリブルは上手いですが、万能というわけではありません。

でも、ある一点を改善すれば世界に通用すると思います。

そこで今回は、岡部さんのドリブルとはどのようなものか?本当にサッカーに役立つのか?という点について詳しく解説します。

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1.岡部さんのドリブルとは?

岡部さんは、自分のドリブルを「99%抜けるドリブル理論」と呼んでいますが、その特徴として3つのポイントがあると思います。

(1)絶対に勝てる間合い
(2)相手との角度
(3)ドリブルで大切なこと

そこで、彼のドリブルの3つのポイントについて、次に詳しく解説します。

(1)絶対に勝てる間合い

岡部さんは、自分のドリブルが、なぜ相手を抜けるのか?という点について、次の動画で説明しています。

特に大切なのが「絶対に勝てる間合い」に「気付かれないように忍び込む」ことだそうです。

また、絶対に勝てる間合いとは、相手の足が絶対に届かない距離にボールを置くという意味ではありません。

だからと言って、相手との距離を近づければ良いのか?というと、そうでもないのです。

この場合に重要なのは、ドリブルの3つのポイントの二つ目の「相手との角度」になります。

(2)相手との角度(縦か中か)

岡部さんが相手との角度を考える場合に重要なのは、次の3つです。

① 縦を磨けば中はひらける
② 縦突破とカットインの使い分け
③ 軸足リード

① 縦を磨けば中はひらける

先ほどの絶対に勝てる間合いは相手との距離の関係ですが、実際には、それだけでは簡単に抜けません。

そこで、もう一つのポイントとして「相手との角度」が必要になるのです。

これは、次の画像のようにディフェンスとの角度を小さくしてゴールまでの距離が近づけば、勝てる確率が上がるということです。

でも、これだけでは相手を縦に抜くことは出来ても、中には抜けません。

そこで、カットインのように中に切り込むドリブルが重要になります。

この場合、特に大切なのが、縦突破のテクニックを徹底的に練習して、相手に警戒させることだそうです。

こうした考え方を、岡部さんは「縦を磨けば中はひらける!」と言います。

つまりディフェンスに縦の突破を警戒させることで、カットインが成功すると考えているのでしょう。

そこで次に、実際の一対一の様子を見ながら、縦の突破とカットインの抜き方を考えてみましょう。

③ 縦の突破とカットインの使い分け

次の動画は、岡部さんが得意とする左サイドでの一対一の様子ですが、相手が中を警戒すれば縦に突破し、縦を警戒すれば中に突破する様子が分かります。

A.縦の突破

先ず①では、岡部さんが絶対に届かない間合いからだんだんと距離を縮めて、絶対に勝てる間合いに入ろうとします(気付かれないように忍び込む)。

次の②では、相手はカットインされるのを警戒して中を切りました。相手が左足を出そうとする動きや、体の向きが真っ直ぐサイドラインを向いていることからも分かると思います。

またこの時点で岡部さんは絶対に勝てる間合いに入ったので、③では相手の逆を突いて縦に突破しています。

B.カットイン

先ず①では、岡部さんが先ほどの縦の突破と同じように、絶対に届かない間合いからだんだんと距離を縮め、絶対に勝てる間合いに入ろうとします。

次の②では、相手は縦突破されるのを警戒して縦を切りました。相手が右足を出そうとする動きや、体の向きがやや岡部さんの方を向いていることからも分かります。

またこの時点で岡部さんは絶対に勝てる間合いに入ったので、③では相手の逆を突いてカットインで抜いています。

このように、岡部さんの縦突破とカットインを見ると、絶対に届かない間合い→絶対に勝てる間合い→相手の逆を突くという使い分けのパターンがよく分かりますね。

それでは次に、岡部さんが縦突破とカットインを使い分ける場合の独特のボールの持ち方である、軸足リードについて解説します。

③ 軸足リード

岡部さんはボールの持ち方に特徴があって、次の動画の1:30からのシーンにある通り、軸足を前に出し利き足でボールを引きずるようにドリブルします。

その理由は三つあるそうです。

一つ目は短距離走のスタートと同じ姿勢が取れるので、縦に抜く時に速くスタート出来るということです。

二つ目はこのようなボールの持ち方をすると、相手が縦を警戒して後に下がるため、カットインで中に入りやすくなるということです(動画の~)。

三つ目は骨盤を前傾した状態で右足を前に出すと、カットインへの切り替えがやりやすいということです(動画の3:43~)。

その一方で、軸足の近くにボールを置くような持ち方は良くないそうです。

その理由は、カットインを見破られたり、いったん動きが止まるため、ディフェンスに中を切られるなどの対応をされてしまうからだそうです。

要するに、岡部さんなりの考えがあるわけですね。

ちなみに岡部さんが、以前、女子フットサルチームを指導したところ、サイドの選手たちは、同じように利き足でボールを引きずるような持ち方になりました。

右サイドの選手は軸足(右足)を前に出し(ゴールライン方向)、利き足でボールを引きずっています。

左サイドの選手も同じですね。

たぶんお気づきかも知れませんが、このようなボールの持ち方はサイドの選手にのみ有効なドリブルです(詳細は後述します)。

さて次は、岡部さんのドリブルの3つのポイントの三つ目の「ドリブルで大切なこと」について詳しく解説します

(3)ドリブルで大切なこと

岡部さんがいろいろな選手を指導する時に、3つの大切な点を教えています。

① アクションドリブル

岡部さんは、ドリブルをアクションドリブルとリアクションドリブルに分けて考えています。

この2つの違いは、アクションドリブルが自ら主導権を握って仕掛けるのに対し、リアクションドリブルは相手の動きを待ってから動くのだそうです。

つまり、自分から積極的に行くのか?相手の出方を待つのか?の違いですね。

その際、リアクションドリブルはディフェンスが動かなかった場合に抜け難くなるため、自分から勇気をもってアクションドリブルで仕掛けるのが大切だと説いています。

② 勝利からの逆算

ドリブルで抜く時は、絶対に勝てる間合いで勝負するのが大切で、その間合いに入った時に確実に抜く方法があると言います(例えば相手が中を警戒したら縦に抜く)。

これは先ほどの縦突破とカットインの抜き方で解説したのと同じです。

つまり、絶対に届かない間合いからだんだんと距離を縮めて、絶対に勝てる間合いに入ったら一気に勝負するということです。

したがって、相手を縦に抜くのか?中に抜くのか?

その前に、どちらを警戒させるのが良いのか?

その前に、どのように揺さぶれば良いのか?

という点を逆算しながら考えるわけで、これを総称して「勝利からの逆算」と呼んでいます。

③ チャレンジする心

ドリブルはパスよりもボールが奪われやすいので、常にリスクがあります。

でもチームが勝つためには、自分が失敗するかも知れない…という気持ちを振り切り、強い心を持って、ぜひチャレンジしてほしいそうです。

つまり、強いメンタルを持って勝負するわけですね。

以上が岡部さんのドリブルについての解説です。

たしかに納得出来る部分もありますが、そうではないと思える内容もあるでしょう。

そこで次に、岡部さんのドリブルが、サッカーでどのくらい役に立つのか?という点を詳しく解説します。

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2.岡部さんのドリブルはサッカーに役立つのか?

岡部さんがいろいろな選手を指導する時に大切にしている、アクションドリブル、勝利からの逆算、チャレンジする心の三つについては敬意を表します。

ところが、岡部さんのドリブルが、果たしてサッカーに役立つのか?と言う点を考えた場合、それほど目新しいものではありません。

結論から言うと、サッカーの試合中の限られた状況の中でのみ通用するドリブルですね。

したがって育成年代の子供たちは、これがドリブルの全て…とは考えない方が良いでしょう。

私が思うに、次の3つの点に注意するべきではないかと考えています。

(1)絶対に勝てる間合い
(2)相手との角度
(3)岡部さんのドリブルの特徴

そこで、この3つの点について次に詳しく解説します。

(1)絶対に勝てる間合い

岡部さんの「絶対に勝てる間合い」は、次の二段階の動きになります。

一つ目は相手が絶対に届かない距離にボールを置きながら、間合いを詰める。

二つ目は相手を揺さぶりながら、縦に突破するのか?カットインで中に入るのかを判断し、絶対に勝てる間合いに入って抜く。

もしも相手を抜けない場合は、再び絶対に相手が届かない距離に戻って仕切り直しをする。

基本的にはこれだけですね。

そうすると、相手を抜くのに少し時間がかかっているのが気になりますが、実は当たり前のことをやっている…とは思いませんか?

私が考える間合いは、岡部さんの考え方とは違って「相手が足を出したくなる距離」です。

この間合いは相手を抜くために可能な限り接近するべきで、そうすると相手は足を出してくるため、その瞬間を狙って抜くことが出来ます。そのためには、ボディコンタクトを使って強引に抜くこともあります。

要するにドリブルの一対一は、相手に向かって勝負を挑むことで、初めて意味を持つのです。

しかも、現代サッカーは速い攻撃が必要なため、一対一の局面でもあまり時間を掛けられないので、速い勝負が必要になります。

また、この考え方は、メッシ、ネイマール、クリロナなどの一流ドリブラーは全て同じなのです。

岡部さんは、自分から仕掛けるというアクションドリブル(自分から積極的に仕掛ける)を推奨しているはずですし、相手を抜けなかったからと言って、一対一のやり直しは効きません。

そうであるなら、岡部さんは一対一の攻めの姿勢を持って、なるべく早く勝負することを考えるべきでしょう。

さて次は(2)相手との角度について詳しく解説します

(2)相手との角度

岡部さんの言う相手との角度で大切なのは「縦を磨けば中はひらける」でしたよね。

こうした考え方は、フットサルであればコートが狭く、縦に突破すればそのままシュートに持ち込めるので効果的だと思います。

ところがサッカーの場合はピッチが広く、縦に突破したとしても、クロスを蹴ってゴール前にボールを運ばない限りシュートに持ち込めません。

また相手チームからすると、サイドを突破されてもクロスに備えてペナルティーエリア内で守備ブロックを整えればよく、次の攻撃パターンも読めるのでかえって守りやすくなります。

その場合、高めのクロスボールが来たらヘディングで跳ね返し、グラウンダーのパスが来たらクリアーすれば良いだけです。

つまり縦に突破されても、相手チームにとっては直ちに危険な状況にはならないのです。

そうすると、サイドで一対一の守備をする選手は中を切るのを優先しますし、縦に突破されるのは仕方がないと考えます。

そもそもサッカーの試合中、サイドの一対一で相手が最も警戒するのはカットインで中に入られてしまうことです。

例えば次の動画の0:24からシーンのように、カットインからペナルティーエリアまで侵入してシュートを打たれるのはディフェンスとしては、最も嫌なパターンですよね。

そうした点ではドリブルで縦突破されたとしても、カットインで中に入られてシュートを打たれるよりは、はるかに危険性が低いのです。

私が思うに「縦を磨けば中はひらける」はフットサルだけに有効であって、サッカーでは逆ではないかと思います。

つまりサイドの一対一では、カットインで中に切れ込むのを優先するべきであって、それが出来ない場合に縦に突破すれば良いのです。

先ほどの動画のロッペンのように、ディフェンスが分かっていてもカットインで中に入られてしまう…。

しかも、ワンパターンで分かりきっているのにシュートまで打たれてしまう…。

実は、そうした選手の方が相手にとっては恐ろしいのです。

このように考えると、日本代表の試合では縦突破からのクロスが多いと思いませんか?

その理由は、カットインで中に入りこめるようなドリブラーが、ほとんどいないからです。

また相手チームもそのことを分かっているので、先ほども解説したようにクロスに備えた守備をすればよいため、あまり怖くはないのです。

そうした意味で、日本が海外の強豪国に勝てるようになるためには、「縦を磨けば中はひらける」ではなく、先ずは「中を磨く」ことの方が重要だと思います。

さて次は(3)岡部さんのドリブルの特徴について詳しく解説します

(3)岡部さんのドリブルの特徴

岡部さんのドリブルは、結論から言うと、サイドの一対一で、ボディコンタクトがない場合に通用するものだと思います。

そうした点で3つの特徴があります。

① サイドの一対一で有効なドリブル
② 軸足リード
③ 身体能力の高さとボディコンタクト

① サイドの一対一で有効なドリブル

岡部さんがイベントなどで一対一をやる時は、ほぼ左サイドから攻撃します。

もちろん右サイドや中央で相手を抜くこともありますが、やはり左サイドが多いですね。

その理由は岡部さんのドリブルが、サイドの一対一の時だけに通用するからです。

どうして岡部さんがサイドの一対一を得意とするのかというと、ボディコンタクトが苦手だからです。

また、実際の試合でもサイドの一対一はフィジカルコンタクトが比較的少ないため、岡部さんのテクニックが通用するのでしょう。

ちなみに岡部さんは中学生の時に横浜マリノスジュニアユースに入団しましたが、フィジカルに問題があったため、パサーを目指すよう指導された経緯があります。

さらに高校や大学でも、ドリブルの技術を徹底的に練習しましたが、やはりボディコンタクトを克服することは出来なかったようです。

この場合、実際の試合でのドリブルはサイドだけで使うものではありませんよね。

例えば、次の動画のようにディフェンスがたくさんいる密集地帯を突破したり、一人で何人もの相手を抜いたりするケースもあります。

そうした場合はフィジカルコンタクトが不可欠ですし、腕を使ってボールを守るテクニックも必要です。

結局、岡部さんのドリブルは、サイドの一対一でフィジカルコンタクトがない時だけに通用するものと考えた方が良いでしょう。

② 軸足リード

岡部さんがサイドでドリブルする時に、軸足リードと呼ぶボールの持ち方がありますが、これは彼が独自に考えたわけでなく、ネイマールやアザールなどのサイドプレーヤーもよく使います。

でもネイマールやアザールは、これがドリブルの全てではなく、メッシのように密集地帯を突破する場合もあります。

そうした場合、このようなボールの持ち方はしませんし、きちんと前を向いて仕掛けます。

つまり軸足リードはサイドで有効なボールの持ち方であって、ピッチのどの場所でも使えるわけではないのです。

そうした点では、先ほども解説したとおり、岡部さんのドリブルはサイドの一対一でのみ使えるテクニックであると考えるべきでしょう。

その一方で、軸足リードでボールを蹴って縦に突破するのは育成年代の子供たちの手本にはならないと思います。

例えば、次の動画の子供たちは必ずしも軸足リードを使っているわけではありませんが、相手を抜く時に大きく前に蹴っていますよね。

これは一見して大きなアドバンテージになると思われがちですが、相手と競争しなくてはならないためボールを奪われる可能性が高くなります。

また岡部さんの軸足リードを使った縦突破も、基本的にはこの子供たちと変わりません。

実は、このように前に蹴って相手を抜けるのは岡部さんの足が速いからです。

そうした点では、子供たちにはきちんと岡部さんの特徴を理解させた方が良いと思います。

さて次は、岡部さんの身体能力の高さとボディコンタクトについて詳しく解説します

③ 身体能力の高さとボディコンタクト

次の動画を見ると分かりますが、岡部さんがドリブルする時は両手をやじろべい(バランサーとして使う)のように広げているように見えませんか?

これはボディバランスの良さを意味していて、身体能力が高い選手の特徴なのです(ボディバランスの良さと身体能力の高さは深い関係がある)。

動画に出て来るネイマールも、やはり岡部さんと同じように両手を広げてブラブラさせていますよね(ブラジルの黒人系の選手は身体能力が高い)。

しかも岡部さんのドリブルは、体が浮くような空中動作が多いのも特徴です。

こうした動作は、古武術の「浮身」と同じで、動作を急に変えたりする時に良く使いますが、サッカーであれば突破の動きやターンなどに応用できます。

そうすると岡部さんのドリブルは、日本人特有の足の力だけに頼った動作ではなく、上半身も使った全身運動をしているわけですね。

だから、牛若丸のような「ひらりひらり」という身軽な動きが出来るのでしょう。

また上半身も使っていて体幹の動きも柔らかいはずなので、ヘッドストールも得意だと思います。

そうすると次の画像のように体幹がコンニャクのように使えるので、相手からの衝撃も簡単にかわせるのではないでしょうか?

実際にも、私のブログで紹介した一本歯下駄トレーニングによって、体幹の柔らかさが身に付いて倒れにくくなった子どもは多いです。

そうすると、岡部さんはそれほどフィジカルコンタクトが苦手とは言えず、むしろトレーニングの工夫で克服できたと思います。

例えば、中田英寿がイタリア・セリエAのペルージャに移籍した際に、バランス能力と下半身の筋力補強をしてフィジカルコンタクトが強くなった例もあるのです。

そうした点では、岡部さんが横浜マリノスジュニアユース時代にフィジカルに問題があるとされ、パサーを目指すよう指導されたのは、指導者たちが彼の才能をきちんと見抜けなかったと言えるでしょう。

もしも岡部さんの才能をきちんと見抜いて育成したら、世界的に通用する選手に育っていたかも知れません。

何しろ、日本人としては珍しいほどの身体能力の持ち主ですし、そうした意味ではとても残念に思えます。

その一方で、岡部さんのドリブルはサイドの一対一に限定するのではなく、メッシのように何人もの相手を連続して抜くようなテクニックをぜひ見せてほしいと思います。

また、それだけの身体能力も持っていますし、それが出来てもおかしくないと思えるのです。

そうした意味でも、サイドの一対一のドリブルに限定するのは惜しいですし、ぜひ高い次元のドリブルに挑んでほしいと考えています。

また、そうした成果を選手たちに指導すれば、世界的なプレーヤーをたくさん育てられるのではないでしょうか?

岡部さんなら絶対出来るはずですし、ぜひチャレンジしてほしいですね。

3.まとめ

これまで解説した岡部さんのドリブルは、サイドの一対一で、フィジカルコンタクトがないという、試合中の限られた状況でのみ通用するものだと思います。

つまり、岡部さんの現在のドリブルは、試合中の全ての局面で通用するわけではないのです。

でも、岡部さん自身はとても高い身体能力を持っていますし、フィジカル面を強化すればボディコンタクトも強くなったはずです。

そうすればサイドの一対一だけではなく、例えば密集地域を含めたピッチ上のあらゆる場所で通用するドリブルが出来たはずです。

そうした意味では、現在よりも高い次元のドリブルを目指し、ぜひ世界的に通用するドリブラーを一人でも多く育ててほしいと願っています。

【画像引用:Youtube.com