ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

パス&ゴーの3つの注意点と正しい練習法!

サッカーのパス&ゴーは今や小学校低学年でも覚える基本のテクニックですが、その際に注意するべき3つの点があります。

そこで今回はパス&ゴーとは何か、3つの注意点、正しい練習法について解説します。

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1.パス&ゴーとは何か

パス&ゴーとは、パスを出した後に次のプレーに備えて動き出すことです。

この場合、もしもその場に立ち止まっていたら次の攻撃に参加できませんよね。

また攻撃に参加し続けないと、せっかくパスを受けた味方が孤立(数的優位が消える)することもあり得ますよね。

そうすると攻撃の際に味方との数的優位を作りやすくするという重要性もあるのです。

その際、特に注意するべき三つの点があるので次に詳しく解説します。

2.三つの注意点

(1)パスの蹴り方

試合中のパスはインサイドキックをよく使いますが、日本では未だに次のようなパター型で蹴る選手が多いようです。

こうした蹴り方はフォロースルーで体がそっくり返るため、体勢を立て直すのに時間がかかってしまって素早いパス&ゴーが出来ません。

これに対して正しい蹴り方は、いつも直立姿勢を保てる(蹴った後にそっくり返らない)ので蹴り足が自然と前に出ます。

つまり蹴り足が一歩目になって、パス&ゴーがスムーズになるということですね。

そのためにも、ぜひ正しいインサイドキックを覚えましょう。

(2)膝抜きを使った走り方

パス&ゴーで蹴り足が一歩前に出せたとしても、後ろ足(つまり軸足)で地面を蹴って走り出していたのでは動き出しが遅くなります。

こうした走り方は体重移動と言って、下半身を使って重たい上半身を「ヨイショ」と運ぶようなものです。

そこで膝抜きを覚えて、一歩目で出した前足を効果的に使って動き出しを速くしましょう。

こうした膝抜きは重心移動を使うことで筋力に頼らないことから、特に小中学生のサッカー選手には今のうちにぜひ覚えてほしいですね。

(3)パス&ゴーの考え方

日本では、パス&ゴーは直線的に長い距離を走るものと考えがちです。

その理由はパス&ゴーの練習方法として、次の動画のようなメニューが多いからです。

この場合、動画の前半の練習ではパスを出して真っ直ぐ走っているだけなので、単なる対面パスと同じようなものです。

もちろんダイアゴナルランを意識してわずかに斜めに走っていますが、こうした斜めの動きは試合形式の練習で身に付けるものだと思います。

これに対して動画の後半に見られるワンツーをひたすら繰り返すのは、たしかにパス&ゴーにはなるものの、試合中にこのようなケースはあり得ません。

こうした二つの練習に共通するのは、パス&ゴーは真っ直ぐ長い距離を走るものと考えていることです。

ところが試合中はパスを出した後にいつも直線的に走るのではなく、単に場所を移動するだけの場合も多いです(例えば1~2m程度の移動)し、そのまま止まっていることさえあります。

そもそもサッカーの攻撃においては守備側がゾーンディフェンスで守るため、ボールを運ぶゾーン(いわゆる中盤)とディフェンスラインを崩すゾーン(いわゆるゴール前)とでは選手の動き方が全く違います。

※運ぶゾーンと崩すゾーンの位置関係の違いは、次の動画の0:06から出て来るシーンをご覧ください。

その際、次の動画のようにボールを運ぶゾーンではパス&ゴーで長い距離を速く走る必要はありません(パス&ムーブになる)。

なぜならボールを繋いで奪われないことを重視するので、あまり急いで走る必要がないからです。

それにパスを出してもほとんど動かない選手もいますよね。

これに対して2列目の裏にボールが入るとディフェンスラインの崩しが始まるので、攻撃をスピードアップする必要があります。

なぜなら、そうしないと2列目の守備者が戻ったりゴール前を固められて、攻撃側が数的優位を作れなくなるからです。

そうするとこのゾーンでは直線的な速いパス&ゴーで、いち早くディフェンスラインを崩してシュートまで行く必要があるわけですね。

そうした意味でパス&ゴーはパスを出して真っ直ぐ走れば良いというだけの考え方ではなく、中盤での短い距離を移動するパス&ムーブとゴール前で直線的に走るパス&ゴーに分けて考えた方が良いと思います。

特に日本のサッカーは代表クラスでもボールを運ぶゾーンで一生懸命走ったり、ディフェンスラインを崩すゾーンで動きが急に遅くなったりなど…、とてもチグハグな攻撃が目立ちます。

そうした点で、育成年代のうちからパス&ゴーの本質(つまり運ぶゾーンと崩すゾーンでの動き方の違い)を理解させるべきでしょう。

さて次は練習法について解説します。

3.練習法

パス&ゴーの練習法は「運ぶゾーン」と「崩すゾーン」を想定して、それぞれに分けた練習メニューを考えましょう。

(1)運ぶゾーン

海外では、中盤でパスを出した後の動き方をパス&ムーブと呼んでいます。

こうした練習によって、パスを出したら次にパスを受けるポジションに的確に動くため「どのように動けば良いのか?」という状況判断も身に付くのです。

練習方法としては、次の動画のようにトライアングルパス、パス&ムーブ、コンビネーションなどが良いでしょう。

いずれのメニューも小中高生の基本メニューと考えてください。

もちろんパスを受けたらすぐにパスを出すのではなく、トライアングルパスのようにドリブルでパスを出しやすい場所に運んでも構いません。

こうしたほんの僅かな工夫が選手に考える力を生み出します。

(2)崩すゾーン

崩すゾーンでは、パス&ゴーの直線的な動きが必要です。

最も効果的な練習メニューはワンツーパスです。

その際、パスサッカーに活かすという点を考慮して、ぜひミニゲーム(2対1、3対2、3対3、4対4など)のような試合形式の練習の中で、ワンツー以外のいろいろな動き(ダイアゴナルランや3人目の動きなど)も合わせて覚えましょう。

また、次のようなダイモンドパスなども効果的です。

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4.まとめ

これまでパス&ゴーとは何か、3つの注意点、練習法について解説しました。

特に3つの注意点のうち、パスの蹴り方や膝抜きを使った走り方は練習すれば誰でも覚えられるのでぜひ身に付けてください。

またパス&ゴーの考え方については、単に直線的に長い距離を走るもの…というのではなく「運ぶゾーン」と「崩すゾーン」に応じた使い分けも理解しましょう。

そうすることで日本人にも正しいサッカー観が身に付くはずですし、無意味な練習(試合ではあり得ないシチュエーションを一生懸命練習すること)が無くなると思います。

こうした点は、日本の指導で意外と見落としがちなので注意してください。

ぜひ多くの子供たちのパス&ゴーが格段に上手くなるのを願っています。