【GKのシュートコースの予測】
ここでは、GKはどのようにしてシュートコースを予測するのか?ということで、(1)コースを予測するタイミングはいつか?(2)コースの予測方法(キッカーのどこを見て判断しているのか)、の2つの点を解説します。
(1)GKが予測するタイミングはいつか?
GKがキッカーのシュートコースを予測する場合、キッカーが蹴ってからでは間に合わないので蹴る直前までに先読みして反応します。
この場合の蹴る直前とは、キッカーの軸足がボールの横に着地する直前です(着地してからでは遅い)。
そこでユーロ2016のイタリア対ドイツのペナルティーキックを例に解説します。
次の画像の①では、キッカーのクロースはやや長めの助走を取りましたが、これはキーパーの予測にとってはあまり関係しません。
なぜならGKのブッフォンがコースの予測を始めるのは、クロースの軸足がボールの横に着地する直前だからです。だから、未だブッフォンは左右のどちらにも反応していませんよね。
また②はクロースの蹴る直前の軸足がボールの横に着地する直前です。
この時のブッフォンは、やや右ひざを曲げて重心を右側に傾けています。
これはほんのわずかな動きですが、クロースが軸足側(向って左側)に蹴るのを予測して反応したのでしょう。
最後の③では結果的にブッフォンの読みは当たりましたが、クロースのシュートが速くて取り難いコース(バース大学が解析した80%の成功率の範囲)だったので、ゴールが決まっています。
以上のように、GKがコースを予測するタイミングは、キッカーの軸足がボールの横に着地する直前です。
そうするとキッカーは、このようなGKの予測を逆手に取ることが出来ます。
つまりキッカーの軸足がボールの横に着地する直前で、GKが左右のどちらに反応するのか?を見て、その反対方向に蹴れば良いわけですね(例えばGKが右に動いたら、左に蹴れば良い)。
まるで後出しジャンケンのようですが、ペナルティーキックの仕組みは意外と簡単なのです。
そうした意味では、元日本代表の遠藤のコロコロPKはキーパーの動きを逆手に取った蹴り方で、これまでの解説を読まれれば意外と簡単だということがお分かりでしょう。
遠藤のペナルティーキックの蹴り方は後述します。
以上のようなキーパーの予測のタイミングは、育成年代からプロまで世界共通で変わりません。
したがってペナルティーキックの成功率をアップするためには、こうしたキーパーの特性を理解するのが最も大切なのです。
さて、ここまではGKがコースを予測するタイミングはいつか?ということでした。
そこで、今度は実際のコースが右なのか?左なのか?(キッカーのどこを見て判断しているのか)という予測の方法です。
これが分かれば、キーパーの動きが面白いように分かりますし、成功率がアップします。
(2)GKはキッカーのどこを見て予測するのか?
GKがコースを予測するタイミングは、先ほども解説したとおりキッカーが蹴る直前ですが、その時に注目するのがキッカーのバックスイングや体の向きなどです。
その際、キーパーは右か?左か?という予測はしますが、真ん中?という選択肢はほとんどありません。
そこで、GKがキッカーのバックスイングのどの部分を見て判断しているのか?という点を解説します。
①軸足側に蹴る場合の予測
キッカーが軸足側に蹴る時のシュートフォームの特徴は3つあるので、GKは必ずこの部分を見て右か左かを判断します。
上体が軸足方向を向いている
動画の0:26からのシーンでは、キッカーの左胸が軸足側を向いています。
これは左手を水平に伸ばすことによって、左胸が蹴る方向に引っ張られるからです。
しかも軸足まで蹴る方向に向いています。
ふつう軸足は蹴る方向に向けることが多いので、キーパーにとっても分かりやすいキックフォームになっていますね。
バックスイングでの左腕の振りが大きい
右利きのキッカーが軸足側に蹴る場合は、どうしても体幹を左にひねります。
また体幹をひねるためには、無意識のうちに腕を使ってリードします。
実際にはここまでハッキリしたフォームは少ないですが、少なくとも蹴り足側に蹴る時は、このような腕の振りは見られません。
股関節が閉じている
軸足側に蹴る時は、次の画像のように股関節が閉じています(左右の内ももが密着する)。
その理由は、フォロースルーで蹴り足が軸足の膝の前に来るからです。
つまり、左右の内腿がどうしても密着するようなキックフォームになるわけですね。
ただしこのように股関節を閉じていても、ここから利き足側に蹴リ分けるテクニックを持っていたらキーパーは反応できないでしょう。
②蹴り足側に蹴る場合の予測
キッカーが蹴り足側に蹴る時のシュートフォームの特徴も3つあるので、GKは必ずこの部分を見て右か左かを判断します。
上体が蹴り足方向を向いている
動画の0:25からのシーンでは、キッカーの右胸が蹴り足側を向いています。
これは体を右側に「くの字」に傾けることによって、右胸を向いてしまうためです。
しかも、先ほどの軸足側に蹴った選手と同じように、軸足まで蹴る方向に向いているので、キーパーにとっても分かりやすいフォームになっています。
バックスイングでの左腕の振りが小さい
右利きのキッカーが蹴り足側に蹴る場合は、体幹を右にひねる必要があります。
その際、左腕を大きく振ると、左胸が軸足方向に向くので右側に蹴ることが難くなります。
そのため、左腕は小さく振るようになるのです。
股関節が開いている
蹴り足側に蹴る時はインサイドキックを使うことが多いので、インパクトの直前で股関節が開きます(がに股のようになる)。
※動画の0:33からのシーンを参照してください。
特に日本人のインサイドキックは軸足を蹴る方向に向けることが多いので、やはり「がに股」のように股関節が開いてしまいます。
ただしこのように股関節を開いていても、ここから軸足側に蹴リ分けるテクニックを持っていたらキ―パーは反応できません。
以上が、GKのシュートコースの予測方法(キッカーのどこを見て判断しているのか?)です。
もちろん、キーパーによっては他の判断要素も取り入れるでしょうが、基本的な予測方法は概ねこのとおりと考えてください。
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巷では、ペナルティーキックは駆け引きが必要とよく言われますが、結局、キッカーとGKがお互いの動作を読み合うだけです。
そうした意味では、決して難しいことをやっているのではありません。
さらに、キッカーがこれまで解説したGKの予測方法を逆手に取ることで、ペナルティーキックが上手くなるのです。
さて次は、ペナルティーキックの効果的な練習方法をご紹介しますので、ぜひお読みください!
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