サッカーはボールを奪い合うスポーツなので、フィジカルコンタクトが重要です。
ところが、日本では、こうしたスキルが未熟なため世界的にも立ち遅れています。
そうした中、元日本代表の中田英寿は世界に通用するスキルを持っていましたが、彼のテクニックは、海外の選手と比べて体格が劣る日本人でも十分通用する秘密が隠されています。
そこで今回は、フィジカルコンタクトの基本、日本の現状、中田英寿のスキルの秘密、練習法などを詳しく解説します。
※この記事は4つのページに分かれているので、順番に読んでも良いですし、直接それぞれのページを読んでいただいても結構です。
1ページ目(このページに書いてあります)
【フィジカルコンタクトとは】
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【中田英寿のフィジカルコンタクト】
(1)中田英寿のプレースタイル
(2)中田の手押し
3ページ目(←クリック!)
(3)中田英寿の手押しの秘密
(4)中田の「かわす」スキルを身に付けるためには?
4ページ目(←クリック!)
【フィジカルコンタクトの練習法】
【まとめ】
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【フィジカルコンタクトとは】
ここではフィジカルコンタクトの基本、日本サッカーの現状と問題点、中田英寿と日本人の可能性について解説します。
そのうえで今回の記事の後半では、中田英寿のフィジカルコンタクトの仕組みと秘密を解き明かしたいと思います。
なお、あなたが、もしもフィジカルコンタクトは危険だ!などと考えているとしたら、それは大きな間違いです。
今後の日本サッカーの発展には欠かせない大切なテクニックなので、ぜひ最後までお読みください。
(1)フィジカルコンタクトの基本
フィジカルコンタクトの基本は、ボールを取られない!奪う!そのためには体を張って何をするべきか?を最優先に考えましょう。
これをスキルとして考えると、攻撃と守備に分けられます。
・攻撃側は自分とボールの間に相手を入れさせない。
・守備側は相手とボールの間に割り込んで奪う。
この考え方は浮き球であっても、グラウンダーのボールであっても全く同じです。
例えば、ヘディングの場合は「相手よりも先に触れ!」とよく言われますが、これは相手の前にいても後ろにいても、相手とボールの間に割り込んでボールを奪ったり守ったりすることを意味します。
つまりフィジカルコンタクトの基本は、
・攻撃側はボールを取られない。
・守備側はボールを奪う。
こうしたシンプルな考えを理解したうえで、具体的なスキルを覚えるのが大切なのです。
これは一見して当たり前のようですが、日本人の多くは頭では分かっていても実際の試合では上手く出来ません。
だから、いつまで経っても世界レベルにはならないのです。
そうした理由は、これまでの日本サッカーの歴史的な背景にあります。
(2)日本サッカーの現状
日本サッカーのフィジカルコンタクトを一言で表すと、現実を避け続けた歴史で、これには2つの問題点が隠されています。
①フィジカルコンタクトを避けた歴史
日本人は海外の選手と比べて体格が劣るため、フィジカルコンタクトを避け、テクニックとアジリティ―で世界に挑もうとしていますが、こうした考えは今も昔も変わりません。
そのため最初はブラジルサッカーを模範にし、その後ヨーロッパ型の組織戦術を取り入れながら徐々に進歩しました。
その後、日本人と似た体格ということで、一時期スペインやメキシコのサッカーも試しています。
たしかにスペインはチキタカで接触プレーは少ないですが、そうしたプレーが成り立つのはスペイン人の技術レベルが高いからです。
また、メキシコの戦術は前からの速い守備とカウンターが武器なので、基本的には激しい接触プレーが多く、「自分たちのサッカー」などと夢見る日本代表の選手たちには受け入れ難いようです。
その後、日本サッカーの進むべき道がハッキリしないままでしたが、ハリルホジッチが代表監督に就任した時、球際の強さとして、しきりに「デュエル(決闘)」を求めました。
私としては、やっと変化の兆しが訪れ、育成年代にもこうしたプレーが浸透するかも知れない…と期待しましたが、結局、解任されて、フィジカルコンタクトの少ない昔のプレースタイルに戻ってしまったのです。
要するに日本のサッカーは、フィジカルコンタクトを避けた歴史であって、四半世紀前のレベルから全く進歩していない…ということですね。
こうなると、現代サッカーの進歩には付いて行けません。
こうしたフィジカルコンタクトを避け続けた歴史は、育成年代のサッカーにも影響が出ています。
②育成年代のフィジカルコンタクト
育成年代の指導もフィジカルコンタクトを避けている
日本の育成指導では、小学生はドリブル、中学生以降ではパスが主体になります。
こうした指導はどこの国でも同じですが、日本が海外と大きく違うのはフィジカルコンタクトの考えが欠けていることです。
一般的にドリブルで相手を抜く場合は、大きく分けて2つのパターンがあります。
A.相手と向き合った時に、足技で抜く。
B.相手が横か後ろから追いかけて来た時に、腕や背中を使ってボ―ルを守る。
このうちAは、フィジカルコンタクトをほとんど必要としません。
その一方で、Bは相手が必死に迫って来るため、フィジカルコンタクトが不可欠です。
こうした場合、日本の育成現場の指導では一対一の練習もよくやりますが、実際の試合では一対一の勝負はほとんどせず、基本的には数的優位の二対一でのパスを選択します。
なぜなら勝利至上主義のため安全なプレーを優先し、ドリブルの激しい接触プレーを少なくしたいからです。
そうすると、当然フィジカルコンタクトの機会は減るのでスキルは上達しません。
例えば、狭いところでボールを持ち過ぎると「早くパスしろ!」と言われませんか?
これはリスクを避けている証拠ですが、でも密集地域の裏には広いスペースがあるのです。
ここで勘違いしていただきたくないのですが、パスが悪いというわけではありません。
狭い場所ではボールが取られるリスクもありますが、成功すれば大きなリターンが待っているということなのです。
「早くパスしろ!」と言う指導者は、安全なことしか考えられないのでしょう。
日本人は、ギャンブルなどのリスクを嫌う民族性がありますが、サッカーにはリスクが付き物ですし、それにチャレンジしないと大きなリターンは来ないのです。
またギャンブルをしないサッカーは、カーナビと同じでセオリーどおりの判断しかしなくなります。
だから、日本代表がブラジルなどの強豪国と試合すると、簡単に次のプレーを見抜かれてボールを取られてしまうのです(セオリーは見抜かれる)。
ここで私が何を言いたいのかというと、日本のサッカーがフィジカルコンタクトを避けているという大人の考えが、育成年代の子供たちに浸透してしまったということですね。
やはり育成年代の指導を見直さないと、フィジカルコンタクトの大切さが身に付かないのではないでしょうか?
フェアプレーとフィジカルコンタクト
日本サッカー協会は、フェアプレーを推奨しています。
たしかに、ケガの防止やルールを守るという点では、特に幾瀬さ年代の子供たちにとっては良い事だなのでしょう。
ところがフェアプレーの推奨は、まるでサッカーを教育の一環と考えているように思いえます。
そのため少年サッカーの試合では、審判がフィジカルコンタクトとラフプレーを混同するケースがよく見られます。
例えばショルダータックルで相手が倒れるとすぐにファールを取ったり、わずかに手を使っただけでも笛を吹いたりしますが、これも教育的な配慮があるためなのかも知れません。
でも、こうした現状では、フィジカルコンタクトのスキルは身に付かないのです。
さらに、こうしたジャッジはJリーグでも同じで、特にJリーグでプレーする外国人は口を揃えたように、「日本の審判はすぐに笛を吹く…」と言います。
外国人から見ると、フィジカルコンタクトに過敏なジャッジはかなり疑問に感じているのでしょう。
これに対して、海外では少年サッカーでさえも当たりが激しく、手を使うのは当たり前です。
またルールすれすれのプレーは当然ですし、審判が見ていなければ…というプレーも多いです。
なぜなら、子供たちにはボールを取られない!奪う!という意識が根強いからです。
だからこそ、フィジカルコンタクトは当たり前!と考えているのです。
つまり絵画の子供たちは、サッカーに対して死に物狂いであって、日本とは本気度が全く違うのです。
さらに海外では教育とサッカーは別物であって、教育は学校で…、サッカーはクラブで…という位置付けがあります。
そうすると子供たちにはフェアプレーという考え方ではなく、プロ選手たちの接触プレーが正しいと理解するのです。
いずれにしても、日本の育成年代のフェアプレーの推奨は行き過ぎています。
少なくともフィジカルコンタクトとラフプレーの区別くらいは、きちんと分けるべきでしょう。
そうしたうえで、子供たちに正しいスキルを教えるべきです。
(3)中田英寿の例と日本人の可能性
元日本代表の中田英寿は身長175㎝で体重72㎏という体格でありながら、抜群のフィジカルコンタクトによってイタリアのセリエAで活躍しました。
サンドニの悲劇と言われた2000年3月の日本代表とフランス代表との試合では、大雨でグラウンドコンディションが悪いのにも関わらず、中田だけは屈強な相手とのフィジカルコンタクトで競り負けることがありませんでした。
たぶん多くの方は、中田英寿が特別な選手だったから活躍出来たのだと思うでしょう。
でも、それは違います。
私が思うに中田が活躍したという事実は、日本人でも幼少期から正しいフィジカルコンタクトを教えれば、海外でも十分に通用する可能性があると解釈するべきです。
たしかに、日本人は海外のサッカー選手と比べて体格が劣ると言われています。
でも、それは単なる思い込みではないでしょうか?
そうした中で彼はイタリアのペルージャに移籍した際、チーム練習の前後にフィジカルトレーニングを続けたそうです。
いわゆる肉体改造ですね。
つまりトレーニングのやり方しだいでは、世界に通用する選手に成長出来るということです。
その際に特に重視したのは、バランス能力と下半身の筋力補強で、その結果、試合中は倒れにくく、ケガや故障が少ないというバランスの良い筋力を身に付けたのです。
ちなみに中田は、中学3年生の時にU-15日本代表に選抜されていますが、当時のサッカー部の監督が協会に選考理由を聞いたところ、「テクニックはやや見劣りするがフィジカルの強さは世界でも通用する」と評価されたそうです。
こうした逸話は中田だけが特別な選手と見なしてしまうのではなく、むしろ日本にもフィジカル的に強い選手はたくさん育っているのではないか?と考えた方が良いと思います。
つまり潜在的な可能性のある子供たちを発掘することで、海外でも通用する選手を育成できるわけですね。
いずれにしても、サッカーはフィジカルコンタクトを避けて通ることが出来ません。
現実に目を向けることで、初めて日本のサッカーが進歩するのです。
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さて次からは、いよいよ中田英寿のフィジカルコンタクトのスキルについて詳しく解説します。
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