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体が開くとは?サッカー指導者が気付かない両足練習の弊害!

サッカーで体が開くと、ドリブル、キック、トラップなど全てのプレーで力を発揮できません。

そのため、野球、ゴルフ、格闘技など、ほぼすべてのスポーツでも体の開きを抑えています。

だから、サッカーの練習においても、体の開きを抑えるための正しいトレーニングが必要です。

ところが、日本の育成年代の指導者たちは両足練習ばかりやらせているので、ほんどの子供たちの体が開いています。

これでは、優秀な選手は育たないでしょう。

そこで今回は、サッカーで体が開くとは何か?体が開くとどのような問題があるのか?体の開きを抑えるための練習法などについて解説します。

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1.体が開くとはどういうことか?

(1)体が開いた状態とは

体が開くとは、両足を揃えて左右の胸とお腹が正面を向いた状態で、簡単に言えばふつうに立った姿勢を指します。

また、体が開かないとは、体の左右どちらか一方を前に出し、もう一方を下げるという状態で、いわゆる「半身」の姿勢(体を斜めにする)です。

この場合、日常生活で立ったり、座ったり、歩いたりする時に半身の姿勢を取らない限り、その全てが体が開いた状態になります。

だからと言って、特に不自由を感じるわけではありません。

その理由は、体が開いていた方が楽ですし、疲れないからです。

つまり、体が開いた状態は、日常生活を営む上でとても好都合な姿勢ということですね。

ところが、この状態ではサッカーなどのスポーツには向きません。

その理由は大きく分けて3つあります。

① パワーが集中できない。
② 体の軸が不安定。
③ 上半身が使えない。

つまりサッカーなどのスポーツでは、半身を維持するなど、日常生活とは全く違った姿勢が必要なのです。

この場合、私の息子「とも」は利き足でボールを持ち、常に半身の姿勢を維持するので体が開きません。

例えばドリブルで、体が開く人(私)と開いていない人(とも)が対峙する時はアルファベットの「T」の字になりますが、これは「股抜きのタイミングは2つだけ!必ず効果が出る練習法とは?」の記事で解説した姿勢そのものですね。

要するに、体の開きを抑えた姿勢を取り続けないと、①パワーが集中できない。②体の軸が不安定。③上半身が使えないため、十分なパフォーマンスが発揮できないわけですね。

それでは次に、こうした体が開いた場合の3つの弊害について、順に解説します。

(2)体が開いた場合の弊害

①パワーが集中出来ない

ここではパワーを集中する意味、体が開いた場合の弊害について、順に解説します。

A.パワーを集中するとは

体の開きを抑えると、全身のパワーが一点に集中出来るので素早い動きが出来ます。

また、こうしたパワーを一点集中する考え方はどのようなスポーツでも基本とされ、物理の分野でも常識です。

例えばカナヅチで釘を正確に打つためには、カナヅチを垂直に振りおろしますよね。

この時、垂直に叩くのは、釘の頭にカナヅチのパワーを一点集中させることで非力な子供でもきちんと釘を打ち込めるのです。

その反対にカナヅチを斜めに叩いたら、パワーが一点に集中出来ないので、釘を真っ直ぐ打てずに曲がってしまいます。

サッカーのプレーも、これと全く同じで、ドリブルやキックなどで体が開かない状態の方がパワーを一点に集中出来るのです。

B.パワーが集中できないとは

体が開いた姿勢では、パワーの一点集中は出来ません。

なぜなら、体が開くと100の力を一点に集中するのではなく、右半身と左半身に50ずつ分散してしまうからです。

そうすると、この状態で前に向って力を出そうとしても、パワー不足なのでスピードも出せません。

そうすると、素早い動きは出来ないのです。

例えば土屋健二さんのジンガステップやジンガドリブルは体が開いた状態なので典型例だと思います。

そうした意味では、こうしたパフォーマンスをいくら練習してもサッカーの試合ではほとんど役に立たないのです。

さて次は、体の開きと軸の強さについて詳しく解説します。

② 体の軸が不安定

ここでは体の軸について、体が開いていない場合(安定)と、体が開いている場合(不安定)を順に解説します。

A. 体が開いていない場合

体が開いていない選手は、軸足と中心軸(腹部や背骨周辺などの体幹の筋肉)を使って全身を支えることが出来ます。

例えば、私の息子「とも」は左利きなので、軸足(右足)と中心軸(体幹の筋肉)を使って、左半身を前に出して右半身を後ろに下げるという半身の姿勢を維持します(半身の姿勢は軸が安定)。

そうすると、前後左右全ての方向からの力を押し返せますし、また全ての方向に素早く動き出せるのです。

なぜなら、先ほど解説したように、どのような方向に対してもパワーを一点に集中できるからです。

ところが体が開いている選手は、このような動作が上手く出来ません(理由は後述します)。

要するに、体が開いていない場合は体の軸が安定しているわけで、逆の言い方をすると、体の軸を強化しないと体の開きを抑えられないということですね。

実は、このような軸足と中心軸の使い方は、フラミンゴの片足立ちと比べると面白いことが分かります。

これまでフラミンゴの片足立ちの理由は、水辺で両足立ちを続けると体温が低下するので片足立ちになるとか、片足で交互に立つ方が疲れないという考え方が一般的でした。

ところが、2017年5月にジョージア工科大学のヤング・ホイ・チャン氏とエモリー大学のレナ・ティン氏が共同発表した論文によれば、片足立ちは重心バランスを取るためという説が公表されています。

つまり、フラミンゴの片足立ちは、バランスを取るための軸足(ヒトに例えた場合)になっているわけですね。

しかも、フラミンゴの体重は3㎏程度しかないので、片足立ちを続けても全く苦にならないのです。

ここで話をサッカーに戻すと、ドリブルやキックなどのボールプレーのほとんどは片足立ちですよね。

この場合、サッカー選手の平均体重が60㎏だとしたら、その全体重を片足で支えるわけなので、軸足と中心軸(体幹の筋肉)をかなり鍛えないと、まともなプレーが出来ません。

つまり、フラミンゴの10倍以上の体重を片足で支えるわけですし、しかもプレー中は全身のバランスを取らなくてはいけないのです。

私のブログでは「ちょんちょんリフティング」などで軸足の強化を!という解説が多いですが、厳密に言うと軸足だけではなく体の中心軸にある体幹も鍛えられるので、ぜひ全国のサッカー少年におススメしたいですね。

※体幹と軸足を鍛えることや、ちょんちょんリフティングの効果を詳しくお知りになりたい方は、次の記事をお読みください。
キックは軸足を鍛えて上手くなる!トレーニング法も解説
ちょんちょんリフティングがサッカーに役立つ驚きの効果
利き足リフティングの効果は3つ!両足練習は役立たず?

いずれにしても、体が開いていない場合は体の軸が安定するという点をご理解ください(逆に言えば、体の軸を強化しないと体の開きを抑えられない)。

B.体が開いている場合

体が開いている選手は、軸足と中心軸を使った片足立ちで全身を支えるのが上手く出来ません。

なぜなら、体が開いた状態は、両足で体重を支えるような日常生活に適した姿勢(つまり両足立ち)であって、サッカーをやる時もこの姿勢を取ろうとするからです。

つまり、軸足と中心軸を鍛えて使いこなせない限り、常に体が開いた両足立ちの姿勢を取ってしまう…というわけですね。

この場合、サッカーのボールプレーは両足立ちではなく、もっぱら片足立ちですよね。

そうすると体が開いている選手は片足立ちが苦手なので、そもそもサッカーが上手くならないのです。

その一方で、体が開いた両足立ちの姿勢に慣れてしまうと、前後左右からの力に押し負けますし、また全ての方向に素早く動き出すのはなかなか難しくなります。

なぜなら、全身のパワーを一点に集中できないからです。

例えば次の画像のように、体を開いている時に、前から押されるとカカトで全体重を支えるしか出来ませんよね。

これは軸足と中心軸を使って体を支えていない…、つまり体に軸がないのと同じで、バランスが不安定になってしまうのです。

したがって、体が開いた状態は、立ったり歩いたりという日常生活の姿勢を続ける時のみ有効であって、サッカーのようなアクティブな動作の多いスポーツには向かないわけですね。

その一方で、ヒトには日常生活で立ったり歩いたりという日常生活の姿勢を維持するために「抗重力筋」が備わっています。

その際、体が開いた選手は抗重力筋に依存したプレー、つまり日常生活で利用する筋肉を使おうとするのです。

特に、太ももの前側にある大腿四頭筋がよく使われます。

そうすると、体が開いている選手は、太ももの前側が太くなっているのが特徴です。

その反対に体の後ろ側の筋肉(ハムストリングス)や、中心軸(体幹の筋肉)は、日常生活ではほとんど使われません。

だから、体を前に早く動かしたり、体を安定させたりするのが苦手なので、当然のようにプレーのパフォーマンスが低くなるわけですね。

要するに、体が開いた状態では、軸足と中心軸が弱くて使いこなせないですし、その他にも日常生活の用途に限定された「抗重力筋」を使おうとするわけで、良い事などは何一つないのです。

③上半身が使えない

先ほども解説したとおり、体が開いている選手は、日常生活でよく使われる抗重力筋に依存したプレーが多くなります。

その場合、最も多く使うのは大腿四頭筋などの下半身の筋肉です。

そうすると、二つの大きな問題が起こります。

A.上半身のバネ作用が使えない。

体が開いた選手は、下半身の筋肉に依存してプレーするため、ヒトに本来備わっている上半身のバネ作用(背骨や体幹)が使えません。

つまり、下半身のバネだけを使うので、上半身のバネが使えない分だけプレーのパフォーマンスが低くなります。

ちなみに、こちらの動画では、FCバルセロナのメッシが上半身と下半身のバネを効果的に使っている様子を解説しているので参考にしてください。

ほとんどの人が知らないメッシの本当の凄さが分かると思います。

なお、体が開いていない選手であっても、上半身のバネを使えていない場合もあるので、この点はご注意ください。

B.上半身が重りのようになる

体が開いている選手は、下半身の筋肉や足腰のバネだけに依存してプレーするので、上半身はほとんど使いません。

そうすると重たい上半身を下半身の力だけで、「よいしょ!」と運んでいるようなものです。

また上半身と下半身の体重比は6対4で上半身の方が重たいことから、素早い動作は出来ません。

見た目としては、小学校低学年までの子供に多いドタバタした動きになります。

いずれにしても体が開くと上半身が使えないので、サッカーにおいてもパフォーマンスが落ちるだけなのです。

こうした体の開きは、サッカー以外のスポーツでも同じ考え方があります。

そこで次に、他のスポーツに見られる体の開きや体の開きを抑える方法について詳しく解説します。

2.他のスポーツに見られる体の開き

ここでは体が開く状態が比較的分かりやすい例として、格闘技、野球、ゴルフなどの動作を解説します。

(1)格闘技と体の開き

格闘技は、お互いに体の開きを抑えた半身の姿勢を取り続けながら試合します。

その際、試合中に半身の姿勢が維持できなくなると、パワーを一点に集中できないため、相手の攻撃をまともに受けてしまうのです。

① ボクシング

ボクシングでは左右の肩、胸、腕の一方を前に出し、もう片方を後ろに下げた姿勢を取ります。

この姿勢は体を斜めにしているので、特に分かりやすいですよね。

また半身の姿勢を維持していれば、相手のパンチを受けても衝撃をかわすことが出来ます。

つまり体が開いていなければ防御もしやすいということですね。

ところが体が開いて半身の姿勢を維持出来ないと、相手の攻撃を防げなくなりますし、パワーを一点に集中できないので反撃も出来ません。

② 柔道

柔道もボクシングと同じように、半身の姿勢を取ってパワーを一点に集中して攻撃します。

ところが体が開いてしまうと防御の姿勢が取れない(パワーを一点に集中できない)ので、簡単に投げられてしまいます。

③ 相撲

相撲の場合はやや分かり難いですが、やはり半身の姿勢で体の開きを抑えて攻めます。

次の画像のように黒のまわしの力士は、左腕、肩、胸を前に出し(いわゆる「左からのおっつけ」)右半身を後ろに引くことで、体の開きを抑えてパワーを一点に集中しています。

これに対して、青のまわしの力士は、かろうじて左足で踏みとどまっていますが、体が開いた棒立ちに近く、左右の胸、腕、肩が揃って前を向いています。

こうなると青のまわしの力士は力を出せない(パワーを一点に集中出来ない)ので、土俵から押し出されしまいます。

(2)野球

野球のバッティングを例にすると、次の動画では「体が開くとは、体の中の力が外に逃げること」と説明しています。

体の中の力が外に逃げる…というのは、「パワーが一点に集中出来ない」というのと同じ意味です。

右バッターであれば、左肩と左ヒザがピッチャーの方を向いてスイングすると体が開いた状態になります。

そうするとピッチャーのボールに対して振り遅れるなど、バットスイングが遅くなるのです。

つまり、野球のバッティングでは、体の開きを抑えてパワーを一点に集中してバットスイングを速くするわけですね。

(3)ゴルフ

ゴルフの場合も野球と同じで、ボールを飛ばす方向に上体を早く向け過ぎると体が開くので、パワーを一点に集中できません。

そうするとスイングスピードが遅くなって、ボールが遠くに飛ばなくなるのです。

結局、サッカー以外の他のスポーツにおいても、体の開きを抑えることでプレーの質を上げているわけですね。

要するに、ほとんどすべてのスポーツにおいて、体の開きは絶対に良くないのです。

さて次は、体の開きを抑える方法について詳しく解説します。

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3.体の開きを抑えるためには?

(1)利き足でボールを持つ

サッカー選手として体の開きを抑えるためには、特に幼少期から正しいトレーニングを続けましょう。

最も重要なことは、利き足をメインにしてプレーすることです。

利き足をきちんと使ってプレーすると、今回の記事の最初に解説したとおり、半身の姿勢を維持するので体が開かなくなります。

そのために最も効果的な練習は、利き足のインステップリフティングです。

このリフティングを練習するだけでも、体の開きがなくなるので、ボールを持つ時の姿勢がかなり改善します。

だいたい200~300回くらいを超えたあたりで、まるで海外のトッププレーヤーのように体の開きがなくなります。

そうすると、小学校低学年によく見られがちな、ドタバタした感じもなくなるのです。

ちなみにヒトが立っている時は、左右の足で体重を半分ずつ支えているわけではありません。

ヒトの左右の足は、どちらか一方が利き足で他方が軸足として使われます。

そうすると、実は立っている時の姿勢では、体重のほとんどを無意識のうちに軸足で支えているのです。

そうした意味では、利き足は正確で素早い動作に使われ、軸足は体全体を支えることが主な役割になります。

だから、利き足を使ってサッカーをするのは、体の基本構造に合ったとても自然なことなのです。

※利き足を使う意味を詳しくお知りになりたい方は、次の記事をお読みください。
サッカーの利き足と逆足は役割が違う!海外と日本の比較

(2)過度な両足練習を止める

日本のサッカー指導では、試合で両足が使えるように…と言う理由で、幼少期から両足練習を繰り返します。

こうした練習は、体が開くクセを身に付けるだけです。

また、両足のマーカードリブルや両足リフティングなどの練習は歩く動作と変わりません。

これは単に抗重力筋を鍛えているだけであって、サッカーで最も大切な軸足や中心軸(体幹)を強化していないのです。

こうして両足練習を繰り返した子供たちは体が開いてしまうため、両足の間にボールを置くという独特なボールの持ち方をします。

次の動画の0:36からのシーンに出てくる、ほとんどの子供が両足の間にボールを置いて体が開いていますが、これが日本の少年たちの現実なのです。

私は、逆足練習を否定するつもりはありません。

幼少期からの過度な両足練習が問題だと考えているのです。

両足練習を始めるのは利き足のレベルを上げ、全てのテクニックをマスターしてからでも遅くはありません。

一方、近年では土屋健二氏のジンガドリブル(ジンガステップ)なるものが、全国に広まりました。

体を左右に回転したり体幹を使っているように見えますが、この動きはサッカーにはあまり意味がなく、ダンスパフォーマンスと同じレベルのものです。

しかもボールにタッチしながら、左右の胸とヒザが同じ方を向いていて、体が開いた状態を続けます。

こうしたパフォーマンスは全国の子供たちに大人気のようですが、このような練習を続ける限り、パワーを一点集中出来ないので、素早く動けませんし、実際の試合でも役に立ちません。

したがって、こうした体の開きを助長するようなドリブルは、大人がきちんと弊害を理解して、子供たちに正しいテクニックを教えないといけないのです。

※ジンガステップの弊害を詳しくお知りになりたい方は、次の記事をお読みください。
ジンガステップは本当にサッカーが上手くなるのか?

4.まとめ

これまで、体が開いた状態ではドリブル、キック、トラップなどの全てのプレーにおいて、十分な力を発揮出来ないことを解説しました。

その理由は大きく分けて3つあります。

① パワーが集中できない。
② 体の軸が不安定。
③ 上半身が使えない

また、サッカー以外のほぼ全てのスポーツで、体の開きを抑えるのが大切とされています。

ところが、日本のサッカー指導は幼少期から両足練習を繰り返すため、子供たちの体の開きを助長しています。

これは、指導者たちが体の開きを抑えるという正しいスポーツ理論を理解していないことによる弊害です。

そうした意味でも、一人でも多くのサッカー関係者に体が開くことの弊害を理解して、正しいトレーニングを指導してほしいと願っています。

【画像引用:Youtube.com