ワンツーパスはパスサッカーの大切な基本のプレーの一つです。
そこで今回はワンツーパスとは何か、その本当の意味、練習法などについて解説します。
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1.ワンツーパスとは
ワンツーパスは「壁パス」とも言われ、次のように守備者を壁に見立てて、これを避けるようにパスを通すプレーを指します。
また攻撃側の①はドリブルでディフェンスに接近するか、守備者にわざとプレスをかけさせるなど、間合いを詰めてから②にパスを出すとディフェンス側が反応し難くなるので上手く行くでしょう。
こうしたプレーは一部のネット情報によると、誰でも出来る簡単なもの…という意見がよく見られます。
でも、そうした発想は巷でよくありがちなドリブルの足技を覚えて自己満足するだけの低レベルな考え方と変わりません。
そもそもこの場合に大切なのは単にパスを通すだけの個別のプレーとして考えるのではなく、試合中のパスサッカーにどのように活かすのか?という視点を持つことです。
そうした意味ではワンツーパスの本当の意味をきちんと理解して、試合で効果的に使えるようにしましょう。
2.ワンツーパスの本当の意味
次の動画はメッシとイニエスタのワンツーによってセルヒオ・ラモスを抜くシーンですが、このプレーには大切な3つの意味があります。
(1)数的優位
数的優位の最小単位は2対1ですが、ワンツーも同じ2対1になります。
そうすると子供たちにとって、ワンツーは数的優位の入門的なプレーになるわけですね。
だから単にパスを通すだけではなく、せっかくの数的優位をさらに活かすためにはどうしたら良いだろうか?そのためには次はどのように動けば良いのだろうか?といった状況判断を促す絶好の機会になります(詳細は後述します)。
(2)スペースを作る
ワンツーをやろうとする選手に対してDFがプレスを掛けると、そのディフェンスの背後には必ずスペースが出来ますよね。
そこで攻撃側は相手を引きつけることで、意図的にスペースを作り出すという発想が必要です。
これはダイアゴナルランで相手を釣り出したりするのと同じ考え方なので、ぜひ覚えましょう。
また相手をギリギリまで引き付けるのは、ドリブルの間合いを覚えることと同じ意味を持ちます。
つまりスペース(DFの背後)を作るためには同時に相手との間合いも必要になるので、ぜひそうした点も覚えましょう。
※日本では間合いをドリブル特有のスキルと考えがちですが、これは大きな間違いです。
(3)ダイレクトパスの精度
先ほどの動画では、メッシからのパスをイニエスタがダイレクトパスで返しましたよね。
そうするとパスを返す選手は、DFの背後のスペースに走り込む選手の動きに合わせてパススピードを速めたり遅くしたりというコーディネーション能力が必要になります。
そうした意味では単にパスを返せばよい…という発想ではなく、2人で協力して一つのプレーを完成させるというコンビネーションプレーの精度を意識しましょう。
このようにワンツーパスの本当の意味を考える上では、3つの点が大切です。
そうした意味では単に教科書的なプレーとして覚えるのではなく、その本質をきちんと理解しましょう。
そうすることで、日本人にも正しいサッカー観が根付くと思います。
それにスペイン帰りのどなたかが「テクニックは上手くてもサッカーが下手な日本人…」と揶揄していますからね(笑)。
さて次は実際の試合のゴール前のワンツーパスを見ながら、先ほど解説した3つの意味(数的優位、スペースを作る、ダイレクトパスの精度)がどのように活かされているのかを解説します。
3.ゴール前のワンツーパス
次の動画ではゴール前で使われた4つのワンツーパスがあるので、順に解説しましょう。
なおいずれのケースもワンツーを使う時に守備側がボールウォッチャーになりますが、これは3人目の動きやダイアゴナルランなどと同じディフェンス特有の現象なので参考にしてください。
一つ目は、ワンツーパスを2回使って狭い場所を通ってDFラインの裏に抜けています。
また、狭い場所でのダイレクトパスがピンポイントで2回も繰り返し繋がっていますよね。
これはパスの精度を考える上でとても大切なスキルです。
二つ目は、浮き球のワンツーパスを使って相手の4人のDFを一気に抜いています(つまり数的不利が一気に数的優位になる)。
またラストパスを出す時にギリギリまでDFを引き付けるテクニックは、かなり参考になりますね。
三つ目は、ワンツーパスでDFを釣り出してスペースを作って、そこに侵入してシュートを打っています。
こうしたDFを釣り出すプレーは、数的優位をさらに活かすという点で大切です。
四つ目は、ポストプレーのようなワンツーから、さらに3人目の動きが加わっています。
これは数的優位をさらに活かすという発想ですね。
こうして考えると試合中は単なるワンツーパスに止まるだけではなく、さらに攻撃を飛躍させるという考えを持つことが大切です。
そうした点はいろいろと考えさせることで、選手たちの状況判断が良くなります。
さて次はワンツーをパスサッカーに活かすという点で、FCバルセロナのプレーを見ながら詳しく解説します。
4.パスサッカーとの関係
次の動画では、バルサの選手たちがパスサッカーにワンツーを活かす3つのシーンがあるので順に解説します。
一つ目は、狭いエリアの中で前後左右にパスコースを作ってワンツーやリターンパスを多用していますよね。
これはバルサがパスを出すと相手が動かされてスペースが出来て、そのスペースに味方が入ってパスを受けるということです。
また徐々にペナルティエリアに侵入して行くわけですが、ゴール前ではたった二人だけのワンツーで相手のDFラインを崩してしまうのを見ると、それだけワンツーの破壊力が高いということですね。
二つ目は、中盤の狭いエリアの中で前後左右にパスを繋ぎながら、CBを釣り出してスペースを作っています。
このシーンでは直接ワンツーは使っていませんが、ワンツーに近いパスを多用していることや、パスを繋ぎながら相手を崩すという点では参考になると思います。
三つ目は、先ほどと似ていますが、ワンツーパスでCBを釣り出してスペースを作っています。
また一つ目のシーンと同じように、最後はワンツーパスだけで相手を崩してシュートまで行っていますよね。
つまりそれだけワンツーが効果的ということです。
このようにバルサは中盤でパスを繋ぎつつ、ゴール前でチャンスになったらワンツーを効果的に使っているので、テレビなどで観戦する時はぜひ参考にしてください。
5.練習法
ワンツーパスの基本の動きを覚えるだけなら、30分も練習すれば誰でも出来るようになるでしょう。
でもパスサッカーで相手を崩す…という点を考えるのであれば、ぜひミニゲームのような試合形式の練習の中でワンツー以外のいろいろな動きも合わせて覚えましょう。
そうすることで、子供たちにワンツーの大切な3つの意味が理解出来ると思います。
(1)数的優位
ワンツーの基本は数的優位にあるので、先ずは2対1と3対2の数的優位の練習をやりましょう。
その際、相手を引きつけてDFの背後にスペースを作ってからパスを出したり、ダイレクトパスの精度(コーディネーション)を高めるようにしましょう。
(2)数的同数
数的同数の場合は3対3や4対4から、いかにして数的優位を作ってワンツーをやるのかが大切です。
その際、バルサの中盤でのパス回しを想定して前後左右にワンツーを繋いでDFを動かしても良いですし、ゴール前を想定してディフェンスを崩す練習をやっても良いでしょう。
またワンツーで2対1を作ると必ず攻撃側の人数が余る(3対3なら1人。4対4なら2人)ので、その選手は3人目の動きやダイアゴナルランなどの動きを組み合わせると実際の試合でも活かせます。
(3)ダイヤモンドパス
次の動画のようなダイヤモンドパスはどこのチームでも練習していると思いますが、この練習の全てのパスがワンツーになりますし、とても基本的な動きなのでぜひ練習に取り入れてください。
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6.まとめ
これまでワンツーパスとは何か、その本当の3つの意味(数的優位、スペースを作る、ダイレクトパスの精度)、練習法などについて解説しました。
この場合に大切なのはワンツーが単にパスを通すだけの個別のプレーとして考えるのではなく、パスサッカーにどのように活かすのか?という視点を持つことです。
その際、先ほども解説したとおり数的優位、スペースを作る、ダイレクトパスを使うという3つの点がとても重要です。
そうすることで、日本人にも正しいサッカー観が根付くはずです。
こうした点は、日本の指導では意外と見落とされがちなので注意してください。
ぜひ多くの子供たちのワンツーパスが上手くなるのを願っています。