ブラジルでのコーチの経験を活かして、 サッカー未経験の方にも分かりやすく科学的で正しい理論をご紹介します

筋肉の伸張反射でサッカーのプレーが劇的に改善!最新理論で解明

サッカーのプレーで伸張反射を利用すると、驚異的なパワーとスピードを発揮します。

なぜなら伸張反射は、スポーツ科学、医学、解剖学などのきちんとした理論に基づいた効果的な動作だからです。

こうした身体能力は生まれ付き全ての人に備わっていますが、育成年代の指導現場ではほとんど知られていません。

だから筋肉や関節を酷使したり無意味な根性論が蔓延するのです。

そこで、今回は伸張反射の仕組みやサッカーに活かす方法などを詳しく解説します。

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1.伸張反射とは

(1)伸張反射の仕組み

伸張反射とは、急激に伸ばした筋肉が元に戻ろうとして収縮する反射作用です。

こうした作用は、サッカーを含めたスポーツ全般の動きに応用することが出来ます。

例えばサッカーのキック動作の場合は、ヒザを曲げると大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)が伸びます。

そうすると伸びた筋肉は反射的に縮もうとするので、いったん曲げたヒザが素早く戻ろうとします。

つまり、こうした反射作用を利用することによって筋肉に力を入れなくてもキックのパワーとスピードを発揮できるわけです。

この作用は通常の反射神経と同様に背骨の中にある脊髄で信号を受け止めて即座に反応します。

例えば熱いものを触った時にすぐに手を離す…という仕組みと全く同じなのです。

そうすると通常の神経回路のように脳に伝わってから往復…という過程が省略されるので、とてもスピーディーな反射作用が起こるわけです。

これに対してレモンを見た時に酸っぱさを思い浮かべて唾液が出るのは条件反射なので、通常の神経回路である脳の神経記憶に基づいた作用になります。

こうした条件反射と比べると伸張反射は脳の手前の脊髄で反応するので、脳に行ってから戻るまでの往復の時間が短縮されます。

だからとても速い反射作用が起きるわけです。

(2)筋紡錘の役割

筋肉の中には、急激な伸張を感知するため「筋紡錘(きんぼうすい)」というセンサーがあります。

この筋紡錘が筋肉の急激な伸張を感知すると、脊髄の中にある運動神経が働いて筋肉の収縮作用を命令するのです。

そうした意味で筋紡錘の役割はとても大切です。

もしもこうした伸張反射が起きない…、または遅い時は体に異常があったり病気の場合もあるので注意が必要だと思います。

(3)伸張反射の代表例

伸張反射の代表例としてよく言われるのは、膝蓋腱反射とヒザかっくんです。

膝蓋腱反射とは、ヒザ頭の少し上の膝蓋腱を叩くとビクン!と足が跳ねあがるものです。

お医者さんが診察する時に、「トン!トン!」とやったりしますよね。

こうした反射が起きる理由は、膝蓋腱が大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)と繋がっていることと関係します。

膝蓋腱を叩くと、ほんの少しですが大腿四頭筋の急激な伸ばされた状態になります。

そうすると筋紡錘が感知して脊髄に伝わり、神経が反応して大腿四頭筋を縮めようとするのです。

この大腿四頭筋を縮めようとする動きが、先ほどのビクン!と足が跳ねあがる動きになるわけですね。

一方、ヒザかっくんも同じ仕組みです。

ヒザかっくんは、ひざ裏の筋肉を急激に伸ばされたことに対し反射的に収縮してヒザが曲がります。

そうすると、すとん!としゃがみ込んでしまうわけですね。

ところがこの反射運動が起きないと、ひざかっくんによって上体がばたん!と前に倒れてしまいます。

つまり反射的にヒザが曲がってしゃがみ込むことで、危険を回避しているわけですね。

(4)伸張反射はなぜ起きるのか?

伸張反射が起きる理由は、大きく分けて2つあります。

①筋肉の保護

伸張反射は筋肉が急激に伸ばされた時に起こりますが、もしも反射作用が起きないと筋肉が切れてしまいます。

そこで、そうした事態になる前に自動的に筋肉を収縮させて保護するのです。

②身体の姿勢やバランスの調整

これは先ほどの筋肉の保護と少し似ています。

次の動画のように、身体を一方に傾けると反対側の筋肉が伸張します(例:右側に傾けると左側の筋肉が伸びる)。

そうすると、そのままでは一方向に倒れるので反対側の筋肉が収縮してバランスを保つのです(例:右側に倒れそうな時は左側の筋肉が縮む)。

つまり、伸張反射はこうしたバランスの調整機能にも役立っているわけですね。

(5)伸張反射とバネ作用は密接に関係する

伸張反射は急激に伸びた筋肉が縮む…という反射作用ですが、これに似た作用として、骨格が伸び縮みするというバネ作用があります。

この場合、伸張反射は筋肉の動きに特有な作用であり、バネ作用は背骨のS字カーブなどの骨格を動かすものです。

つまり筋肉が動くのか?骨格が動くのか?という違いもあります。

ところが、実際にはお互いの動きは密接に関係しています。

例えばサッカーのキックの動作が典型的な例ですね。

そこで次にこうした伸張反射やバネ作用が、サッカーのどのようなプレーに応用できるのか?という点を考えてみましょう。

2.伸張反射とサッカーの動作

伸張反射は、サッカーのいろいろなプレーに応用できますが、ここではキック、ドリブル、走るという動作を例にして解説します。

(1)キックの場合

キックではバックスイングの時に、様々な筋肉の伸張が起きます。

主な筋肉としては、上腕二頭筋、三角筋、大胸筋、腹直筋、外腹斜筋、腸腰筋、大腿四頭筋、前脛骨筋などです。

これらの筋肉は、フォロースルーにかけて急激に収縮します。

つまりバックスイングからフォロースルーにかけて、筋肉の伸張から収縮という急激な巻き戻しが起きるのです。

先ほども解説しましたが、伸張反射は脳の手前の脊髄で対応するので反応スピードがとても速いです。

そうすると筋肉に力を入れて蹴るよりも、インパクトスピードが格段に上がるのです。

ただし実際には骨格のバネ作用も使いますし、足の遠心力と重さも使います。

つまり筋肉の伸張反射+骨格のバネ作用+足の遠心力と重さという様々な運動機能が合わさることによって、爆発的なパワーとスピードを生み出すわけですね。

これは自分自身の潜在的なパワーを全て出し切ってしまうということを意味します。

例えば100のパワーがあったら、限りなく100に近い能力を出し切るということですね。

こうした科学理論を筋出力の最大化と言います。

(2)ドリブルの場合

ドリブルの時に伸長収縮する主な筋肉は、上腕三頭筋、上腕二頭筋、三角筋、広背筋、大胸筋、腹直筋、外腹斜筋、腸腰筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋、前脛骨筋などです。

これらは走る時に使う筋肉とほぼ同じです。

特に、注目していただきたいのが前脛骨筋(スネ)です。

この筋肉は、ボールタッチの時に効果的な伸張反射をします。

ちなみに足からボールが離れない選手のドリブルは、足首の脱力によって主に前脛骨筋の伸び縮みを利用してボールを動かしています。

そうすることで足からボールが離れにくくなるのです。

これは足の力を使ってボールを押しながらドリブルするのとは全く違って、とてもソフトなタッチになります。

次の動画の「とも」のドリブルに着目すると、ボールがヒザ下に置かれていて足から離れない様子がよく分かります。

このように足からボールを離さずヒザ下に置くためには、足首を脱力することが重要です。

そうすることで、前脛骨筋の伸び縮みの伸張反射が起きるわけですね。

特に相手との接近戦では、体の近くにボールを置けるため奪われ難くなるのです。

日本の指導現場では「引きずるドリブル」などとも呼ばれているようですが、仕組みを理解すればそれほど難しいことではありません。

とても大切なことなので、ぜひ覚えてください。

(3)走る動作の場合

走る場合の主な筋肉は先ほどのドリブルの場合とほぼ同じです。

特に注目していただきたいのが、腸腰筋と大腿四頭筋などの伸張反射です。

これは、いったん伸ばした腸腰筋や大腿四頭筋が反射的に縮む動きを利用して、蹴り足(左足)を前に出す動きです。

これに対して、ふつうの人の走り方は大腿四頭筋のパワーを使って足を前に出そうとします。

ところが、こうした筋肉の力に頼った走り方は伸張反射に比べて意外とスピードが出せません。

なぜなら、伸張反射のように筋肉を動かす時の反射作用がないからです。

しかも筋肉のパワーを使うと筋肉疲労が起きて、だんだんとスピードが落ちてしまいます。

これに対して伸張反射を利用した走り方は、足に力を入れて「グイグイ!」と前に進むのではなく筋肉の伸び縮みを使って軽快で自然に前へ進んでしまう…という省エネ型の走法なのです。

※サッカーに最適な走り方をお知りになりたい方は、次の記事をお読みください。
サッカーの走り方!速さと持久力が両立する走法とは?

それでは次に、伸張反射はどのようにすれば起こせるのか?という点を詳しく解説します。

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3.伸張反射を起こす3つの方法

ここでは伸張反射を起こす方法について解説します。

(1)リラックスする

伸張反射は筋肉が急激に伸びることによって起こるものです。

そのためには全身をリラックスさせることが大切です。

なぜなら、力を入れると筋肉が硬直するので伸び縮みし難くなるからです。

そもそも、一般の社会生活において急激に筋肉が伸びる状況を考えてみてください。

例えば、あなたが突然ヒザかっくん(ヒザの裏の筋肉が急激に伸びる)をされたとします。

そうした時は明らかに不用意なので、あなたのヒザ裏の筋肉はリラックスしているはずです。

こうした状況はサッカーにおいても同じで、ふだんからリラックスして練習しないと伸張反射が起きません。

そうすると、子供さんに対して「ガンバレ!」とか「気合いを入れろ!」とかの声をかけて緊張させてはダメなのです。

だから「リラックス!」などと、声掛けしてあげることが大切ですね。

ちなみに次の動画で息子がボールをヒョイ!と上げる動作は、主に前脛骨筋(スネ)と足指の筋の伸張反射を使っています。

この動画を撮影した時は、小二の頃でした。

私はこの頃から口うるさく「リラックス!」を繰り返していたので、いつの間にか伸張反射を覚えたようです(笑)。

(2)一本歯下駄トレーニング

先ほど解説したリラックスという点では、一本歯下駄トレーニングも効果的です。

なぜなら、この練習は全身を脱力することによって効果を出すトレーニングだからです。

また、こうしたリラックス状態を習慣化することにも効果があります。

※一本歯下駄トレーニングをもっと詳しくお知りになりたい方は、次の2つの記事をお読みください。
一本歯下駄の効果!身体能力アップに役立つ5つの理由!
一本歯下駄トレーニング!サッカー向け練習メニュー22選

(3)ストレッチ

筋肉の伸張反射を促すためにはストレッチも効果的です。

日ごろから、よく使う筋肉を伸ばしておきましょう。

サッカーの練習の前後や入浴後に行うと効果的ですね。

①体の前側

腸腰筋、大腿四頭筋、前脛骨筋、大胸筋、腸腰筋、大腿四頭筋、前脛骨筋

②体の後ろ側

柔軟性のバランスという点で体の後ろの筋肉も、きちんとケアしましょう。

背筋、お尻、ハムストリングス、ふくらはぎ

4.まとめ

筋肉の伸張反射は骨格のバネ作用と並んで、スポーツにとっては欠かせない身体機能の一つです。

また、この作用は生まれ付き備わっているので誰でも使いこなせます。

これに対して育成年代の指導者はこうした科学的なメカニズムをきちんと理解しなくてはいけません。

もちろん「ガンバレ!」とか「気合いを入れろ!」とかの根性論だけでは指導者失格です。

そもそもリラックスをしないと伸張反射はもちろんバネ作用も起こりません。

私は息子に対して、こうした精神論的で過度にプレッシャーを与えるような声掛けは一度もしたことがありません。

むしろ「リラックスしないとダメだよ!」と注意することが多いですね。

ぜひ多くの方に、こうした科学的なメカニズムである筋肉の伸張反射をご理解いただきたいと思います。

【画像引用:Youtube.com