育成年代のドリブルは視野を広くするため「顔を上げて周りを見ろ!」とか「ボ―ルを見るな!」など、上体を起こした直立姿勢を指導しています。
こうした指導は、たしかに一理ありますが、これでは本格的なドリブラーが育ちにくいでしょう。
なぜならドリブルの姿勢の考え方に問題があるからです。
そこで今回はドリブルの正しい姿勢、日本の指導の現状、効果的な練習法について解説します。
※この記事は3ページに分かれているので、順番に読んでも良いですし、直接それぞれのページを読んでいただいても結構です。
1ページ目(このページに書いてあります)
【ドリブルの姿勢の種類】
【ドリブルの姿勢の使い分け】
【ドリブルの姿勢と骨盤の位置関係】
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【ドリブルの姿勢と日本の指導】
3ページ目(←クリック!)
【練習法】
【まとめ】
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【ドリブルの姿勢の種類】
ドリブルの姿勢は大きく分けて前傾型と直立型の二つに分類され、それぞれにメリットとデメリットがあります。
そこで、この二つを考えてみましょう。
なお猫背のような後傾は姿勢が悪くてスポーツには向かないので、ここでは説明を省略します。
(1)前傾姿勢
前傾姿勢は短距離走のように体を前傾させるので、前に向かう推進力があるためスピードに乗ったドリブルが出来ます。
その反面、視野が狭くなって周囲の状況が見えにくくボールから目が離せないというデメリットがあります。
でも海外の高速ドリブラーは、このスタイルが多いですね。
(2)直立姿勢
この姿勢は長距離走のように上体を起こしているので、前への突進力は弱くスピードの遅いドリブルになります。
その反面、視野が広くなって周囲の状況がよく見えるためボールから目を離すことが出来るというメリットがあります。
日本では、クリスチアーノ・ロナウドが直立姿勢に近く背筋を伸ばした良い姿勢と高く評価されているようです。
いずれにしても前傾と直立はそれぞれにメリットとデメリットがあります。
それでは果たしてどちらの姿勢が良いのか?という点について、より深く考察してみましょう。
【ドリブルの姿勢の使い分け】
実は前傾も直立も一長一短の特徴があるので、どちらの姿勢が良いのか?という見方は正しくありません。
結論から言えば「突破のドリブル」と「運ぶドリブル」という、プレーの局面に応じた使い分けが必要です。
そこで次にドリブル姿勢をこの二つに分けて考えてみましょう。
(1)突破のドリブル
突破のドリブルはスピードと敏捷性が必要なので前傾姿勢の方が有利です。
また相手を抜く方向がハッキリしているので、関節視野で相手の立ち位置と姿勢や抜くスペースが確認できればボールから目を離す必要はありません。
実際にも海外のドリブラーは、相手を抜く瞬間はボールに集中しています。
(2)運ぶドリブル
運ぶドリブルはフリーの状態なので、相手にボールを奪われる危険性が低く、直立姿勢のままボールから目を離して周りをよく見ることが出来ます。
先ほど日本ではクリスチアーノ・ロナウドが直立姿勢に近いと…と説明しましたよね。
でも、この姿勢は運ぶドリブルの時に限られます。
なぜなら、突破のドリブルで直立姿勢を取っているとスピードと敏捷性が発揮できないからです。
実際にもクリスチアーノ・ロナウドが相手を抜く時は、ボールに集中して前傾姿勢を取っています。
私が思うに、彼の姿勢が多くの指導者に評価される理由は、運ぶドリブルの直立状態だけを見たからではないでしょうか?
つまり、運ぶドリブルと突破のドリブルの違いをきちんと理解出来ていないのだと思います。
いずれにしてもドリブル姿勢は、突破のドリブルと運ぶドリブルという、2つの局面に応じた使い分けが必要です。
こうした点を踏まえて次にドリブルの姿勢と関係の深い、骨盤の位置関係について考えてみましょう。
【ドリブルの姿勢と骨盤の位置関係】
ドリブルの姿勢は、骨盤の状態と深く関係します。
その際、骨盤前傾と骨盤直立(中立)に分けて考えると、スポーツにおける骨盤前傾の優位性が明らかになります。
骨盤前傾トレーニングで身体能力アップ!一流アスリートの特徴とは?
(1)骨盤前傾
骨盤前傾は全身のバネ作用を使えて、腸腰筋・ハムストリングスが発達するという特徴があります。
そのためスピードと敏捷性があることから、突破の時に威力を発揮するタイプですね。
要するに骨盤前傾は身体能力が高いということです。
その一方で運ぶドリブルの時は、単に上体を起こせば視野を確保できるので特に何の問題もありません。
例えば私の息子は典型的な骨盤前傾ですが、ドリブルの局面に応じて姿勢を使い分けているのでやはり何の問題もないのです。
(2)骨盤直立
骨盤直立はそもそも日常生活を想定した姿勢です。
そうすると背骨のバネ作用はほとんど使えず、腸腰筋・ハムストリングスは発達しないという特徴があります。
なぜなら日常生活では、バネ作用や腸腰筋・ハムストリングスの発達はほとんど必要ないからです。
そうすると実際のプレーの時はスピードと敏捷性に乏しいので、突破のドリブルには向きません。
ただし運ぶドリブルに限定するのであれば、この姿勢を活かすことは出来るでしょう。
以上の点を考慮すれば、突破のドリブルでも、運ぶドリブルでも、どちらにも使い分けが出来るという点で骨盤前傾の方が有利なのです。
さてこれまでの解説の中で、ドリブル姿勢の使い分けの大切さと骨盤前傾の優位性が分かりました。
それでは次に、日本の育成現場の指導の問題点について触れておきましょう。
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