ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

体のバネ作用でサッカーがレベルアップ!【最新理論で解明】

サッカーのプレーで体のバネ作用を使うと驚異的なパワーとスピードを発揮します。

またこうした機能は生まれ付き全ての人に備わった身体能力なので、誰でも使いこなすことが出来るのです。

そこで、今回は体のバネの仕組みとサッカーに活かす方法を詳しく解説します。

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1.体のバネとは

体のバネを考える上では、次の5つの点がとても大切です。

(1)体のバネの仕組み
(2)体のバネと骨格の動き
(3)体のバネは体幹に集中している
(4)低重心の人は体のバネが使えない
(5)体のバネと伸張反射は密接に関係する

(1)体のバネの仕組み

体のバネ作用をサッカーに活かす時に、最も大切なことは2つあります。

一つ目は「復元力」で、二つ目は「パワーの蓄積と放出」です。

①復元力

ふつうコイルや板バネを変形させると元に戻ろうとする力が働きますが、これを復元力と言います。

ヒトの背骨にも復元力があるので、曲げたり、伸ばしたり、縮めたりする動きに対して、元に戻ろうとするバネが働くのです。

例えば低くしゃがみ込んでからジャンプする動作は、背骨を折り曲げてから伸ばすという復元力を利用しているわけですね。

したがって復元力のない動作(例:単なるヒザの曲げ伸ばし)はバネ作用ではありません。

②パワーの蓄積と放出

バネを縮めたり曲げたりすると、「ギュッ」とエネルギーが貯まります(パワーの蓄積)。

そしてこの貯まったエネルギーを放出することで、強力なパワーを発揮出来るのです(パワーの放出)。

例えばジャンプの動作は、最初にしゃがんでエネルギーを貯めることで反射的に飛び上がる!というパワーを生み出すわけですね。

もしもこの時、しゃがみ込まずに立ったままジャンプしたらどうなるでしょうか?

答えは簡単で、エネルギーを貯め込まないのでほとんど飛べませんよね。

だからエネルギーを貯める(ジャンプの場合はしゃがむ)という動作は、とても大切なのです。

(2)体のバネと骨格の動き

ヒトの体は、背骨や肋骨(ろっこつ)などの骨格が連動することによって、バネの作用を生み出します。

そこで、こうした骨格の動きを利用した、代表的なバネの動作を考えてみましょう。

①背骨

背骨のS字カーブを伸び縮みさせる時は、26個の脊椎と椎間板が連動して背骨全体にバネ作用を起こします。

また脊椎はゼリー状の椎間板で連結されているので、この部分がクッションの役割をします。

そして、この部分のクッションの働きによって背骨のS字カーブが上下に動いてバネ作用を起こすのです。

②肋骨

肋骨は左右に12本ずつあり、この部分を左右交互に伸び縮みさせることによって、蛇腹のようなバネの動きをします。

つまり次のように左右に伸び縮みするわけですね。

この時のバネ作用は一方を縮めると反対側がすぐに伸びる…というように、左右のいずれかの縮む動きを先行させることが大切です。

例えば左側を急激に縮めると反射的に右側が伸びる…というような動きですね。

そうすることで、肋骨のバネ作用が効果的に使えるわけです。

(3)体のバネは体幹に集中している

体のバネは体幹(上半身)に集中していますが、これは骨格の構造と関係します。

ヒトの骨格は、複数の骨が組み合わさって出来ています。

例えば背骨は26個の脊椎が組み合わさって一つの骨格となり、肋骨は左右12本ずつで一つの骨格になります。

そして、これらの骨格が伸び縮みすることによってバネ作用を起こすのです。

したがって骨格のない場所(例:関節)には、バネの機能はほとんどありません。

そうすると例えばヒザのバネを使う…というのは明らかに間違った考え方になります(ただしほんの少しくらいはバネ作用はあります)。

この場合、自分ではバネを使っているつもりでも実際にはじん帯を酷使するので炎症を起こすだけですね(じん帯は関節を繋ぐだけなのでバネ作用はない)。

(4)低重心の人は体のバネが使えない

これは体のバネが体幹に集中していることと深く関係します。

一般的に低重心の人がサッカーをする時は、足のパワー(下半身の動き)に頼ったプレーが多くなります。

そうすると上半身の体幹に集中している体のバネが使えません。

これは、まるで上半身を荷物のように背負ってプレーするようなものです。

またヒトの体重比は6対4で上半身の方が重たいことから、下半身の負担をいっそう大きくします。

これは太り過ぎの人が足腰をケガしやすいのと全く同じことですね。

つまり低重心の人は、下半身だけでプレーする→体幹(上半身)に集中するバネを使えない→上半身が重りになる→下半身の負担が大きくなる→プレーのパフォーマンスが落ちる…という悪循環に陥るわけです。

ところが高重心の人は、体幹部の背骨や肋骨を縮めたり曲げたりすることで上半身をバネとして使うことが出来ます。

だからプレーのパフォーマンスが上がるのです。

次のタイツ先生の動画の1:08からの解説をご覧になるとよく分かります。

いずれにしても、低重心である限り体のバネの作用はほとんど使えません。

ちまたではサッカーのプレーは低重心で…などという間違った情報が氾濫しています。

こうした知識は人体の仕組みを全く理解していない大変誤った見方なので、ご注意ください。

(5)体のバネと伸張反射は密接に関係する

体のバネは骨格を縮めたり曲げたりする動作に対し、復元力を利用して元に戻そうとする動きです。

また動かす人体の部分はあくまでも骨格です。

これに対して、伸張反射は急激に伸びた筋肉が縮むという反射作用による動きです。

この二つは、スポーツ科学的には異なった動きをします。

つまり筋肉が動くのか?骨格が動くのか?という違いがあるわけです。

でも実際には、両方の動きは密接に関係します。

例えばサッカーのキック、ドリブル、ジャンプなどの動作は典型例ですね。

そこで次に、こうした体のバネ作用が、サッカーのプレーにどのように応用できるのか?という点を詳しく解説します。

2.体のバネとサッカーの動作

体のバネは、サッカーのいろいろなプレーに応用できます。

そこで、ここではキック、ドリブル、ジャンプなどの具体的な動作を解説します。

(1)キックの場合

キックの場合は、バックスイングに入る前の助走(背骨を縮める)→バックスイング(伸ばす)→フォロースルー(縮める)までの一連の動きがバネ作用です。

これはヒップホップダンスに見られる、ワップダウンとワップアップの動きと同じです。

ワップダウンとは背骨を縮める動きのことで、ワップアップとは伸ばす動きですね。

この二つの動きを科学的に考えると、背骨のS字カーブを縮めてから伸ばす(または伸ばしてから縮める)という復元力を利用したバネ作用になります。

また、エネルギーの蓄積と放出(背骨の伸び縮み)も起きているので、体の動きはほんのわずかですが意外と大きなパワーを生み出します。

でもこうした動きは、筋肉の伸張反射も密接に関係しています。

なぜならキックの一連の動作には、バネ作用と筋肉の伸張反射が連動して起こるからです。

この時の伸張反射でバックスイングの時に急激に伸びる筋肉は、上腕二頭筋、三角筋、大胸筋、腹直筋、外腹斜筋、腸腰筋、大腿四頭筋、前脛骨筋などです。

また、これらの筋肉はフォロースルーにかけて急激に収縮します。

こうした伸張反射を使いこなすことで、インパクトスピードが格段にアップするのです。

このように体のバネと筋肉の伸張反射は、キック動作の中でいわばダブって作用しているということですね。

実は、この他にも足の遠心力や重さも使います。

つまりバネ作用+筋肉の伸張反射+足の遠心力と重さという、多くの作用が合わさることによって爆発的なパワーを発揮するわけです。

(2)ドリブルの場合

ここでは、特徴的な3つの例を解説します。

①突破の動き

次の動画を見ると、私を抜く時の動きは背骨を垂直に曲げて伸ばすという体のバネを使っています。

先ほどのキックのところで解説した、ワップダウン(縮む)からワップアップ(伸ばす)という動きとほぼ同じです。

ただし、こうした動作はキックと同様に筋肉の伸張反射を組み合わせて使います。

伸張反射で使う筋肉は、上腕三頭筋、上腕二頭筋、三角筋、広背筋、大胸筋、腹直筋、外腹斜筋、腸腰筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋、前脛骨筋などです。

ちなみに息子のドリブルのように、低い姿勢(背骨を縮める)から飛び出す(背骨を伸ばす)動きはネコ科の動物も同じですね。

猫が狩りをする時に低い姿勢で身体を縮めるのは背骨のバネを使うためなのです。

つまり自然の摂理に基づいているわけですね。

もちろん猫がきちんと理解しているのかどうかは別ですが(笑)。

②左右の重心移動

ドリブルで左右に動く時は、次の動画のように肋骨を蛇腹のように使ってバネ作用を生み出します。

肋骨を蛇腹のように使う時は、例えば肋骨の右側を縮めると左側が反射的に伸びます。

そうすると体を速く左側に動かせるので、重心移動も速くなるのです。

またこの動きも、先ほどの突破のドリブルと同様にバネ作用と筋肉の伸張反射を組み合わせています。

ここでの伸張反射は体幹をひねる動きになりますが、こうした筋肉をひねる動作は筋肉を伸ばすのと同です。

つまり、ひねって伸ばした筋肉は伸張反射によって急激に縮むというわけですね。

その時のひねる筋肉(伸ばす筋肉)は、広背筋、大胸筋、腹直筋、外腹斜筋、腸腰筋などになります。

そうすると左右の重心移動の場合も、結局はバネ作用と伸張反射の動きが複雑に合わさっているのです。

※重心移動とサッカーの関係を詳しくお知りになりたい方は、次の記事をお読みください。
重心移動でサッカーが100倍上手くなる!【中学生でもよく分かる】

③カットイン

カットインの場合は、ターンの直前で「みぞおち抜き」と「反射」というバネ作用を使います。

この場合のみぞおちは筋肉でも骨格でもなく、体の構造としては空洞の状態です。

そこで空洞の部分を変形させて元に戻すという「復元力」を使ってバネ作用を起こしているのです。

そうした意味では、背骨や肋骨などの骨格以外で起きる少し変わった体のバネですね。

ただし、この場合はターンの直前にワップダウン(背骨を縮める)、その直後にワップアップ(背骨を伸ばす)という背骨のバネ作用も混ざっています。

また筋肉の伸張反射についても、ターンの直後に体幹ひねりを使うので、広背筋、大胸筋、腹直筋、外腹斜筋、腸腰筋など伸び縮みの動きを利用します。

つまりカットインの場合もバネ作用と伸張反射が合わさっているわけですね。

※カットインのやり方を詳しくお知りになりたい方は、次の記事をお読みください。
カットインの正しいやり方!海外と日本のサッカー選手の違いとは?

(3)ジャンプ

ジャンプの跳躍でバネ作用を活かすためには、しゃがみ込んでから飛び上がるという動きが必要です。

これは、先ほどから何度も繰り返しているように背骨を縮めて伸ばすというバネの動きですね。

特に大切なのが、背骨を縮める時にヒザと股関節を脱力することです。

これにより重力落下運動が起きるので、とても速いスピードで背骨が縮まります。

また急激に縮んだ背骨は、伸びるスピードも反射的に速くなります。

さらに合わせて、筋肉が急激に縮んで伸びるという伸張反射も同時に起こります。

つまりジャンプをする時もバネ作用と伸張反射が使えるので、思いっ切り力を入れるのではなくむしろリラックスした方が速く高く跳べるわけですね。

それではこうした体のバネ作用は、いったいどのようにして身に付けるのか?という点について、次に解説します。

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3.バネ作用を起こす方法

ここでは、体のバネはどのようにして起こすのか?という点について、3つのポイントを解説します。

(1)リラックスする

これはバネの復元作用とエネルギーの蓄積と放出に関係します。

そもそも緊張して体中に力が入っていたとしたら、バネ特有の復元作用やエネルギーの蓄積と放出が起きません。

例えば緊張して体がガチガチになっていたら、背骨を縮めて伸ばすなどのスムーズな動きは出ないでしょう。

だから日頃の練習からリラックスすることが必要ですし、合わせて習慣化することが大切です。

(2)下半身に頼った動きをしない

足だけを使ってサッカーをすると、低重心になりやすいです。

この場合、低重心の人は背骨や肋骨などの体幹部の骨格が使えません。

また、体幹部の骨格が使えないということは、バネの力が発揮出来ないのです。

そうすると下半身の筋肉に頼った動きになりやすく、プレーのパフォーマンスも低くなります。

だから足だけを使うのではなく、上半身を使ったプレーを心がけることが大切です。

特に日本人は胴長短足で低重心になりやすいので、特に注意しましょう。

(3)一本歯下駄トレーニング

これは、バネ作用を身に付ける上で最適な練習方法です。

そもそも、一本歯下駄トレーニングの効果は、リラックス、高重心、筋肉の伸張反射などの点でも身体能力が向上します。

また誰でも手軽で簡単に出来る練習法です。

※一本歯下駄トレーニングをもっと詳しくお知りになりたい方は、次の2つの記事をお読みください。
一本歯下駄の効果!身体能力アップに役立つ5つの理由!
一本歯下駄トレーニング!サッカー向け練習メニュー22選

4.まとめ

体のバネは、筋肉の伸張反射と並んで、スポーツにとっては欠かせない身体能力です。
また、この作用は生まれ付き備わっているので、誰でも使いこなせます。

その一方で、育成年代の指導者は、こうした科学的なメカニズムをきちんと理解しなくてはいけません。

また、「ガンバレ!」とか「気合いを入れろ!」とかの根性論は、子供を緊張させるだけなので必要ありません。

そもそもリラックスをしないと、バネ作用も筋肉の伸張反射も十分に発揮できないのです。

こうした点は、ぜひ多くの方に参考にしていただきたいと願っています。

【画像引用:Youtube.com