ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

ペナルティーキックの蹴り方!GKの動きを予測しよう

ペナルティーキックが上手くなるためにはメンタルの強さや駆け引きが必要…などと言われますが、実際にはそうでもありません。

特に大切なのは科学的な仕組みやゴールキーパーの予測方法を理解したうえで、GKの動きを先読みすることです。

そこで今回は実際のPKの動画を使って、ペナルティーキックを成功させる仕組み、ゴールキーパーの予測方法(動きを先読みする方法)、練習方法などを詳しく解説します。

※この記事は3つのページに分かれているので、順番に読んでも良いですし、直接それぞれのページを読んでいただいても結構です。

1ページ目(このページに書いてあります)
【ペナルティーキックを成功させる仕組み】

2ページ目(←クリック!)
【ゴールキーパーの予測方法】

3ページ目(←クリック!)
【ペナルティーキックの練習方法】
【まとめ】

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【ペナルティーキックを成功させる仕組み】

プロのサッカー選手のペナルティーキックの成功率は平均約80%で、クリスティアーノ・ロナウドは84%、メッシは77%だそうです。

つまりこれだけのトップ選手でも、5回のうち1回は失敗するということですね。

その一方で、育成年代の子供たちは80%を下回るかも知れません。

でも、科学的な仕組みをきちんと理解すれば成功率アップは十分可能です。

そこで、先ずはペナルティーキックの仕組みを科学的に解明しましょう。

(1)ペナルティーキックの成功率

ペナルティーキックの成功率アップで大切なのは、シュートスピードとゴールのどこの場所を狙うのか?という2つの点です。

①シュートスピードとGKの反応

ゴールキーパーは、キッカーが蹴ってから反応していたのでは間に合わないので、左右のどちらに蹴って来るのか?という予測のもとで先に動きます(いわば『決め打ち』)。

そこで、その理由について次に解説します。

サッカーの公式ルールでは、ペナルティーマークからゴールまでの距離が約10.97mですが、プロのシュートスピードは時速約120~130㎞なので、蹴ってからゴール到達までの時間は約0.3秒になります。

その際、ヒトの限界反応時間(目で見てから体中の筋肉が動き始めるまでの時間)は約0.2秒かかるので、キッカーが真っ直ぐ蹴った時にGKが反応を開始するとしたら、既にボールが3~4m手前まで来ていることになるのです。

でも実際には左右のどちらかに蹴るので、GKは3m程度横っ飛びする必要があり、限界反応時間の約0.2秒を考慮すると、3m程度の距離を0.1~0.2秒でジャンプしないとボールに追い付けません。

これを時速に換算すると、GKは約3mの距離を時速約80㎞というあり得ないスピードで飛ぶ必要があるのです(ちなみにウサインボルトの100m走の平均時速は約46㎞)。

もちろん、GKはこんなに速く動けませんよね。

だから、シュートコースが左右のどちらなのか?とあらかじめ予測して先に動くわけです。

そうするとキッカーはGKの先読みの動きに対抗するためにも、なるべくシュートスピードを速くした方が有利になります。

さらに、大切な点は、ゴールキーパーが先に動くわけですから、この動きを正確に見極めれば、左右のどちらに蹴れば良いのか?が分かるのです(詳しくは後述します)。

②ゴールのどこの場所を狙うのか?

ペナルティーキックを蹴る場合、シュートコースによって成功率が変わります。

実際のところ、ゴールの四隅を狙うとキーパーが届かないのは直観的にも分かるでしょう。

こうした仕組みの科学的な裏付けとして、2012年にイギリスのバース大学がデータ解析をしています。

その結果によれば、成功率50%と80%の場所があることが分かりました。

なお、バース大学では成功率50%と80%の範囲の数値を公表していませんが、私の計算によれば、ゴールの中心から半径約2.8mの範囲(ジュニア用は約1.8m)が成功率50%で、それ以外の場所が80%になると考えています。

特に左右の上隅の2箇所の成功率はキーパーが横っ飛びしても自重落下して手が届かないため、実際には80%よりもかなり高いと思います。

また育成年代のGKの指導は横っ飛びする時に腰の高さで飛ぶように教えられるので、やはりこの2箇所には手が届きにくいでしょう。

その一方で、下側の左右の2箇所のコースも成功率80%ですが、ここはキーパーに追い付かれる可能性があるので、実際には強めに蹴った方が良いでしょう。

この場合、アルゼンチン代表のアグエロの蹴り方が参考になりますね。

次の動画のPKは両方ともGKにコースを読まれましたが、強いシュートだったのでゴールが決まっています。

私が思うに小中学生のペナルティーキックは、アグエロのような低くて強いグラウンダーシュートでゴールの左右の下側の2箇所を正確に狙うように指導した方が良いと思います。

この場合、たしかに上隅の2箇所のコースの方が成功率は高いですが、この場所はシュートをふかすこともありますよね。

そうした意味で、先ずは比較的易しい下側の2箇所へ確実に蹴れるように練習した方が良いでしょう。

さて、これまでゴールの四隅を狙った蹴り方や成功率について解説しましたが、ある一定の条件の下では、真ん中に蹴っても入りやすくなります。

そこで、次にゴールの真ん中を狙ったペナルティーキックを解説します。

(2)ゴールの真ん中を狙う

ペナルティーキックでゴールの真ん中を狙うと、先ほどのバース大学の解析結果では成功率が50%になります。

また真ん中に蹴るのはとても勇気が必要ですし、メンタルを維持するのも大変でしょう。

だから、実際にゴールが決まる確率はかなり低くなるのではないか?と思われがちですが、GKの予測や反応を考慮すれば結果はかなり違ってきます。

そこで、真ん中に蹴った場合を考えてみましょう。

ふつうGKは、キッカーが全力で蹴るものと考えています。

もちろん、ガンバ大阪の遠藤のコロコロPKのように遅いボールを蹴る場合もありますが、だからと言って、速いボールが飛んで来る…と準備しないと反応が遅れてしまいます。

そうなるとキーパーにとっては、実際のボールスピードが速いのか?遅いのか?はあまり関係なく、むしろ右か?左か?という予測をいち早く読んで、なるべく速く反応しようとするのです。

そうした場合、真ん中に蹴って来るのではないか?という第三の予測はほとんどありません。

なぜなら、真ん中に蹴るという予測はキッカーが蹴ったボールに全く反応しない、単に立っているだけ…を意味するからです(そんなことをしたら監督やコーチに怒られるかも知れません(笑))。

要するに、GKが考えるコースの予測や反応は、どうしても左右のどちらか?という二者択一になるのです。

ところで、先ほど「ある一定の条件のもとでは真ん中に蹴っても入りやすい」と解説しましたが、ここで真ん中に蹴って成功した事例をもとに考えてみましょう。

次の動画は、日本が2014年ブラジルワールドカップの出場を決めた、対オーストラリア戦の本田のペナルティーキックです。

ここでの本田のPKはややアウト回転していますが、ほぼ真ん中に蹴っていますし、試合後のインタビューでも、最初から真ん中を狙っていたようですね。

この場合、本田のキックモーションを見ると、上体(胸)を真っ直ぐ前に向けているので、そのまま前方に蹴る可能性があります。

またバックスイングの時の右腕はあまり大きく上がっていないので、軸足方向(本田から向かって右側)に蹴る素振りもありません。

やはり、本田の言うとおり、最初から真っ直ぐ蹴ることを想定したシュートなのでしょう。

ところがオーストラリアのキーパーは、本田がバックスイングに入った時点で、彼の軸足方向(本田から向かって右側)に少しだけ反応しています。

なぜGKがこのように反応したと思いますか?

その理由は、先ほども解説したとおり「GKが考えるコースの予測や反応は、左右のどちらか?という二者択一」だからです。

またこの時点のキーパーの判断を推測すると、次のように考えていたのではないか?と思います。

① 本田の上体(胸)は真っ直ぐ前に向いているので、利き足側(本田から向かって左側)には蹴り難い。だから左側には蹴らない。

② 明らかに軸足方向(本田から向かって右側)に蹴る素振りはないが、右側の方が蹴りやすい。

③ だから右側に蹴って来るのではないか?

以上のように、GKは左右のどちらなのか?ということを消去法的に予測したのだと思います。

また、キッカーは軸足側(本田は右側)の方が蹴りやすいので、そうした点も考慮したでしょうし、まさか真ん中に蹴って来るとは予想もしなかったのでしょう。

たぶんGKは、いろいろなことを深読みし過ぎたのかも知れませんね。

つまり真ん中に蹴って成功させるための条件としては、GKの予測が左右のどちらかに蹴って来るのではないか?と判断させることが必要なのです。

そうした意味で、本田のキックフォームは、GKに右側に蹴って来る…という予測をさせたという点で、結果的には良かったのでしょう。

少し話が長くなりましたが、以上がペナルティーキックを成功させる仕組みです。

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さて次は、GKがどのようにしてキッカーの蹴る方向(右か?左か?)予測しているのか、という点について解説します。

これが分かれば、キーパーの動きが面白いように分かりますし、成功率が劇的にアップします。

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